劇場公開日 2024年9月6日

「バツに救われ、バツを求める映画」夏目アラタの結婚 LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0バツに救われ、バツを求める映画

2024年9月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

 人によって評価が分かれそうですが、ミステリ好きの自分には見応え漫天でした。原作未読なので、ミステリ要素を純粋に堪能出来たのかも。「アンナチュラル」「ラストマイル」が好きな人なら、高い確率で楽しめる気がします。
 ただ漫画原作だけあり、主要人物のリアリズムのない行動が、生理的に受付難い人もいそう。自分も同様の気分でしたが、ラストの回収と主題歌で涙腺が崩壊しました。この映画で泣いていいんか?という理性は、脳内のカナシミ(sadness)が吹き飛ばしました。恋愛映画としては不格好かもしれないけど、「エターナル・サンシャイン」や「(500)日のサマー」のような遠回り過ぎる恋愛描写が好きな人は、泣けるかもしれません。
🤡
1. ミステリ映画として
 中盤の種明かしまでの展開は見事です。序盤で振られた謎が、思わぬ形で氷解します。原作未読で気付ける人は居ないでしょう。ただ後半ミステリ度が減り、恋愛サスペンスっぽく展開するのが残念という感想も散見しました。ただ、その感想は如何にもミステリ初心者。何故って、ラストにもう1つの大きな種が明かし待っているらです。正直、その真実は中盤の台詞で部分的には気付けるのですが、最初のシーンから貼られまくっている伏線の意味は、やはりラストじゃないと分かりません。自分はその回収で想いが溢れ、絶妙なタイミングで Olivia Rodrigo "Vampire" が輪をかけたので、涙が溢れてしまいました。
🤡
2. 堤幸彦作品として
 「金田一」「ケイゾク」「TRICK」「SPEC」激ハマり世代としては、堤幸彦への期待感は大きめ。ただ「20世紀少年」の裏切りはトラウマで、一時期映画館から足が遠のきました。と言いつつ「イニシエーション・ラブ」「人魚の眠る家」「十二人の死にたい子どもたち」「ファーストラヴ」は観てるので、お得意さんな方でしょう。
 話の趣は大分違いますが、法廷ミステリである本作は「ファーストラヴ」と若干似ています。「ファーストラヴ」も、被告の本音を引き出そうとする接見がシーン多い映画。ただ恋愛要素は、北川景子演じる臨床心理士が一手に引き受け、被告には皆無なのはかなり違う点です。被告を演じた芳根京子の接見・法廷シーンで魅せる圧巻の演技が見処でしたが、ミステリ的には肩を透かされるので、尻すぼみ感がある作品でした。
 本作「夏目アラタ...」の黒島結菜の配役はピッタリ。「アシガール」を代表に、一途で一本気な少女を演じさせたら、右に出る者がない女優。本作での華奢さも、猟奇的な演技も見事。自分がラストで涙したのも「アシガール」のヒロインの一途さが延長線上にあったおかげかもしれません。

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LittleTitan