劇場公開日 2024年8月30日

  • 予告編を見る

「それで、翌年のロンドンオリンピックはどうなったの?」ボストン1947 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0それで、翌年のロンドンオリンピックはどうなったの?

2024年9月4日
Androidアプリから投稿

ボストンマラソンに出場するための保証金を、民衆からの寄付で賄ったり、ボストンが米国独立の地であることを訴えて、ユニフォームに太極旗を付けることを認めさせたりといったシーンには、胸が熱くなる。
特に、星条旗を付けて走ることを断固として拒否する監督の姿には、ベルリンオリンピックで自分が獲得した金メダルが日本の実績になってしまったという彼の過去が重なり、二度と同じことをくり返さないという決意がひしひしと伝わってくる。
ただ、その割には、思いのほか「反日色」が薄くて、やや拍子抜けしてしまった。日本をどう描くのかは別にしても、作劇上は、憎むべき強敵がいた方が話が盛り上がったのではないだろうか?
クライマックスのマラソンにしても、転倒して足が痙攣していた割にはゴボウ抜きで優勝するという展開は、これがフィクションだとしたら「やり過ぎ」で興醒めだし、監督が11年前に樹立した世界記録を、同じ韓国人の若者が塗り替えたという事実も、「出来すぎ感」が強すぎて、逆に感動できなかった。
そもそも、苦労してボストンマラソンに出場したのは、翌年に開催されるロンドンオリンピックの出場権を獲得するためだったのに、エンディングで、そのことに何も触れないことには違和感を覚えざるを得なかった。調べてみると、1948年のロンドンオリンピックでは、韓国はマラソンで良い成績を残せなかったようだが、次のボストンマラソンで韓国勢が表彰台を独占したことなど、自分たちに都合の良い事実だけを紹介するという姿勢には、やはり、誠実さが欠けているように思う。
ところで、ボストン在住の身元保証人は、如何にも胡散臭くて、てっきり、巨額の現金を持ち逃げするのだろうと思っていたのだが、最後まで「善い人」だったところには、何だかホッとしてしまった。

tomato