「期待どおりのドキドキ!ハラハラ!」エイリアン ロムルス おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
期待どおりのドキドキ!ハラハラ!
リドリー・スコット監督による1979年の傑作「エイリアン」の“その後”を舞台した本作。とっても期待していたのですが、公開初日の夕方時点では、まさかの低評価!一抹の不安を感じながらも、仕事帰りに鑑賞してきました。本当はIMAXで観たかったのですが、上映時間の都合が合わず、しかたなく通常スクリーンでの鑑賞となりましたが、十分に迫力を感じる映像でした。でも、これがIMAXだったらさらに没入感が得られたのでは…と思うと、ちょっと悔しい気もします。
ストーリーは、植民惑星でアンドロイドのアンディを弟同然にかわいがりながらも、終わりのない開拓作業に希望を見出せずにいたレインは、同じように行き詰まりを感じていたタイラーらに誘われて、近くを漂流中の宇宙研究施設ロムルス内にあるコールドスリープ装置を奪って惑星ユヴァーガへの脱出を試みるが、施設内には恐ろしい未知の生物が潜んでおり、仲間が一人また一人と殺されていくというもの。
本作はエイリアンの恐怖を描くSFサバイバルホラーだと思っていたので、実はストーリーには全く期待していませんでした。しかし、思っていたよりはメインストーリーがしっかりしていて、なかなか見応えがあります。開拓作業を強いられている若者たちが、自由を求めて危険を顧みずにチャンスに賭けるというのは理解できますし、ロムルス内にエイリアンがいる理由もきちんと描かれていて、冒頭に帰結しているのもよかったです。
また、アンドロイドのアンディの存在感が大きく、レインとの姉弟愛を感じさせる人間同様の心の動きを見せる一方、感情に流されることなく冷静な判断を下す合理性などを描き、私たちが“人間らしさ”をどこに感じているかを問いかけてくるようです。これに対して終盤では、人から生まれし人型の人ならざるものが登場し、ウェイランド・ユタニ社の研究の末路のようにも、現代科学への警鐘のようにも感じます。人間とそうでないものの境界線、その垣根を越える功罪を考えさせられます。
肝心のアクション&ホラーシーンは、どちらも大興奮でスクリーンに釘付けです。序盤こそテンポが上がらず、やや退屈なものの、一度ヤツらの襲撃が始まればあとはノンストップ展開のまさにジェットコースター状態です。あの手この手で襲ってくるエイリアンに対し、細かな伏線を回収しながら撃退していく流れは圧巻です。どこまでもしつこく、最後の最後までドキドキハラハラさせてくれます。
「エイリアン」シリーズはたぶん2作目までしか観てなくて、それもずいぶん前のことなので、恐怖以外の記憶はほぼありません。そんな状態での鑑賞でしたが、ストーリーから置いていかれることはありません。前作を忘れていても初見でも、問題なく楽しめる親切設計です。もちろん前作とのつながりを感じさせるシーンやオマージュもたくさんあると思うので、シリーズファンの期待にもしっかり応えてくれていると思います。
この手の作品にありがちなご都合主義とツッコミどころはもちろん本作にもありますが、これでもかと続く恐怖の波状攻撃が、そこを気にする暇を与えません。ただ、それでもマンネリ感や既視感は否めません。レインとアンディのその後も気になるところですが、もし続編を作るなら、さらなるドラマ性や新機軸が必要かもしれません。
主演はケイリー・スピーニーで、どんな状況でも心折れずに戦うレインを好演しています。脇を固めるのは、デビッド・ジョンソン、アーチー・ルノー、イザベラ・メルセド、スパイク・ファーン、アイリーン・ウーら。中でも、アンディ役のデビッド・ジョンソンの演じ分けがお見事です。