劇場公開日 2024年9月6日

「リアル」ナミビアの砂漠 ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5リアル

2025年2月6日
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鑑賞方法:映画館

難しい

一つ二つ三つと積み上げてきた楽しい記憶、幸せな時間が、ある一つの言動で、あるいはカナが過去の苦い記憶を呼び覚ますことによって、砂上の楼閣が崩れ落ちるようにすべてが台無しになってしまう。そういう意味ではハヤシ君がいくら気を遣っても言葉選びをしても無駄なのかもしれない。
カナが声を荒げハヤシ君に飛びかかる場面では思わず顔を背けてしまった。彼は何とかコトを穏便に納めたいと思うのだがカナの壊れた心はそう簡単には治らない。結局彼は応戦することになる。掴み合い、叩き合い、蹴り合い、罵声の浴びせ合い。
この映画について、逞しく強かに、そして奔放に生きる若い女性カナの生きざま、そしてカナの怒りは男性の横暴など、社会の矛盾に対するものなのだとする捉え方もある。
しかし僕はカナの言動に、彼女の精神的な問題、欠陥というものを感じる。その観点で見ると実にリアルな描写が続く。そのリアリティーこそ、この映画の凄さだと思う。彼女の言動にはアダルトチルドレン、双極性障害、境界性人格障害、ASD、いろいろ疾患名が思い浮かぶがそんなレッテルなんてどうでも良い。
いつの日にか、カナに平穏な感情、そしてそこから生まれる平穏な生活が訪れるのだろうか。それは社会の変革ということよりも、カナの内なる問題なのである。

ゆみあり