劇場公開日 2002年3月30日

ビューティフル・マインド : インタビュー

2002年3月15日更新

「ビューティフル・マインド」で「グラディエーター」に続き2年連続アカデミー主演男優賞ゲットか? と、注目のラッセル・クロウ。公開直前の初来日も予定されている彼だが、来日ニュースよりひと足に肉声をキャッチ。記者会見だけでは分からない素顔の彼の人となりを、つい先頃のベルリン映画祭でも彼に会った、森山京子氏のレポートでお届けしよう。

ラッセル・クロウ 直撃インタビュー

「ワイルドでセクシーなだけじゃやっていけないよ」

森山京子

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ラッセル・クロウに会ったわと言うと、「やっぱり野蛮だった?」というリアクションが返ってくる。確かに喧嘩したというニュースは多いけれど、誰にでも見境なしに噛みつく動物野郎と思われているなんて、可哀想でおかしなラッソー(編注:ラッセルの愛称)。とにかく彼は、他のハリウッド・スターと全然雰囲気が違う。最初ロンドンでインタビューした時は、自分でドアを開けて部屋に迎え入れてくれ、お茶を入れてくれたり、お水をサービスしたり。私の椅子の横にスツールを引っ張ってきて座り、親密なムードで話をするのだ。

ワイルドでセクシーと書かれることについては、「そんなのはマスコミが勝手に作ったイメージで、本当の俺とは関係ない。役者の仕事は感受性が豊かでないといけない。ワイルド、セクシーだけじゃやっていけないよ。それぐらいは分かるだろう? とにかく、俺は自分の仕事をやるだけ、気にしないよ」と言ってるそばから、「日本の海に25人のジャーナリストが沈んでいました。これをなんて言うでしょう。答えはGOOD STARTだよ」と謎々ともジョークともつかないことを言う。察するに、25人は海の底に沈んでいるから、日本での取材は数が少なくなってちょっとはラクかな。ということを言いたいらしい。私の印象は、正直で、ちょっぴり皮肉屋さんで、中くらいにユーモアがあって、とっても親切。要するにイイヤツだ。2月にベルリンで再会したのは、アカデミー賞にノミネートされた翌日。おめでとうと言ったら「俺のことより、ロン(・ハワード)のためにすごく嬉しい。16作目でついにアカデミーが彼を認めてくれた」と喜んでいた。

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さてその「ビューティフル・マインド」。ノーベル賞学者ジョン・ナッシュ博士を演じるラッソーは、繊細かつ複雑で本当に凄い。

「実在の人物を演じるときには大きな責任が伴う。ただ、俺もロンも博士のそっくりショーをやるつもりはなかったんだ。彼についてのあらゆること、生活、内面の世界、病気のことも徹底して知りつくして、それぞれの局面でのエモーショナルな真実を求め、それを見せることで彼の精神を表現したかった。事実を並べた伝記じゃなくて、真実のヒューマン・ストーリーを創りたかったんだ」「精神分裂病の症例を写したビデオを見て、病気の前と後で体や声がどう変化するかチェックしたし、講義しながら黒板に数式を書く練習をし、爪を伸ばして博士みたいに手先が優雅にみえるように工夫した」など役作りの話を聞いていると、できることは絶対に手抜きしないでやり通す彼の努力と集中力の凄さを感じる。でも、数学者らしからぬあの腕の太さは何なの?と聞いたら「彼の昔の写真を見てみなよ、水泳の選手ですごく体格がいいんだよ。それでなけりゃ、俺の役作りだって違っていたさ」だって。次の作品は「シンデレラ・ボーイ」のボクサー役のはずだったが、「その前に、急遽ピーター・ウィアーの『Far Side of the World』をやるんだ」と、これは本当に嬉しそうだった。

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