「生きづらさを抱えた女性が、人間関係にストレスを感じるたびにふっと空想の中へ現実逃避してしまう…私もそこそこコミュ障なのでね、とても共感できますよ!」時々、私は考える ほりもぐさんの映画レビュー(感想・評価)
生きづらさを抱えた女性が、人間関係にストレスを感じるたびにふっと空想の中へ現実逃避してしまう…私もそこそこコミュ障なのでね、とても共感できますよ!
大きな事件が起こることもない、一見地味な作品ですが、繊細でしみじみと心に残りました。
主人公のフランは、誰とも話さず、淡々と会社に行って帰るだけの毎日を過ごしています。
それでもいいのですが、和気あいあいとした会社の雰囲気に全くなじめないのは少し寂しい気も。
特に、気になる男性が現れたりすれば話は別ですよね。
ロバートが職場に来てからの、フランの控えめな(でも一生懸命な)頑張り、そして空回り。また、大事なところで心を閉じてしまうところなど、とても繊細に描かれていました。
映画を見に行っても「面白くなかった」と正直に言ってしまったり、つまらないジョークを言ってしまったり…人付き合いが苦手で、ずっと避けてきた代償だったのかなと感じました。
一方、フランの勤める従業員10人ほどの小さな会社は、コミュニケーション能力、雑談力が異常に高い人たちばかり(笑)
何の苦もなく、毎日他愛のないおしゃべりを楽しんでいます。
フランには優しく接してくれて、認めてくれているようだし、フレンドリーでいい人たちなのですが、彼らの様子を見たら、話すのが苦手で輪に入れない自分を、情けなく思うかもしれません。
だからって死を連想するなんて大げさでは!? とは、人付き合いに苦を感じない方々の言い分で、おそらくフランはそんな自分に強い劣等感を持っていたのでしょう。
彼女に自信をもたらした場面がいくつかありました。
ロバートにこっそり仕事を教えること、パーティーのゲームで独創的なアイディアを出したこと、元同僚の、人には言えない秘密を聞かせてもらったことなど…。
小さな挑戦の積み重ねが、フランを少しずつ強くしていったのでしょう。
彼女の希死念慮は幻想的で、一見、現実逃避や空想を楽しんでいるようにも見えますし、公式にもそう書いてあります。
でも本当にそうなのでしょうか。私は彼女が実は苦しんでいたように見えて仕方ありません。
クレーンを見たら自分が吊られている姿を連想してしまうなんて、やはりつらいことのように思えます。
ロバートに心を開いてハグするラストシーンに、これまでのつらさが表現されているように見えました。
陽気すぎる職場の仲間に馴染むにはもう少し時間がかかりそうですが、無理せずに少しずつ慣れていけばいいな…そんな優しい気持ちになれる作品でした。
レイチェル・ランバート監督、覚えておこうと思います。