「若者たちは、ポジティブな希望を見出せずに、《働かなくなる》世界的現状を映し出した映画」ナミビアの砂漠 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
若者たちは、ポジティブな希望を見出せずに、《働かなくなる》世界的現状を映し出した映画
非常に言いたいことが、分かりにくい映画でしたが、
若者は敏感だから、成人した大人たちより、
もっと切実に不安を感じて希望を失っている。
コロナ(パンデミック)
ウクライナ戦争、
環境問題(地球温暖化)
日本なら《地震=南海トラフに、スコールのような大雨)
カナは大声で叫ぶ。
「日本なんか、少子化と貧困で、絶滅するんだよ!!」
世界的に若者は働かなくなっているそうだ。
事実2人目の同棲相手のハヤシ(金子大地)も仕事を辞めてるし、
カナ(河合優実)も、美容脱毛エステサロンを首になる。
美容脱毛なんて、一生続けたって脱毛は終わらない・・・そう
客に本当の事を言ったせいだ。
決して楽しい映画では無い。
カナは恋人と暮らしていたって、心は満たされていない。
今の時代、自分以外を愛する事は可能だろうか?
自分さえ愛せない若者も多い。
そんな自分に子供が育てられる訳がない。
自分に絶望してるのかもしれない。
ハヤシがパソコンの手を止めず、
「お腹が空いた!!」というカナに、
「映画でも観てて!!」とハヤシが言う。
「えーっ、映画なんか観ても意味ないし・・」
これが山中監督の本音だとしたら、
本音というか「映画なんかで空腹は満たされない」
これは現実で真理だから、
笑ってしまった。
満たされず苛立ちを募らせたカナは攻撃的になり、
ハヤシの言葉尻を捉えて難癖をつけ、暴力を振るった。
(女性からのDV・・多いらしい)
山中瑤子監督の脚本は、刺激的で性的な会話が多い。
ホンダ(筧一郎)が札幌に出張。
「ススキノの風俗に誘われたら行く?」
カナがカマをかける。
「絶対に行かない」と誓ったのに、
「ごめんなさい、上司の誘いを断れなくて風俗に行きました」
「気持ち悪くて出来なかった。勃たなかった」
「気持ち悪いって失礼でしょ!!」
確かに、カナはすぐ切れる。
ホンダ(筧一郎)が、なぜに泣いてカナに謝るほど低姿勢なのか?
家事全般を受け持ち、飲んで帰り吐いたら甲斐甲斐しく世話を焼き、
労いの言葉をかける。
(これが今の若者?)
河合優実はとても頑張って良い演技を見せていた。
美しく魅力的だった。
しかし河合が演じた《カナ》という人物に、共感するのは困難だった。
人物の背景が判然としない。
カナの母親は中国から日本の大学に留学して、そこで日本人と結婚して、
カナを産み、今は親族一同と賑やかに中国で暮らしているらしい。
ビデオトークが中国からカナに掛かってくる。
すごく楽しそうに画面の向こうは盛り上がっている。
「ママを出して‼️」と頼んでも、カナはニーハオとあと一つくらいしか
中国語が話せない。
これもカナのイライラの原因ではないのか?
愛に飢えている。
ハヤシにも、ホンダにも満たされない渇望。
カナが動画サイトで見ている「ナミビアの砂漠の水飲み場」
カナは乾いているの?
カナは早く言えば、両親に捨てられた娘なのかな?
ラストのナミビアの水飲み場で水を飲む動物たち方が
幸せそうに見えるんだろう、カナには。
しかしカナは分岐点に立っている。
そうやって無自覚に若さを消費してたら、ヤバいよ。
(いつまでも若くも美しくも、居られない・・・)