「パパイヤ風イーストウッド✖ジョニデ=痛快タミルアクション!」ジガルタンダ・ダブルX 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
パパイヤ風イーストウッド✖ジョニデ=痛快タミルアクション!
2022年10月に「RRR」、2023年9月に「燃えあがる女性記者たち」、そして今年9月は本作「ジガルタンダ・ダブルX」と、何故か3年連続でこの時期にインド映画を観てますね。まあ観る時期と内容には一切関係ないんですが、どの作品も極めて印象深いものでした。敢えて共通項を探すとすれば、歴史や社会問題、政治、民主主義と言った骨太のテーマを、色んな角度から照らしている作品だったということでしょうか。
そしてドキュメンタリー映画だった「燃えあがる女性記者」は別として、大ヒットした「RRR」も本作も、そうした骨太のテーマを一大エンタメ作品に仕上げていたのは流石と言うしかありません。両作品とも、テンポの良いストーリー運び、息を呑むアクションシーン、複雑な感情を交えた男同士の友情と言ったエンタメ作品に欠かせない万国共通の手法に加えて、インド映画伝統のダンスミュージカルシーンや、動物さんたちの活躍など、インド特有のローカル色も織り交ぜて、本当に面白い作品を堪能することが出来ました。
そして本作独自の特徴と言えば、クリント・イーストウッドの「荒野の用心棒」が物語の鍵になっていること。勿論イーストウッド自身は出演していませんが、彼そっくりに模したキャラクターが登場。最初はB級色全開だなあと思ったものの、これが大詰めになって伏線回収されてビックリ。感動巨編を形成する重要な要素に仕上げていくんだから、御見それしましたとしか言いようがありませんでした。
一方で「RRR」との大きな違いがあるという気も。「RRR」は、イギリスの植民地下でイギリス側の”悪者”と闘う話であり、まさにインド独立を描いた映画でありながら、国父マハトマ・ガンジー的な人物も理念も一切描かれない作品でした。対する本作は、1970年代中盤の話であり、インドが独立して30年近く経過した時代を舞台にしていましたが、”悪者”であるラトナ警視に立ち向かった”ジガルタンダ極悪連合”のボス・シーザーを中心とする部族の人達は、文字通り”無抵抗不服従”を貫いて殺されてしまいます。そういう意味では、まさにハマトマ・ガンジーの化身がシーザーであり、両作品は、本質的な部分というか、哲学の部分で対極にあるんじゃないかと思ったところで、その点非常に興味深かったです。
最後に俳優陣について。初見の俳優陣も非常に面白く、主役のシーザーは、イーストウッドに憧れるという設定でしたが、その風体はイーストウッドではなくパパイヤ鈴木さんそのもの。そんなシーザー役のラーガバー・ローレンスが、なんとダンス振付師出身と言うのだからまさにパパイヤさん!
そして一方の主役であるレイ監督ことキルバイは、キルバイとして登場した時は冴えない感じでしたが、偽の映画監督としてシーザーの前に出てメガネを掛けると、途端にジョニー・デップそっくりになったのでこれまた笑ってしまいました。
両主演とも、ダンスで魅せつつも感情表現豊かな演技も見事で、知らない俳優でしたけど中盤以降グイグイと物語に引き込まれていきました。
そんな訳で、本作の評価は★5とします。