「【“太極旗を胸に、民族の誇りを懸けて走る。”ベルリン・オリンピックのマラソンで金メダルを取りながら日章旗を掲げさせられた朝鮮が、終戦後にリベンジを誓う物語。特に後半の展開はムネアツなる作品である。】」ボストン1947 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“太極旗を胸に、民族の誇りを懸けて走る。”ベルリン・オリンピックのマラソンで金メダルを取りながら日章旗を掲げさせられた朝鮮が、終戦後にリベンジを誓う物語。特に後半の展開はムネアツなる作品である。】
■1936年。ベルリン・オリンピックで日本統治下の朝鮮のソン・ギジュン(ハ・ジョンウ)とナム・ウンニョン(ペ・ソンウ)は日本代表として、日本人の名前でマラソンに参加し見事にソン・ギジュンは金メダル、ナム・ウンニョンは銅メダルを獲得する。
だが、二人は表彰台で日章旗が上がるのを無念の思いで見、ソン・ギジュンは胸の日の丸を隠す様にした事から選手生命を絶たれる。更には記録は日本のままとなる。
そして、終戦後に大韓民国が建国された後はナム・ウンニョンと共にマラソンコーチに就任していた。
その際に出会ったのが、ソ・ユンボク(イム・シワン)だった。
◆感想
■序盤
<ややスローペースの展開である。>
・ソン・ギジュンはやる気の無い生活をしており、自分の名が冠されたマラソン大会の表彰式にも、酒の匂いを漂わせながら登場し、優勝したソ・ユンボクにもそそくさと金メダルを掛けて去る。
・そんな中、ナム・ウンニョンはソ・ユンボクの力量に目を付けるが、ユも又、貧しさと病院にいる母の為に金を稼ぐ日々を送っている。
・だが、20km走で事前練習をサボったために、コースを間違え4位になったソに対し、ソン・ギジュンはもう20km走るように指示するが、ペース配分が掴めないソは一緒に走ったナム・ウンニョンに最後のスパートで抜かれてしまう。
■中盤
<やや、展開のペースが上がる。>
・ソは心を入れ替え、ソン・ギジュンもナム・ウンニョンの協力の基、ソを47年のボストンマラソンへ出場させるように、動き始める。
・だが、混乱期の韓国は未だ”難民国”の扱いで、国際大会参加の資格所得や、米国入国の際の保証金2000弗や保証人の確保に苦労する。
ー この辺りは知らなかった事が多く、興味深く鑑賞する。独立しても、スポーツの世界には色々な柵があったのだなあ。
そして、漸く米国に渡った監督ソン・ギジュンとコーチ兼選手のナム・ウンニョンとソ・ユンボクだが、渡されたユニフォームには星条旗が付いている。保証人(キム・サンホ)らも抗議するが、”難民国”と言う扱いのためだという主催者側の答え。ここで、ソン・ギジュンを演じた若き名優ハ・ジョンウの抗議のスピーチがムネアツである。
”ボストンマラソンは、アメリカ建国が切っ掛けの大会でしょう!何故に私達朝鮮人が、星条旗の付いたユニフォームで走らなければいけないのか!”その熱いメッセージにマスコミ、観客から徐々に沸き起こる拍手のシーンは良かったぞ。-
■後半
<展開は一気にギアがトップ入る。特に、ボストンマラソンのシーンはムネアツである。>
・報道陣も誰もソ・ユンボクを知らない。”日本人か?中国人か?”などと言っている。一方、韓国に残る人達はラジオの前にかじりついて、放送を聞いている。
・レースシーンは特に良い。本格的なトレーニングにより体脂肪率を一桁まで絞ったイム・シワン演じるソ・ユンボクが、細かいピッチで強豪を次々に追い抜いて行く様は、観ていて興奮する。途中、道端で応援していた老婦人の犬がリードを離れて道に飛び出してしまい、ソ・ユンボクが転倒してし次々に強豪に抜かれながらも必死に立ち上がり、再びドンドン追い抜いて行く様。
そして、彼が貧しく小さかった時に道端の神様の供え物の食料を拝借したり、お返しをしたりするために山道を走るシーンが盛り込まれながらも、彼は心臓破りの坂道をピッチを落とさずに強豪たちを抜いて行くのである。ラスト僅かで最後の先頭ランナーに追いつきサッと抜き去ってゴールのテープを切るシーンと、それを遠い韓国で聴いていた人たちがソが優勝と聞いて、沸き立つ姿も良い。
・驚くのは、35歳のナム・ウンニョンが12位に入った事である。凄いなあ。
<今作は、漸く日本から独立した韓国が、ボストン大会で太極旗を胸に悲願のマラソンの優勝を果たす過程を、当時の時代情勢を背景に描き出した作品である。
特に、ソ・ユンボクが太極旗を胸に疾走するボストンマラソンシーンは観ていて興奮するし、感動する。そして、最後は爽やかな気持ちになるのである。
私は、今作は素直に佳き作品であると思います。>