「「夢」が効果を上げているようには思えない」雨の中の慾情 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「夢」が効果を上げているようには思えない
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冒頭の雷雨のシーンは、映画のタイトルそのもので印象深いのだが、やがて、これが、主人公が漫画を描く上での想像であったことが分かってくる。ただ、それと同時に、どうして出会う前の女性を想像することができたのかという違和感も残る。
その後は、いつの時代の、どの国を舞台にしているのかも定かではない、現実とも、妄想ともつかない不思議な物語が展開されるのだが、「つむじ風」のエピソードが描かれるに至り、これがファンタジーであることがはっきりする。
ところが、その矢先に、今まで観てきたものが、戦場で負傷した主人公が、病床で見た夢であったことが明らかになり、驚かされるとともに、夢だからこその辻褄の合わなさに納得もしてしまった。
ただ、そのまま「夢オチ」で終わるのかと思っていると、その後も、現実とも、妄想とも、回想ともつかない話が続いて、最後は、すべてが、主人公が戦死する直前に見た幻覚であったということが分かり、2度目の驚きを味わった。
結局、これは、異国の娼婦を、日本に連れて帰ると約束した兵士が、その約束を果たせないまま戦死してしまうという悲恋の物語だったという理解で良いのだろうか?
仮に、そうだとしても、それを描くのに、これほど込み入った展開と、執拗な「欲情」のシーンは必要だったのかという素朴な疑問が残った。
何よりも、現実と非現実の境界線が不明確な物語から、「悪夢」を見ているような感覚や、「迷宮」に入り込んだような効果があまり感じられなかったのは、残念としか言いようがない。
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