「もうエイリアンの進化は見られないのか…?」エイリアン ロムルス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
もうエイリアンの進化は見られないのか…?
今年は誕生45年。
このシリーズも結構波乱に満ちている。誰もが認める名作の『1』『2』、賛否となった『3』『4』。おバカ見世物のvsを経て、創造主が復帰した前日譚2本は停滞し…。
このまま化石化してしまうのか。不死身の究極生命体の今後の進化も懸かる。
遭遇は7年ぶり。通算“9体目”となるシリーズ最新作。
『1』のDNAを最もよく受け継いだと言える。
宇宙ステーションという限定空間で繰り広げられるサバイバル・ホラー。
作風も設定も展開も。何処から襲い来るか分からない見せない演出。
開幕のノストロモ号の残骸や『1』の事件への言及。イアン・ホルムの“同型”がサプライズ出演。
ケイリー・スピーニーもリプリーを彷彿させる逞しいヒロイン像。“弟”で、シリーズお馴染みアンドロイドの巧演。
室温を体温と同じにして“ドント・ブリーズ”しながらフェイスハガー回避や無重力にして酸の血を潜り抜けるシーンのアイデア凝らした緊迫感。『1』以来とも言えるホラー演出たっぷりで、リメイク版『死霊のはらわた』や『ドント・ブリーズ』などホラーやスリラーに手腕を発揮するフェデ・アルヴァレスの演出が冴えた。
シリーズの魅力の一つである監督の特色。vsは別として、『プロメテウス』『コヴェナント』は創造主復帰しての前日譚だし、新たな監督によるフレッシュさは『4』以来かも。
フェイスハガー、チェストバスター、ゼノモーフらお馴染みのタイプも健在ぶりを見せ付けるが、新作毎に誕生するニュー・タイプ。『4』のニューボーンを上回るおぞましさ。
『1』へのオマージュ、リスペクトたっぷり。これぞ見たかった『エイリアン』!
『1』継承なら完璧。
しかし…。これは『コヴェナント』のレビューでも書いたが、『エイリアン』はどうも進化が見られない。らしさ溢れた今回でもだ。
確かに原点回帰はいい。本来の持ち味や魅力を取り戻した。
が、結局それは、同じ事をなぞってるだけ。焼き直し。
今回は特に。作風も設定も展開も演出も。話も『1』に似せる為の苦肉の策としか思えず、絶対的な必要性や登場人物の魅力も薄い。ラストに至っても。何もかも『1』まんま。
それをオマージュ/リスペクト/原点回帰と見るか、焼き直し/進展ナシと見るかで評価が分かれる。
『4』で200年後を舞台にし、リプリーをクローンにしてしまったのが仇になってしまった。その後が作り難くなってしまった。
その為おバカ見世物のvsや前日譚にするしかなく、今回も『1』の20年後という設定。
結局また昔に戻り、やってる事は同じ。これで本当に真の進化と言えるのか…?
『1』と全くの作風チェンジの『2』こそ本当の進化。世界観の更なる拡がり。賛否ながらも大胆であった『3』『4』も。
もうこのシリーズに、これ以上の進化や進展は見られないのか…?
ラストを見る限り、続編も期待出来る。しかし…、
今回が『1』オマージュで、続編が『2』オマージュとなったら、もうこのシリーズに可能性は無い。
なら偉そうな事言ってないで、お前が何か新しいアイデア出してみろ!…と言われても何も思い付かない。
エイリアンも個体としては不死身だが、シリーズとしてはもうそろそろ…。
個人的に『ターミネーター』共々、打ち止めにすべきシリーズである。
新たなアイデア出ない限り、“エイリアン”というレガシーの為にも。