「4ヶ月ロングランのわけ」ナミビアの砂漠 きーろさんの映画レビュー(感想・評価)
4ヶ月ロングランのわけ
流石に行かなくちゃとサービスデーと仕事の合間がぴたりとハマったのがユーロスペース。あんまり良い思い出がないから警戒はしていたのですが…案の定、後ろのおじさんが席を蹴る系と持ち込みのお菓子の袋カサカサ音させ系のダブルコンボでわたしの137分が終わりました。途中で後ろ向いてお菓子分けて貰えばよかったかな?って思ってる間にやっとタイトル出た(笑)。
というわけで、周りのことが気にできず自分勝手なタチの悪いオッサンが全く出てこない若者の若者による若者のためのこの映画ですが、実はカナの自暴自棄や心の不調の原因は「父親はクソ野郎で死ぬべきだが、父親以前に1人の人間として接しないといけないし、許してあげるべきだと思う」という言葉に集約された、毒親であるオッサン、つまり父親へのトラウマなのかも?と思ったり。愛情は欲しいけど与えることは苦手で、他人の所有物にはなりたくないのに独占欲はある、みたいな感情のチグハグさも幼年期に負った心の傷(愛されなかった/愛され過ぎた/異常な愛情だった等)が原因なのではないかと。自分もなかなかの家庭環境だったので今だにお酒を飲んで声を荒げる人が本当に嫌いで理解できませんし、女に手を挙げる男も男に手をあげる女もとても苦手です。なので、後半のシーンはずっと顔を引き攣らせながら観てましたけど、山中遙子監督の言う
「生きている過程、その延長に映画を作れたらいい」
「映画は社会を映す鏡だから、映画で描かれていないと、社会に存在しないということになってしまう」
という意図はとてもよく反映されていたと思います。全ての若者が自暴自棄なわけではありませんが、10年後や20年後、下手すると2.3年後の自分すらイメージせずに今を生きている人がとても多い気がしますし、彼らの示す優しさとか思いやりはどこかで借りてきたような薄っぺらさを感じてしまうこともしばしばです。むしろそれがあるのはまだ良くて、自分さえ良ければ良いという行動をする人が増えてきたような風潮をよく捉えている描写がたくさん。でもこれってつまり、彼らの親の世代が子供に対して薄っぺらかったりどこか歪んだ愛情しか注いでこなかった因果応報だったりするのかもしれません。世代を超えたブーメランってやつですね。特に共感を拒むようなカナの行動や態度、言葉遣いに、子供を正しく(正しいって何?)育てることの難しさを痛感せざるを得ませんでしたね。彼氏のハヤシなんて親の理想に潰された感じがめちゃくちゃリアルでしたし。
とにかくギチギチだった戦中戦後を生き延びた世代が未来ある若者がお腹いっぱい食べれて楽しく自分らしく生きていける世界を作ってくれたのに、それをいとも簡単にぶっ壊したベビーブーマーの世代は今後日本がなくなっていく原因として語り継がれていくに違いありません。日本と日本語が残っていればですけどね。
いやあいい映画だったな!みたいな気持ちにはなりませんが、河合優実の憑依系の表現力と体当たりの演技(必然性のないシーンを監督が敢えて入れた意図とは?)と死んだ魚の目には長すぎるカットを飽きさせず見せてしまう迫力を感じました。にしても宇垣美里さんがあたらしいテレビのコンテンツアワードでこの作品を上げてたのは中居正広問題が明るみになっているだけに意味深。「お前みたいなもんが作ったもんは毒だろう」ってね。
なんだか取り留めのないレビューになってしまったけど
なんだか取り留めのない映画なんだよたぶんね。
毒親、ダメ彼、ダメ彼女、ダメ旦那、ダメ嫁経験者(継続中)は強烈なフラッシュバックにフラフラするかもね。
それではハバナイスムービー!