「過去の『エイリアン』シリーズをなぞりパクったシーン満載で面白いが…」エイリアン ロムルス 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
過去の『エイリアン』シリーズをなぞりパクったシーン満載で面白いが…
1 『エイリアン』シリーズについて
『エイリアン』シリーズは1~4、『プロメテウス』『エイリアン/コヴェナント』があるが、監督がリドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、デビッド・フィンチャー、ジャン・ピエール・ジュネと素晴らしい顔ぶれで、それぞれテイストの違った作品に仕上がっていた。
ただ、もはややり尽くした感が強く、直近のリドリー監督2作品に関しては、エイリアンは脇役に追いやられ、つまらないアンドロイドvs.人間の戦いがメインテーマとなっていた。個人的には、これでシリーズは終わったと思っていた。
ところが美味しい食材はしゃぶり尽くしたい、のだろうかw エイリアン以上に強欲なハリウッドは、人気監督フェデ・アルバレスを担ぎ上げて、またまた新作をでっち上げてしまったのだから恐ろしいw これでシリーズはプレデター絡みの2作も含めると9作品にもなる。
2 監督フェデ・アルバレスについて
アルバレス監督はヒット作が多いため、小生も『ドント・ブリーズ1&2』『蜘蛛の巣をはらう女』『死霊のはらわた』と、大半の作品を見ていた。特徴はスリリングなシーンをテンポよく、次々に積み重ねて相乗効果で印象を高めるところだろう。ジェットコースター・ムービー系の作品などお手の物ではなかろうか。
3 過去作品をなぞりパクっていくのだが…
両者の合体は、さてどんな新しさを生み出したか…最大の興味はそこにあったのだが、はっきり言って期待外れだった。
映画としての出来は別に悪くない。日照時間ゼロの民間宇宙植民地で、契約地獄に縛られるヒロインたちという設定は、なかなかいい。もうちょっとじっくり描けば、それだけで独立の作品を作ってもいいと思うのだが、如何せん登場人物が全部安っぽい。ある意味、直近2作のリドリー作エイリアンを引きずったかのようなチープな人物造形である。
彼らが植民地近傍の宇宙空間に漂う漂流宇宙船を奪おうと乗り込んでみると、実はその船は第1作の舞台ノストロモ号の残骸から活動停止中のエイリアンを回収したものの、すぐに乗務員が全滅させられていたのだ。当然、ヒロインたちも元の乗務員たちと同様、船内でエイリアンに散々な目に遭わされる――という粗筋。
そしてエイリアンとの攻防で、過去の『エイリアン』1~4の印象的シーンが次々に再現されていく。
船内で壊れていたアンドロイドを再起動させてみると、それは1に出てきたアッシュである。研究スペースを奥に進んでいくと、エイリアンの器官や滲出物で固められた洞窟のような巣があり、これは2にあったもの。人間とエイリアンの船内での追いかけっこと、その挙句、ヒロインがエイリアンに追い詰められ、顔と顔が接触しかねんばかりになるのは3の引用。
最後に人間の生殖器を使って誕生したエイリアンは4の引用で、妙に不気味に人間っぽいのも4と同じ。ヒロインがフェミニストよろしくエイリアンと闘う姿勢を見せるのは2のラストと同じ。
というように過去作品をなぞりパクっていくのだが、その上にアルバレス独自の魅力が出ているかというと、残念ながら感じられなかった。
映像はリドリーに比べると、さすがに見劣りするし、アクションはキャメロンに及ぶべくもない。構図の面白さはフィンチャーに負けるし、人物の変態ぶりはジュネに適わない。ま、あんな大御所たちと比較する方が無理なのかもしれないが、類似シーンを積み重ねたのなら、もう少し頑張って欲しかったw