「衝撃作」聖なるイチジクの種 Alejandro Gillickさんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃作
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信仰と国家への忠誠を重んじる父、家族の絆を重んじる母、正しさを追い求める姉妹を通して、イランの政治体制に対する批判を克明に描いた良作ではあった。
イラン政府の目に余る政治体制の独裁っぷりには驚嘆と怒りを感じた。あんな暴力がまかり通って良いはずがないし、それに準ずる父の仕事も全くもって褒められたものじゃない。神への信仰から善悪の区別がつかず、次第に過激になっていく父の行動に、政教一致の怖さが表されていて感心させられた。
妹の行動は流石に訳がわからないし、父が憤怒する気持ちも理解できる。本人曰く、母が常に父に従わされているという構図を覆すことが動機だとしていた。これは、父をイラン政府、母を国民に置き換えて、国民を暴力で(父は母に対して暴力を振るっていないが)支配する政府からその手段を取り上げることを比喩として示したかったんだと感じた。それを踏まえて考えると、どうしても個人の間でのやり取りに置き換えてしまっては不自然だと思う。父は銃を、母を従わせるための手段としては使っていないし、銃を隠したところで何の問題も解決しない。それどころか、銃の紛失によって立場が危ぶまれる父が怒るのも無理ない。その後の父の行動はどう考えても擁護できたものじゃないが、自身の行動のせいで母や姉が酷い目にあっていることを妹はもっと自覚したほうがいいと思った。
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