「トイレの音が上の階とかぶった つぶやきシロー」WALK UP きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
トイレの音が上の階とかぶった つぶやきシロー
【鑑賞まえの予想】
四階建てで起こる珍事件の映画らしい。
うちのアパート(三階建て)でも、住民のすったもんだは たびたびなので、どんなものかと鑑賞を決めました。
興味津々ですね。
戸建てにも「お隣さん問題」はあるし、
階層建てにも、入居者同士の独特のトラブルは起こるんです。
タワマンのマウント闘争ならずとも、
上の階と下の階とで
「物理的な上下関係」が「メンタルな上下関係」に影響を与え合うわけですよ。
本作品の目の付け所が面白い。
シチュエーションが「四階建て」というこぢんまり感が、既視感もあってリアルだからだろうね。
「パラサイト 半地下の家族」では、山の手の豪邸と下町の低層住民の対立を、地形の標高とソサエティを重ねて魅せてくれた韓国ムービーでした。
今回はそこをギュッと凝縮しての四階建てストーリーらしいです。
さて、どんな物語を展開してくれるのでしょうか。
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【ドン引きの映画体験】
しかーし!!
「ホン・サンスという事件」は
評判も興行収入もどうでも構わないらしく、
売れない映画監督=主人公の引きこもりを長々と見せてくれましたね。
こんなに長く感じた映画も 僕は初体験でして、つまり、固定カメラで「延々とテーブルを挟んだ会話シーン」だけの実験映画です。
この日の気温は35℃、
やっと涼しい館内に腰を下ろし、照明が落とされると スクリーンでつまらない会話劇を見せつけられるという趣向。
寝落ちして目が醒めても、安定の 「あいも変わらずさっきと同じ光景」が流れています(笑)
監督のボヤキと、女たちの退屈しながらも煮えきらずにワインに付き合う光景だけが、無限に続くわけでね。
でもこんな面白みにも気付きましたー
女たちは勝手にドアを開けて(暗証番号を押して) ずかずかと自分都合で入室して来るし、
また自分都合で、女たちは仕事や、用事や、友人とのお茶のために 外の世界と行ったり来たりをするのだけれど、
監督の男だけはこの四階建ての小惑星から足を踏み出せない。
階段を登って上階に幕が移動すれば、こんな彼にもなにがしかの変化があるのでは!と観ている僕の激しい欲求にも関わらず、
わずかの期待は全て裏切られて振り出しに戻る結末とは・・
呆れ。
堕ちた星の王子さまが、様々な女たちにしだれ掛かりながら、次の来訪者を待つ。
それだけの97分でした。
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【退屈という魔法】
で、
館内では、10数名ほどのお客さんが爆睡しているのが可笑しくって、そこを狙った催眠映画なのだと気付いた時はもう遅かった。
中途退場者続出。
エンドタイトルが流れると、肩を怒らせて大股で席を蹴るお客さんの列。
僕としてはホン・サンスはもう観ないとは思うが、一生忘れない作品になった事だけは確かで、
首を振りふり家路につきました。
ちなみに、
うちのアパートは三階建て。
階段が割と急なもので、えっちらおっちらと 訪問者の皆さんは登っているうちに何か錯覚をするらしくて
二階の僕の部屋のドアをノックしてくれます。
早朝、
「ちょっと!起きてんのか?」
「いるんだろ」、
「ドンドンドン!! 」だ。
(上の三階に寝坊すけの土方が住んでいるのです w)。
集合住宅では、漏れ聞こえる騒音問題も鬼門ですよね。
スピードラーニングを買ったら、1年後にはアパートの住民がみんな英語ペラペラになっていたという笑い話もありますねからね😁
確かにここは小世界の小宇宙です。
上映中はあんなに苦痛だった白黒映像が、帰途、小さな思い出し笑いと共に、不思議な後味になって蘇る・・
ハチミツ漬けの朝鮮人参は あとから来ます。よーく噛めと。
ホン・サンス、恐るべし。
ホン・サンスは中毒性のある監督でして、私は「ソニはご機嫌ななめ」くらいから10年方見続けています。実に多作な人でして半年に1作品くらい作ります。客観的には何が面白いんだ、ということになりますがまあなんとなく見入ってしまう。大体において自分を投影した映画監督だの大学教授だのが出てきてこれがクズなんだけどモテます。羨ましい限りです。