シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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制作意図は高く評価していい作品
感想
2024年11月5日にアメリカ大統領選挙が実施される。核となる二大政党、現政権の民主党。パワーオブバランスの原則論からいくと次期政権は共和党という概念は21世紀の今日、日々、刻々と変わっていく世界の政治状況を見る限り全く通用しないものとなっているのは明らかである。現に今回の大統領選挙の二大政党の支持率を見るとその差は僅差であり、ここだけを見るとアメリカの世論が二分されているように感じる。
大統領候補者の資質の判断やアメリカ本国内における人口増加によるダイバーシティの深化が進み多元的思想に基づく経済行政運営などは合衆国と言うだけのことはあり、法律、政治、経済、文化思想における分野に於いてまで50州分の考え方が明確に別れてきているのも最近の傾向である。
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それにしてもこのような映画がいつかは出来るのではないかという予想はしていたが、やはり創ったな。という実感で制作が米映画界のダイバーシティ深化の代表とも言える問題作連発のA24。今年の春、全米でたった2館で公開されながらも2週間全米興行収入1位を記録したというニュースを見て絶対に観ておかなければいけないと感じ、映画館に足を運んだ。
世論分断どころか、現政権に対して21世紀のシビル・ウォーを起こしたカリフォルニアとテキサスの西部連合(WF)。そして連邦から離脱したフロリダを中心にした他州連合の第三勢力までもが絡み全米を巻き込む、WFよる現政権に対しての戦闘が展開されている状況。戦線はWF優勢で末期状態。ニューヨークから内陸部を経由して無法地帯となっているアメリカ東海岸地区を南下、陥落寸前のD.Cを目指して大統領に直接インタビューを試みようとするロイター(ユダヤ系創業者。現実の非米国報道会社名が映画内で使われていたのもショック!)通信の雇われ報道記者の主人公達の視点を中心に世界中の紛争戦争におけるジャーナリズムの意義とは何かを考えさせるのかと話の途中まで考えていた。
しかし結論はそこにジャーナリズムの意義などを感じさせる余裕さえもない、怒りと暴力の応酬による権力装置の奪還の瞬間しか描かれていなかった。まさに硬直化し、泥沼化した人間の姿を冷淡に克明に記録する記者と使命(大統領殺害)を全うするのみに執着する兵士の姿しかなかった。最後に大統領のコメントが聞けそうになる落ち着いた展開があるのかと思わせる雰囲気はあるのだが、弁解の余地無くあっと言う間に生命が奪われてしまう。人間性の俗悪な低次元な部類の振る舞いで歴史が形創られてしまう恐怖が語られる。人間性を優先して行動する本人自身が抹殺されてしまうという理不尽な世界を描いていたのだ。現実的で極めて冷徹な恐怖である。後味が必ず悪いのがA24制作全作品の特徴である。
製作・脚本・演出・映像
政治的な圧力もかかったと思われるテーマを臆する事なく勇気を持って創り上げた心意気は◎。
設定的に統治機構の重責を担う連邦警察の廃止やカリフォルニアとテキサス、民主党の牙城州と共和党の保守本流の中心州の連合と武力闘争など現実的に考えられない設定であり、話はあくまでもリアルなようで原則論としての政治的視点からはズレる大担な状況設定であった。脚本のみの出来は深く突っ込めない事情もあったのだろう。⭐️3程度の出来と感じる。
実際のところ2024年10月現在ではテキサス州の民主共和双方の支持率は極僅差で共和党優勢であり共和党絶対優位ではなく民主の想定外大逆転もありうると空想された原因となっているのかも知れない。
演出的には厭世観とジャーナリズムの真迫観が感じられる描写でありドキュメントを観ている様であった。軽率に描かれていたアジア系ジャーナリストがホワイトプアそのものの考え方を持つヤバい白人(ジェシー・プレモンス)に射殺されるシーンもショックで目を見張る。製作者であるA24の勢いの強さを感じる。
映像はVFXの進歩により現実に想定される映像として遜色のない出来映えとなっている。◎
配役
報道記者達の出身と出自がアメリカそのものを反映しており興味深い。全うな人間性を併せ持つ報道記者であるリーをキルステン・ダンストが今までにない役どころとして淡々と地味に演じている。新進ジャーナリスト、ジェシー役のケイリー・スピーニーも人間的に一皮剥ける過渡期の役を上手くこなしており印象的であった。また気がおかしくなるのを必死に抑え、大統領に最後のインタビューを試みた南米系のジョエル役ワグネル・モウラも印象的で記憶に残る。更に老練で常識的な人間性でほぼ現在の政治的主流意見を持ち合わせている黒人のサミー役の名優スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンも素晴らしい演技で良い味を出していた。
現実としてのアメリカの統治機構は大統領統率の形は取られているが、司法、行政的に見ても三権の分立は厳しく守られていて、簡単に分離独立を一つの州が唱え実現するのは難しいだろう。しかし映画の中で描かれる個人主義に基づく極端な保守白人優位思想などは多民族国家の中でこれから問題が大きくなる可能性があり注視していく点として描かれているところは評価できる。
作品として流動的な政治状況と様々な現体制の意見に臆する事なくひとつの主義主張を映像化した事と俳優陣の素晴らしい演技に敬意を払って2024年現在の評価としては⭐️4とした。
IMAX鑑賞
結構良かったです。
シビル ウォー アメリカ最後の日
この映画は観る人によって色々な意見と云うか評価が出ると思う。ジャーナリストのを題材にした面もあるし,とにかく人間の残酷さが描かれている作品でもあるね。死が他人事になる過程は残酷だよ!映画の中盤で「どこのアメリカンだ?」って。考えてしまう重要なセリフ。
監督さんがどの様な意図で作品に想いを込めたかは分からないけど内戦理由は差ほど関係無いのでしょう。また,戦争にうとい日本人には理解出来ないところもあるかもしれません。
キルスダンストンさんは上手く演じていましたよ!
ゾンビを内戦に置き換えたヤツ
どちら側のアメリカ人か
予告を初めて観た時から楽しみにしていました
でも予告から想像していたのとは全然違っていました
悪い人達によるアメリカの内戦を良い人達が解決するヒーローもの、よくあるハリウッド作品かと思っていました
でも全然そうじゃなくて、戦場カメラマンの4人組を中心にアメリカの内戦が描かれています
戦場カメラマンの視点なので、なぜ内戦が起こったか、どっちが悪いか、そういうのはストーリー外です
「PRESS」と書かれた防弾ベストを着ていても撃たれないわけじゃないのに、激しい銃撃戦の中にも入って行くカメラマン、そこまでの使命感ってなぜなのでしょうか
撃たれた人を助けるより先に写真を撮るカメラマン
それがカメラマンのやるべき事だけど、写真を撮るより助ける方が優先するべき事と思ってしまう私はそこが受け入れ難く、だからあのラストの2人の行動に「何で」とずっと心に引っかかったままです
そんな戦場カメラマン、敵かわからないのに「相手が撃ってくるから撃つ」という兵士、それが戦争というものなんでしょう
終始セリフがあまりなくとても臨場感がありました
悲惨なシーンも多く、そんなシーンなのに軽快な音楽が流れたりして、そういう違和感が効果的だったと思います
何よりも心に残ったのが「What kind of American are you?」と、何事もなくごく普通の日常を過ごしている服屋の店員さん
私はあの店員さんだと思いました
これは警告映画
A24の最高傑作
戦争との距離感
架空のアメリカ内戦を、戦争カメラマンの目を通して描く、戦争映画ならぬ「戦争体感映画」。
なぜこのアメリカ内戦が起こったか?などといった細かい設定は説明せず、いきなり「内戦状態」から始まる。そしてそれも終戦間際。戦場カメラマンを主人公にすることでどちらの立場も取らせず、ただ戦争のリアルを描いてく。
ニューヨークからワシントンD.Cを目指すことになる主人公たちが遭遇するのは、今までさんざん語られてきた戦争の悲惨さや怖さだけではなく、国民の「無関心」。自身に火の粉が降りかからない人たちにとっては、ネットで見る何処かの戦争と大して変わらない。それが自分の国のことであってもだ。
この映画のすごいところは、戦争への「無関心」「距離感」の描き方である。
今まさに世界中で起こっている戦争に関して、ほとんどの人がネットで知っている。が、情報として知っているだけである。そのことを再確認させられる。
あえてアメリカ内戦を舞台にし、戦場カメラマンの視点を使うことで、戦争への距離感を0にするという試みが見事に成功している。
映画館から家に帰る途中、町の風景を見ながら「戦争がおこったら、どんな風景になってしまうんだろう」と想像した。話の通じなさそうな大人が銃を持って立っているのを想像して、心から平和を願った。
もしかしたら
キルステン・ダンスト
音響が秀逸
近年最高の悪夢体験!珠玉のバーチャル絶望エンターテイメントを貴方も!
現代アメリカ内戦をカネかけてリアルに描くって!?ワォ!
というのが初報の感想。
ジャーナリストの視点で描くと聞いて、「ンーーーまぁた左巻き巻きの映画かなぁ〜?」と若干心配したけど、そんな事はなかったですね。
ジャーナリストってやつも大概やなって感じで描かれるし、人種差別的な人も出てはくるけど、こんなのぶっちゃけどの陣営にもいるっしょって感じ。
いかにもトランプっぽいグレートアメリカアゲインな大統領(DCを抑えている)にインタビューしたいジャーナリスト達のロードムービー。
この4人の主要人物の地獄巡りを通じて各々のキャラクター性をコンパクトに刷り込んで来る。この中の誰が死んでも(酷い目に遭っても)ダメージ喰らうだろうな、というところまで持っていく手際が見事。
このテでやられると、それ以降全てに不穏さを感じるし、ずっとビクビクするしかなくなる。上手い。
金掛けてるだけあって説得力ある情景と出演陣の演技とキャラクター配置で常に緊張を強いられる。最近寝不足で、エイリアンとかもちょいちょい意識失いましたけど、この映画ではそんな暇はありませんでした。
特に最前線であるシャーロッツビルに構築された西部連合の集結地の描写は圧巻でしたね。うわ、軍事大国の内戦ってこんな事になるんだっていう迫力が豪華な画面からヒシヒシと伝わって来ました。
最後まで戦場の緊張感と共に、誰がどんな目に遭うか分からない展開は見事でした。
映画ならではの楽しい悪夢が見られる機会を見逃すな!
どうやって内戦に至ったかとかは心底どうでもイイんですよ。むしろフォーカスした主要人物達を通じて断片的な情報を見せていく手法は映画として大正解じゃないかと思いますね。やたらに経緯を描いてたら、それこそ思想強めで見てられないものになったんじゃないかと。ロメロのゾンビ映画と同じで「どうしてそうなったか」より「そこでどう生きるか」を主眼に据えているんだと思います。
で、こんなにフレッシュな体験ができる映画そうそうないのに、劇場はガラガラ。
(音が凄いってんで、席数の多いDolbyAtmos環境で観たんで余計に際立ちました)
本当に洋画暗黒時代を感じますね...。
こっちではむしろ本物の絶望を味わう羽目になりましたとさ。
戦場カメラマンの視点
アメリカ国内の内戦勃発をテーマにして、戦場の最前線を取材するジャーナリストの視点で描いたアクションスリラー。
リアルな戦闘シーンは迫力があり戦場カメラマンの命がけで取材する姿にはハラハラしました。カメラマンのシャッター音と同時に一時停止する映像が非常にインパクトがあり緊迫感が増しました。
2024-164
ココロのの処理中
極右・保守VS左翼・リベラル
日本でも極右や保守派が幅を利かせて来ていて危ないなと最近は思う。リベラルが一番フラットな立場で物を見れるのに対して、反日だの売国奴だのレッテルを貼りたがる極右や保守派は新なる戦争の火種になりかねない。アメリカに付くか中国に付くかみたいな極端な選択に走るのはあまりにも危ない。どっちにも付かずが一番良いのだ。アメリカは移民の国だからもっと複雑だし白人だけでは生きていけないのに移民に厳しい差別主義者を大統領にしようとしている。この映画みたいに極端になるのもあながち嘘ではない。人を理解して尊重し愛し愛されて育んでこそ人間社会は成立するものだ。
なぜ、どうしての連続
議事堂襲撃事件のパロディ
なぜドナルド・トランプのような人物がアメリカ大統領になれたのか。イギリス人監督アレックス・ガーランドによれば、本作の着想はまさにそこにあったそうなのだ。しかし、このアレックス・ガーランドという人、かつて本心を語ったインタビューを一度として目にしたことのないひねくれ者で、作品の解釈につながるようなヒントもまったく教えてくれない超がつくほどのあまのじゃくなのである。
確かに自分の都合の悪い報道はすべて“フェイク・ニュース”として片付けるトランプの態度にも大いに問題があるとは思うのだが、ウォール街やDSの言うことをまったく聞こうとしないが故に、左派報道機関にやってもしない罪を次から次へとでっち上げられているのもまた事実なのである。民主党陣営に不利な報道はすべて“陰謀論”ですまそうとする、左に偏った日本マスゴミの報道がどこか胡散臭く感じるのも、まさにそのせいなのだ。
カリフォルニア州(民主党地盤)とテキサス州(共和党地盤)が分離独立を求めて決起、その鎮圧に動く正規軍と民兵組織が内戦状態に突入している、という設定だ。戦場カメラマンとしてカリスマ的存在の(ファッションモデルから戦場カメラマンに転身したリー・ミラーを彷彿とさせる)リー・スミス(キルステン・ダンスト)と彼女を尊敬してやまない駆け出しのジェシー(ケイニー・スピーニー)らプレス一行が、米大統領へインタビューをするためワシントンD.C.を目指すロード・ムービーとなっている。
はじめは分離独立を目指すヒスパニック系民兵と戦っていた白人主体の米軍だが、一行がワシントンD.C.に近づくにつれ、軍の内部で同士討ちがはじまり、出身州や国だけで敵味方を判別する残虐行為へと発展。はてはクーデターを起こした軍隊が大統領が立て籠ったホワイトハウスに総攻撃を仕掛ける。白黒をハッキリつけたくないガーランドならではの演出だろう。現実世界を反映してそうな政治的アレゴリーよりもむしろ、リー・スミスとジェシーの関係性に注目すべき映画のような気がするのだ。
『スパイダーマン』のMJとは180度異なる役処のダンストが、リンダ・ハミルトンのような皺を眉間に浮かべ、ベテラン俳優ならではの貫禄を十二分に漂わせている。あまりもの修羅場に堪えきれず思わず車内でオエコを撒き散らすジェシーとは対照的だ。しかし、自分の師匠にあたるベテラン記者を軍の発砲により失うと、ワシントンD.C.に近づくにつれ激しさをます戦闘に反比例するようにリーの態度が次第に気弱になっていく。逆に新人のジェシーは何かふっきれたような行動に出て、シャッターチャンスを次々とものにしていくのだ。
すでに名声を手にしているリーにとってこの旅は、もはや得るものは少なく失うものの方が多いわけで、失うものがなにもないジェシーとは真逆の立場にある。ゆえに、旅が核心へと迫っていくごとにリーは“保守的”になり、ジェシーは銃弾が雨霰と降り注ぐ中大胆不敵な行動をとるようになるのである。そんなジェシーを間近に見ながら、リーは自分の若い時の姿をそこに重ねていたのではないだろうか。ラスト「自分を撃たせるな」と語った誰かさんのように、ジェシーを助けようとしたのではなく自分自身を守ろうとしたのではないだろうか。
すでに権力を保持している者が保身に走れば走るほど人心というのはなぜか離れていくものなのである。守るべきものしかないカマラ・ハリス陣営が、トランプの二番煎じみたいなことしか言わないのも当然のことなのだ。失うものがなにもないジェシーはリーの◯を踏み越えて、ラスト、ピューリッツァー賞間違いなしの大スクープ写真をゲットするのである。もしかしたら、マスゴミにボロクソ叩かれ続けてもはや失うものがなにもないところに、ドナルド・トランプの本当の強味があるのかもしれない。
オシャレ戦争ロードムービーもの
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