「【”私はツマラナイ人間なの。”人付き合いの苦手な女性が、少しづつ自分の殻から出ようとする姿が印象的な佳品。デイジー・リドリーって大作スターだけれど、今作の様な小品での佇まいも良き女優であるなあ。】」時々、私は考える NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”私はツマラナイ人間なの。”人付き合いの苦手な女性が、少しづつ自分の殻から出ようとする姿が印象的な佳品。デイジー・リドリーって大作スターだけれど、今作の様な小品での佇まいも良き女優であるなあ。】
■人付き合いが苦手なフラン(デイジー・リドリー)の職場に、定年退職したキャロルの後釜に来たロバートが来る。
彼女は、髭面で優しそうな彼に、少しづつ興味を持って行く。
◆感想
・フランの職場での態度が控えめで笑顔もあまり見せない。キャロルの送別の色紙のメッセージもほんの一言。彼女の挨拶の時も、一番後ろで黙って見ている。
けれども、それが彼女の性格だという事が徐々に分かって来る見せ方が巧い。
職場の皆も、そんなフランと普通に接している。
・ロバートと、席がすぐ近くなのにチャットでメッセージを交わしつつ、度々仕切りから彼の様子を見る姿が可愛い。
そして、彼女の得意な事。それは表計算ソフト。クスクス。
・フランは寝るときに、不思議な空想に耽る。それは、彼女が森の中や、海岸で死んでいる空想である。変わっているなあ。
■けれども、フランはロバートから映画に誘われて、一緒に行く。気になる人だからね。
で、帰りに軽く食事をした際にロバートから感想を聞かれた時の答え”面白くなかった。”オイオイ、そこは合わせてようよ、と思うがフランだからね。悪気はないんだよね。
で、ロバートから家に誘われると、付いて行くのである。
そして、映画好きの彼から”音楽聞いててね。映画音楽だけど・・。”と言われて掛けたのが、ナント”ミステリー・オブ・ラブ”。
ジュリー・クルーズの浮揚した美しいヴォイスが印象的な幽玄耽美な曲である。
という事は、二人で観た映画はデヴィッド・リンチの「ブルーベルベット」だろう。
そして、彼女はロバートから感想を聞かれて”これは、好き。”と答えるのである。そうだよなあ、死の空想に耽る人だからねえ。
そして、ロバートから誘われて、パーティに出席してそこには職場のギャレットも居て楽しい時を過ごす様になるのである。
・けれども、その帰りにフランは、ロバートから色々聞かれて、”そんな事だから、奧さんと別れるのよ!”と言ってはいけない事を言ってしまうんだよね。不器用だなあ。けれど、彼女が無垢でもある事の証明なんだよね。
■で、翌朝フランは、ドーナッツ店に出勤途中に寄った時に、寂しそうに一人で座っている夫とクルージングに行っているはずのキャロルと出会い、彼女から”夫が病気なの。”と言われて、少し考えて、職場の皆にキャロルから勧められたドーナッツを買って行くのである。
驚き、喜ぶ職場の人達。
その姿を見てから、フランはロバートを倉庫に読んで“ゴメンなさい。”と涙を流して謝るのである。
フランが、少し自身の殻を破った瞬間であろう。
<今作は、フランの沈黙も葛藤も受け入れる温かい職場の人達に囲まれながら、少しづつ殻を破って行く姿を描いたヒューマンドラマの佳品である。
ご存じのように、デイジー・リドリーは「スター・ウォーズ」で大抜擢されて、あっと言う間に大スターになった女優さんだが、制作にも関わった今作では、別の魅力ある姿を見せてくれている。素敵な女優さんだと、私は思います。>