「目ヂカラに引き込まれるスリリングな心理戦」夏目アラタの結婚 MiMaさんの映画レビュー(感想・評価)
目ヂカラに引き込まれるスリリングな心理戦
『夏目アラタの結婚』の予告編を見たときは、正直それほど興味をそそられるストーリーではありませんでしたが、夏目アラタ役の柳楽優弥さんの演技が気になり、劇場へ足を運びました。観てみると、品川真珠役の黒島結菜さんの演技も素晴らしく、特に印象に残りました。
映画全体を通じて感じたのは、登場人物たち全員がどこかしらに異常性を持っているということ。しかし、その異常性は私たちが生きる現実社会にも通じる部分があり、全くの非現実とは言い切れないところが怖くもあり、面白くもありました。実際、誰しもが多かれ少なかれ異常性を内に秘めているのではないかと考えさせられました。
物語の展開は、アラタと真珠が面会室で顔を突き合わせるシーンが中心。1回の面会は20分で、その時間の中で2人が繰り広げる駆け引きや心理戦がスリリングでした。アクリル板越しに交わされる会話が、単なるやり取り以上の深みを持ち、次第に2人の関係がどのように変わっていくのかに引き込まれていきます。
ストーリー自体は重い内容ですが、テンポが良く、飽きることなく最後まで楽しめました。特に柳楽優弥さんの目ヂカラに引き込まれますね。生まれ持った目ヂカラも才能だと感じます。
唯一残念だったのは、品川真珠の子役と成長後の黒島結菜さんの顔立ちがあまりにも違いすぎた点です。もう少し似た雰囲気の子役がキャスティングされていたら、物語への没入感がさらに増したかもしれません。
全体として、予想を超えるスリルと緊張感に満ちた作品でした。柳楽優弥さんと黒島結菜さんの圧巻の演技が光り、物語に対する興味が薄かった当初の印象を覆すこととなりました。