「何かイヤなことがあったのかホン・サンス?」WALK UP あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
何かイヤなことがあったのかホン・サンス?
ホン・サンスにしてはあからさまな仕掛けがある作品。そして他の作品より多分、10分から15分くらい長い。
映画監督のビョンスが、インテリアデザイナーのヘオクがオーナーのアパートメントにやってくる。ビョンスは娘をヘオクの元で働かせてもらえるよう頼みに来たのだが、このアパートメントに魅入られたように出入りするようになる。韓国流に言うとイニョン=縁があったということなのだろうが実はそんな綺麗事ではなく、ビョンスはホン・サンスがよく描くところの口ばっかりのクズ男。映画監督としての実績は過去のもので今は仕事もせず女をつくってはダラダラ過ごしている。そんなビョンスがいわばおびき寄せられたゴキブリホイホイのような建物がかのアパートなのである。螺旋階段を上って電子ロックのドアをピコピコ開けるたびにビョンスの相手が変わり新しい生活が始まるという仕掛なのだが、実は室内のシーンの中であっても、屋外のシーンであっても、突然、時間が飛んで新しい話が始まったりする。実にホン・サンスは自由なのである。
そして、お得意のテーブルを挟んだ登場人物たちの長い長い会話劇。男と女の騙し騙されというかテキトーな話合わせが展開する。
いつものホン・サンスであれば登場人物の中に一人ぐらいはまともな感覚の人間がいるのだがこの作品はビョンスはもちろんのこと、ビョンスの娘、同棲相手、愛人、そしてオーナーのヘオクに至るまで、自己中心的な人物ばかりなのである。だから映画としてはいつものホン・サンス作品よりは切れ味が良い分だけ後味が悪い。
何か人生に絶望するようなことがあったのか、ホン・サンス?遂にキム・ミニに出ていかれてしまったのか?
こんにちは。
コメント有難うございます。
ホン・サンス監督作品は、(世間的には余り評判が良くないようですが)私は、結構好きです。
今作は、これまでの監督作から一捻り半を入れている点が斬新だと思いましたね。では。