「KAWAIIは正義」夏目アラタの結婚 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
KAWAIIは正義
面白かった。
けど、何が面白かったのかはイマイチわからない。
品川ピエロのままなら絆される事はなかったように思う。彼女は殺人犯だ。殺人犯ではなくとも死体と共に数日を過ごした異常者である事は間違いない。
その事件の真相を追っかけていく事になるのだけれど…一人称「僕」と話す彼女が可愛いく見えて仕方がない。ほぼ全編を通して「騙されるもんか」との葛藤を抱えたまま物語を追う事になる。
男って低俗だなぁと自覚する。
獄中婚ってハードルがそうさせるのか、超ヘビーな愛を全力で投げつけてくる一途さに絆されるのか、手玉に取られる快感をDNAが知っているのか…惹かれてしまう。劇中で弁護人が肩入れするのに共感してしまえる。…蜘蛛に絡め取られていくみたいだ。
劇中、法廷の柵を飛び越えてくる彼女にときめいてしまう。そして瞬時に否定する。
「いや駄目だ。コイツは異常者なんだ」
そう考えてしまう時点で手遅れだと思われる。主演2人はナイスなキャスティングだった。
もうずーっとこんな調子だ。
物語の本質をカワイイに邪魔される。
見た目が本質を否定しようとする。いや、むしろ願望なのかもしれない。善人とは言わないまでも、猟奇的な殺人犯であってほしくない。
ずーっとソレと闘ってる。
異常者たる片鱗を存分に発揮しても尚、そう思ってしまう。…手に負えない。
そして物語は真相らしき事をポツリポツリと語り出す。何やら殺人犯ではなさそうだ。
なのだが、へそ曲がりもここまでくれば表彰されるんじゃないかと思うのだけど、今度はその事にも騙されないぞと思ってしまう。
お前、結局どうあって欲しいんだと自問自答だ。
タチが悪い!
柳楽氏の独白で彼女を肯定しまうから尚更だ。お前と一緒に俺はならないぞってなもんだ。
ずっと疑念が付きまとう。
決定打を打たれてもまだ捨てきれない。
どうやら2人は運命的な出会いをしていて、彼女はその頃彼にもらったタオルを大事にもっていた。
彼の優しい匂いをずっと探してたと言ってもいいのかもしれない。彼女的には初恋が成就されたようなものだ。
と、猟奇的殺人事件で始まった物語は、転がりに転がって純愛を描き出す。
いや、おいちょっと待て。
ハッピーエンドでいいのか?
アラタ君、君が改めてプロポーズしたのは、4人を殺した殺人犯だぞ?しかも殺し方はエゲツないぞ?経緯はどうあれ油断してる相手を毒殺だぞ?最後の自供を信じるなら、4人の遺体を切り刻んで遺棄したサイコパスだよ!
でもカワイイが邪魔をする…。
ラストに至り純愛に傾きまくる。もうわかった…降参だ。この物語は純愛物語でいいよと白旗を上げた時、彼女は笑う。
あの不揃いの歯で不適に笑う。
なにぃぃいっっ!
どっちなんだよ!やっぱり真珠の掌で踊らされてたのか?身悶えするほど艶かしい!
してやられたと思った時にエンディングだ。
題名は知らないが「最低のヴァンパイア」ってフレーズが印象的だ。
この歌詞の内容がまた、真珠とリンクする。
最後の最後まで聴いて読んだ。
やっぱ純愛だったのかなぁ…。
まんまと堤監督の術中にはまった。
いや、嵌められた。
終わってみたら、監督らしい作品のチョイスだったなぁと、一風変わったミステリーに歯痒さMAXだった。
にしても、あの歯、よく出来てたなぁ…。
腑に落ちない事はいくつかあるが…。
母親にとって、第一子の存在証明がどうしてそこまで必要だったのだろうか?
IQ云々の説明はついたものの、なぜ出生年を偽ってまで第二子を第一子として育てる必要性があったのだろう。
もう一つは、17歳当時の被害者達との関係性である。あの3人の真珠への執着の根源はなんなんだろう?どれくらいの期間で3人を殺害したんだろうか?
彼らの懇願も真珠の捏造と言えなくもないので、真相は以前明かされてはいないのだろうな。
後は、品川ピエロなんだけど…ラストに至りアラタが道化師に見えてきたのは洒落が効いてたなぁ。
男って、ホント…あぁ、無力だなぁー。