「これぞ真骨頂」WALK UP 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ真骨頂
2022年。ホン・サンス監督。国際的に活躍する映画監督が娘の就職の世話を頼むためにインテリア・デザイナーを訪ねる。こじんまりした4階のビルの大家でもあるデザイナーと、そのビルで小さな食堂を営む女性を交えて会話が進行するうちに、監督がそのビルに住むことになって、、、という話。
何気ない会話がそれぞれの人生の機微に触れ、関係が変わっていく。これぞ監督の真骨頂の会話劇。音楽をきっかけに時間経過が示され(ほとんど同じ絵柄なので会話によって後からわかるのだが)、最後には時間がループしたかのような構造。要するに、起承転結のストーリーではなく、会話を描きたいのだ。そしてそれは大いに成功していると思われる。当初は監督に対して敬意に留まらない個人的な感情を抱いていたように見えるデザイナーの大家が、監督が映画を撮らずビルの一室で食堂の女性と同棲するようになると、言葉の端々に嫉妬交じりの冷淡さがにじむあたり、うまい。
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