劇場公開日 2025年2月14日

「イランの現実を皮肉ったコメディ?」聖なるイチジクの種 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5イランの現実を皮肉ったコメディ?

2025年2月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

我々が報道でしか知らないイランを内側から見ることができたのは新鮮で非常に興味深かった。

構成が良くできており、話が進むにつれ、特に拳銃がなくなってしまったことをきっかけに家族それぞれに対する見方が逆転してく。
そして家族がそのまま今のイランという国の縮図になっているところが面白い。

厳格で常に正しく信仰に忠実であろうとし、司法に携わる仕事をしている父親はいつしかデモ参加者を検討もせず罰するようになり、家族の間違った行動を正そうと我を失い制御不能となる。

夫や体制を盲目的に信じる保守派の代表のような「わかってない」母親は、子どもの友人を助けるために奔走し、夫が狂い出すと身を挺して子ども達を守ろうとする。

わがままな現代っ子の様に見えた娘たちは、報道規制されたテレビのニュースなどいっさい信じず、SNSのリアルな動画を見て自国の異常さやそれを当たり前の様に受け入れる両親を実は冷静に見ていた。

イラン出身の監督の目線はこの娘たちであり、多くの国民が祖国のため、または信仰のためと信じて疑わずに行っていることが、実はたくさんの人を傷つけ、不幸にしているという様を滑稽で皮肉たっぷりなコメディとして仕上げており(私にはそう見えました・・・)、かなり面白く観ることが出来た。

本当に尺が長過ぎて途中で飽きてしまうのだが、命懸けの撮影をした監督、役者、スタッフらに敬意を感じながらありがたく鑑賞させていただいた。

カツベン二郎