「このキャストならドラマで観たかった」夏目アラタの結婚 なおきちさんの映画レビュー(感想・評価)
このキャストならドラマで観たかった
原作ファンで、映画でどこまで再現できるんだろう、と不安もありつつ、予告で期待値がかなり上がって結果的には楽しく鑑賞できた。
品川真珠の得体の知れない不気味さ、いきなりの獄中結婚申し出など初っ端からの怒涛の展開。どう見ても有罪なのに、話が進むにつれて本当は無罪なのではと思わせてくる心理戦。今にも手を伸ばして飛びついてきそうな真珠。桃ちゃんへの挑発や、藤田の言葉など人間の汚い部分も丸裸にされるやり取りに、映画を観ながらヒリヒリした。
柳楽優弥の眉の動き、黒島結菜の変顔など躍動感があって良かった。
ただ映画だけでは、アラタの心の機微や犯行の動機が薄く、消化不良の方も出てしまうのでは。
密度の濃い原作を2時間に凝縮しているので仕方ないとは思いつつ、原作の仕掛けが10あったとしたら映画では3つくらいで終わってしまった感じ。映画から原作に誘われた人には怒涛のどんでん返しにぜひ驚いてほしい。
以下、映画というより原作のネタバレになってしまうかも。
物語終盤の、大事なアクションシーンを省くならバイクの逃避行をもっとラストにすべきだったのではと思うほど、最後の方が中弛みした感じでもったいなかった。
改変部分はこういう結末もあったかもよ、という作者からのプレゼントとして貰っておく。本編ではありえない表紙や扉絵の再現のようなシーンもあり、読者サービスだったのか。
主題歌にも原作者が一噛みしているようでマッチしていた。
キャストに対して不満がないだけに(立川志らくはちょっと違ったかな)これだけ集めたならきちんと連続ドラマで観たかったが、採算が取れないのか……。
中川大志が隠し持っている秘密も暴いて欲しかったし、今野にも焦点を当てて欲しかったし、市村正親の裁判長だってただ翻弄されるだけじゃないし、佐藤二朗の父性感じるシーンも観たかった。WOWOWあたりでドラマ化してほしい作品だった。