「ラスボスが…」エイリアン ロムルス キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
ラスボスが…
エイリアンと言えば、やはり1作目と2作目。その後の作品はたぶん「3」と「プロメテウス」は観たはずだけどほとんど覚えてない。
少なくとも1と2は傑作。
今回はその「1と2の間」とのこと。
これまでも、いろいろな監督が比較的作家性を発揮して作品化したシリーズ。今回のフェデ・アルバレス監督の「ドント・ブリーズ」なんてサイコーの映画だったし、期待して劇場へ赴いた。
「社会に搾取されながら底辺で暮らす若者たちが、違法ながらももがいて掴んだチャンスが、新たな地獄の始まりだった」みたいな、まさに「ドント・ブリーズ」的な軸で描かれる本作。
どちらかというとシリーズの1作目がホラー、2作目はエンタメアクションだったことを考えれば、今回はまさにその間、ホラーで始まってアクションで2作目に繋ぐ感じ。
フェイスハガーがワラワラワラワラと追いかけて出てくるところなんて鳥肌だし、背後でヌルっと何か動いたよ!みたいないつものエイリアン演出も楽しい。
これまで「コントロールする側」で、良くも悪くも「知性や効率」の象徴だったアンドロイドが、「される側」「役立たず」で登場するのも面白い。
シリーズを知らなくても楽しめるけど、せめて1作目は観ておいた方がいいだろうな。
で、評価は…というと、映画として面白いってことはまず書いておきます。
ただ、SFとして気になるのは今回物語攻略の大きなポイントになる「無重力」の問題。演出として面白いのは間違いないんだけど、物理的に「いや、それはおかしいんじゃない?」ってところが気になった。
あと「アレを『小惑星帯』って言わなくね?」とか。
日本語訳の問題なのかもだけど。
あの格納庫の切り離しに関わる辺りからの一連は、ちょっと荒唐無稽過ぎた気もする。
そしてもう一つ。
(ご注意:ここからラストに関わる内容を書きます)
シリーズのメインモンスターである「ゼノモーフ」。「エイリアン」という単語を固有名詞化したと言っても過言ではない、男性器を想像させるあいつ。これまでも作品ごとにアレンジはされて来たものの、この造形の邪悪さと美しさこそ、このシリーズの魅力の一つだと思うんだが、今回のラスボスはそのエイリアンと人間の謂わば「混血」。
断然興味を惹かれたのに。
なんであんなに醜い…というか、特徴に乏しい、つまらない姿にしてしまったんだろう。
もちろんこれは個人的な趣味の問題で、「ラスボスが怖くて良かった」というレビューも散見されるのでこういう感想は少数意見なのかもだけど、生まれた瞬間の姿がきれいな人間の赤ん坊だっただけに、ここからエイリアン的な特徴の何かを取り込んだ美しさのあるものを期待してしまった分、取り込んだのは「四肢と尾かい!」となってしまった。
私は圧倒的にあのギーガーの描いた造形、特にあの長いアーチの頭部こそがエイリアンだと思ってるクチなので、それ無しにエイリアンのラスボスとして登場されるとなあ…と。
お母さんを喰ってしまうとか、(良い意味で)なかなか嫌なシーンは、印象に残ってるし、このエイリアンの見た目だけで嫌いになるなんてことはないんだけど、やはり古いファンとしては、最後が綺麗に腑に落ちなかったのが悔やまれる。
でも、SFとして、ホラーとして、モンスターアクションとして、間違いなく楽しめる映画だと思います。