シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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意味がわからず消される恐怖‼️❓
内戦は荒唐無稽。
従軍記者の姿がテーマ。
従軍記者は反乱軍のプロパガンダ。
カメラマン見習いの可愛い子が主役、自己中で、命の恩人が死ぬ姿や、ただ、死ぬ姿を近くで撮る、吐く、生き延びる。
他の記者も、無頼の輩のみ生き残り、手柄をたてる。
ドルビーアトモスの大画面で、大音量、局地線の、無意味な迫力。
どこのアメリカ人だ、赤サンの偏執的な兵士が問う、どこどの州です、これが正解、これがルーツ。
反乱なんて起きないことも、報道が偏向してることも、アメリカ人は承知でこの映画を楽しむのだろう。
そんなアメリカ人を他国民は、どのような目で見たら良いのだろう。
嫌だ、こんなものだ、とゆうのでは無く、アメリカを理解、報道を理解、するために、どうぞ。
はっきりとした戦争映画
タイトル通りの感想であり、これら以上でも以下でもない。
"CivilWar"という名の通り、現状のアメリカ合衆国では勿論起きてはいない「もしも」のお話。
これまで少なからず戦争映画を見てきた。その多くとして実際に起きた戦争にフィクションを載せた映画、もしくはスーパーヒーロー等の架空でSFからの善悪が分かった映画、こうしたものを観てきた。だからこそ、結果が分かっている中で戦争に表す意味とは何なのか様々考えていた。
ただ今回ばかりは異なり、もしかしたら将来起きるかもしれない。そして誰が正義で誰が悪なのかは決まっていない。本作ではフィクションの内容であったからこそ一応善と悪の側が立てられていた。
それでも改めて私が感じたのは
「誰もが正義であり、悪である」
だからこそ鑑賞途中から本作の戦闘シーンの多くから
「こんな事があったんだ」などと未来に起きるかもしれない
ドキュメンタリーとして俯瞰していた。
これ以上内容を深く語ることはないが、また観たいとは思わない「はっきりとした戦争映画」であった。
24-105
ずっとピントが合わない
期待し過ぎただけですが、個人的にバランスが悪い印象を受けました。IMAXで観ましたが、損したなというのが正直な感想です。
極限まで説明を省いた作風はいいと思います。劇中の世界に否応なく放り込まれるのは大歓迎。だがしかし、肝心のシーンで流れるノー天気な曲が緊張感をことごとく削いでくる。監督は意図があったと思うんです、だけど汲み取れなかった。端的に合わなかっただけなんですが、没入感を優先するならそこは変な選曲は要らなかった。
ジャーナリズムとは何なのか。それも汲み取れなかった。少女に関してはただ単に撮りたいものを撮ってるだけで、自分がトラブルの元になってること気付いてるのか?と問いただしたいレベル。
ジェシープレモンスのシーンは手放しで良かったです。登場は僅かながらも圧倒的な存在感。シチュエーションもあるのでしょうが、それを差し引いてもスクリーンを独占してました。⭐︎2つは全て彼に。
全ての人間が「的」になるのが戦争
連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー(公式サイトより)。
エンドロールが終わり、館内が明るくなってからもしばらく立ち上がることができなかった。IMAXシアターの底力はあったものの、それ以上に、ついさっきまで描かれていた「人間」に立ち竦んでしまった。
本作ではアメリカを舞台に「分断」が引き起こす絶望的な未来を経糸に、ジャーナリズムの本質、暴力がもたらす高揚感、市井の無関心、次世代への継承、アメリカ(アメリカばかりでもないように思うが)で猛威を振るう二元論などが緯糸として織り込まれている。
トレイラーにも採用されている「What kind of American are you ?」というセリフが登場するシーンは、この「分断」を極めて端的に、暴力的に、不気味に描いた白眉だ。ドラえもんの「どっちも正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」という名言が頭をよぎる。リー役のキルステン・ダンストのリアル夫であるジェシー・プレモンスが、ほっぺたを掻くように人を殺す、めちゃくちゃおっかない兵士を演じている。チープな赤いサングラスはトラウマモノである。
こうした「正しさ」のぶつかり合いを戦地から報じてきた歴戦のカメラマン・リーは、見習い女性カメラマン・ジェシーに、「自問自答なんてキリがない。記録し続けることよ」と戦場ジャーナリズムの神髄を伝えながらも、その空疎さ、無力さから、次第に心が苛まれていく。
そんなリーとは対照的に、ジェシーは自らも命を落としかねない極めて危険な状況でさえ、時に兵士を追い越して、瞳孔を開いたままシャッターを切り続けたり、時に笑顔を見せたりするようなる。生死の境目にいることに高揚感や興奮を覚えてしまう、悲劇的な成長を遂げ、ラストへと向かっていく。
こうしたリアリティ溢れる演出や、大胆で繊細な俳優陣の演技も然ることながら、圧巻は音である。武器の号砲、人間が踏みつけられる音、ヘリや戦闘機の爆音、戦地に響き渡る怒号、そして場面に全く似つかわしくない穏やかなアメリカンミュージック。ぜひIMAXシアターで堪能したい作品である。
正義による煽動は二元論から生まれる。その瞬間、対立する人間は人間でなくなり、ただの弾丸の「的」になる。二元論を煽る人間、翻弄される人間、無関心を決め込む人間、葛藤する人間、暴力に高揚する人間、状況を報じる人間、その全ての人間が「的」になるのが戦争である。では反戦、非戦はどこが糸口になるのだろうか。現実のアメリカでは民主党支持であるカリフォルニア州と、共和党支持であるテキサス州が同盟を結ぶというフィクションに、アレックス・ガーランド監督からのヒントが仕込まれている。願わくば、ジェシーの年頃の他愛なさ、好奇心、無邪気さが死に直結するような世界にならんこと。
闘いの向こう側
この国に生まれ育つと何故の分断国家なのかということに、今ひとつピントが合わない。政治であれ宗教であれ、如何な出所信条の違いを突き合わせても、よもや武器を手にして相手をねじ伏せるという所まで行かないのが大方の日本人ではないだろうか。周知のようにこの映画ではハナからその対立理由の説明が全くされていない。表現したいのは武器持って対立したらどうなるか、だ。今までの数多の戦争映画でその狂気性が表現されてきたし、同じアメリカ国民同士の争いという場面の目新しさだけで画期的な展開は見られなかった。ただ、視点が報道畑の人間の道中記ということで、極めてドライな、ある意味兵士の殺伐とした心情と紙一重な空気感が画面に重みを持たせていたことは確か。
終演後に隣の客席から「思ったのと違った。重かった」という言葉を小耳に挟んだが、それでは本国で高評価は得られなかったろうに。そんな事より本当の国家間紛争でもその終結後の事の方が遥かに面倒で厄介なことに思いが至らないのか、何とも得心がいかないものだ。
救いようがない
戦争というもの
移動距離が長いからか、意外とローペースで進行するロードムービー。戦...
迫真。
〔60代男です〕
一切の説明なしに、アメリカが内戦状態におちいっている状態で始まる。
東西で対立しているらしいが、その理由も不明。
西側勢力に属しているニューヨークの4人の報道カメラマンたちが、敵の東側勢力である大統領にインタビューするため、首都ワシントンを目指して危険な旅をするロードムービー。
途中、戦争と無関係に暮らす人々の町もあるが、兵士たちに停められて、彼らの気分次第で射殺されてしまう恐ろしい状況にも出くわしたりする……。
主人公たちが行く先々で目撃することが、ただの作り事に見えない。
アメリカが内戦に陥れば、本当にこうなるんじゃないかという気がするほどリアルさを感じさせる。
派手な戦争ものを期待する人の期待に応える作品ではないが、最初から最後まで、息詰まる緊張感が持続する。
最後に到着したワシントンでは、ホワイトハウス陥落の市街戦の真っただ中に入って行く。
なんか「トゥモロー・ワールド」を連想する構成だった。
主演のキルステン・ダンストが、タフな報道カメラマンになりきる名演。
新人カメラマンのケイリー・スピニーが、小柄だし23歳というのがウソみたいな子供にしか見えないが、本作は彼女が経験を重ねて成長していく物語でもある。
映像も迫真だったが、主人公たちが交わす言葉も印象的で、思い返せばどれもこれも名ゼリフだった。
名作だが、ひとつだけ引っかかったのは、新人娘がなんとフィルムカメラ1台だけで撮ってること。しかもモノクロ。趣味でやってるわけじゃないんだから、これは説明してもらわないと理解できない。デジタルデータでは電磁波で消されるとか何か問題が予想されるということだとしたら、遥かに経験豊富な主人公がデジタルしか使っていないのは変だしね。
思い出した小説
予告からのイメージとはちゃうかった・・。
圧倒的にシナリオにリアリティーがない
報道について
戦場カメラマンの視点で、近未来かも知れない内戦中のアメリカを描くものですが、今現在の世界の縮図を巡っているようにも感じました。
残酷で緊迫した描写もありますが、音楽やロードムービーのような構成で重くなりすぎずに観やすかったと思います。
多くは語らないものの深い葛藤を抱えた戦場カメラマン・リーのキャラクターも印象的で、キルステン・ダンストの演技も良かったと思います。
カメラマン志望・ジェシーの軽率な行動は、うーん…と感じるところもありましたが、内戦でさえなければよくある若者のノリですし、やはり理不尽な暴力の方が悪いだろうと。
全体的に若者に未来を繋げるという想いも感じます。
ジャーナリストのスクープ合戦への皮肉がありつつも、真実を伝え警鐘を鳴らすという報道の使命に触れているところも印象深いです。
SNSでデマが飛び交う昨今、選挙にも多いに影響があるようですし、正確な真摯な報道が大切だと改めて感じます。
報道についての作品でもあるのかと。
最後のカットは、禍々しい…
こういうのは現実でも見たことがありますが本当に胸クソで、戦争が狂っていると強く思わされます。
アジア人は問答無用
うーん。タイムリーなテーマを扱っているだけに結構期待していたんだけど、ちょっとこれは頂けない。『明日の現実かもしれない』と謳うにはあまりに現実味がない。
ジャーナリストを主人公にするというのは結構攻めてて面白いなと思ったけど、これといった良さは引き出せておらず、正直前半はかなり退屈だった。なんか軽い。全くもって重さを感じないぞ。これが『アメリカ最後の日』だ?嘘でしょ?
ドキュメンタリーチックなのにめちゃくちゃ作り物っぽい。展開も劇画ぽくて緊張感がない。ジャーナリストを主人公にしたことでカメラを使った演出が取り入れられており、シャッター音と共に映される静止画は、動く映像よりも恐怖を感じたし、そこに関してはいいアイデアだなと思えた。ただ、それを加味しても狙ってんのか?わざとなのか?と疑っちゃうほど映画ですよ!作ってますよ!感が強すぎるし、全体的に安っぽくて印象に残るシーンも僅か。CGを多用しているのがすぐ分かる。もっと上手くできないものかね。。。
IMAXでの臨場感は半端じゃなかった。
迫ってくるようなヘリコプターの轟音、耳に鳴り響く銃声音、重くて痛い爆発音。劇場でなければここまで没入することは出来なかった。音に対するこだわりは一級品。
それ故にこんなちんけな脚本になってしまったのがガッカリ。しかも、音はすごいんだけど映像がつまらないから、ホント退屈してしまう。IFを描くにしても、もっと映画らしいワクワクや恐怖が欲しかった。歴代の戦争映画に何も近づけていない。これでは、歴史に名を残せない。あまりに微妙すぎる。
正直何も印象に残らなかったので、自分にしてはかなり短いがこの辺で。書くことが無さすぎる。個人的にはオチに嫌悪感を抱いてしまったから、気持ち的には星3.0以下。ただ、ジャーナリストという設定、そして音響のことを考えれば、この点数が妥当かなと思える。
うーん。期待していただけに、ショックがデカイな。。。社会風刺にも何にもなってないもんな。予告が全てなんだよな。。。
ある意味、オブラートに包んだ情緒的な作品。
予想よりも、かなり情緒的な描きかたではある。やはり、はっきりとは描きにくい題材なのかもしれない。
各州の州知事が出てくるのかと思いきや、そのあたりは説明のみで、大統領のインタビューを敢行しようとするメンバーの置かれる劇的な状況がロードムービー的に描かれていく。
少し物足りない感もあり、期待とは違う印象もある。
何かを意図して作られた可能性もあるのではないかと、勘ぐってしまうほど、大統領選の動向によっては、あり得ない話ではなくなっていると感じる。
民主主義は多数決で物事が決する。その結果を不正な手段や、暗殺や、戦争で変えようとするときが、シビル・ウォーの始まりかもしれない。
いくら嫌いな人間が大統領になったとしても、そこに多数の民意があるのであれば、その事実を受け入れて、平和的な手段で乗りきってほしいと思う。
評価は割れると思うけど、私は高評価。
とにかく、映画館では何度も、周囲の人が吃驚しているのを感じられるほどに、怖さを体感できるアミューズメント的な映画ではあったと思う。
そんな風に銃撃シーンを楽しんで見ている人なんて私くらいのものかもしれないけれど、ホラー映画が怖さを楽しむ映画であるように、この映画もその衝撃シーンを楽しむ映画としては最高だったかもしれない。
いや、そこが結局映画館で金払って、観る理由でもあるんですよ。死体がいくら出てこようと、衝撃的な殺戮シーンがいっぱいあろうとも、それらは作り物なのだから。
だから、どれだけ問題作だと言われていても、映画はアミューズメントでないと困る。
その意味で、本作は十分楽しめたので秀作だと思いました。特に、やはり映画館の音響でないと、この映画のアミューズメント性は半減すると思えるほどに、音は凄かったです。多分、音に関してはかなり入念に作られていたと思います。
ただ、ストーリーに難を感じてしまうようなタイプの人だと、この映画は全然面白くないかもしれません。例えば、大統領選の年に公開されていることを意識するような人で、かつ、トランプが好きな人だと、リベラル・民主党のプロパガンダ映画にさえ見えるんじゃないでしょうか? カリフォルニア州とテキサス州の連合軍っていう設定がかなりあざといわけですし。FBIを解体してたり、実際の憲法に合致してない三期目の大統領だなんて、トランプそのものなわけですしね。
しかし、この映画にはストーリーらしいストーリーは特にないのです。いや、作り手のアレックス・ガーランド監督には何か言いたいことはあるのでしょうけれど、そんなの無視して良いと思います。とにかくこの映画は、怖さを存分にアミューズメント感覚で楽しむ映画なのです。
それにしても、あの傑作ドラマ『ブレイキング・バッド』に出演以来売れっ子となった、マット・デイモンをブサイクにしたとよく言われる、ジェシー・プレモンスはサイコパス的な役をさせたら素晴らしい怖さと気持ち悪さを発揮しますね。
秀作です。
追記:そのジェシー・プレモンスと、ジャーナリスト役をやってたキルスティン・ダンストさんは夫婦だそうで。
プロットは刺激的ですが、合衆国が国内戦争に至った事情が皆目わからず、リアルな戦闘場面が宙に浮いてしまっている問題があります。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、アレックス・ガーランド脚本・監督によるアメリカ合衆国・イギリスの合作映画で「A24」の製作・配給によります。
19の州が合衆国から離脱しテキサス州とカリフォルニア州からなる「西部勢力」と連邦政府による内戦が勃発した近未来の米国を舞台に、ニューヨークから首都ワシントンD.C.へと向かう4人のジャーナリストたちを主人公に圧倒的没入感で描いたアクションスリラー作品です。
米国の分断についてはもはや当たり前のように語られ、大統領選を控え、両陣営が激しく批判し合っているのを見ても、さもありなんという感じですが、そんなふうに麻痺しかかった頭を、本作は激しく覚醒させることでしょう。
タイトル通り、テーマは内戦ですが、比喩ではありません。南北戦争以来ともいえる、米国本土を戦場にした戦争が描かれるのです。
●ストーリー
強権を振りかざす(憲法で禁じられているはずの3期目を務める、FBIを解散させるなど)大統領に反発した19の州が分離独立を表明し、内戦に発展した近未来のアメリカ合衆国。テキサス・カリフォルニアを中心とした「西部勢力(WF)」と、オクラホマ~フロリダにかけて広がる「フロリダ連合」は政府軍を次々と撃退。けれども権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えます。しかし、WFはワシントンD.C.に迫り、首都陥落は時間の問題となっていました。
ベテラン戦場フォトグラファーのリー・スミス(キルスティン・ダンスト)と、ジャーナリストのジョエル(ヴァグネル・モウラ)は、14か月間メディアの取材に応じていない大統領に直撃インタビューを行うべく、2人の師である老記者サミー(スティーヴン・ヘンダーソン)と、リーに憧れる駆け出し写真家ジェシー・カレン(ケイリー・スピーニー)を連れ、ニューヨークを出発します。寸断された州道を迂回し、ピッツバーグ、ウェストバージニア、バージニア州を経由する、およそ1500kmの旅となったのです。
無政府状態となっている郊外を移動する間、一同は様々な光景を目撃します。ガソリンスタンドを守る地元民と、見せしめに晒されている瀕死の略奪者。政府軍の捕虜を処刑する民兵。敵の正体も判らぬままにらみ合いを続ける狙撃兵たち。内戦に不干渉を貫き、監視兵の警護の元で安穏とした生活を求める村。ジェシーは同道する3人から教えを受け、戦場ジャーナリストとして成長していきます。彼女に若き日の自分を重ねるリーもまた、ジェシーの師として振舞うようになるのです。
彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていくのでした。
●解説
映画の舞台は内戦状態の米国。合衆国から離脱した“西部勢力”と政府軍が戦い、反乱軍は首都に迫っていました。戦場カメラマンのリーたち4人は、14カ月も取材を受けていない大統領への単独インタビューの特ダネを狙ってワシントンDCへ向かおうとして車で首都を目指すのです。
観客が与えられる情報はこれだけ。内戦に至る経緯や反乱軍の実態などは、登場人物の会話やニュースの断片から推測するしかありません。そして車で出発してからは、リーたちにも何が待ち受けているか分からないのです。観客は4人と一緒に、戦場を通り抜けることになるのです。
ワシントンDCまでの道筋には、焼け焦げた車が放置され、激しい局地戦にも遭遇します。いかにも不穏な空気が漂う場所もあれば、戦争などないかのように不気味に静まりかえった町もあるのです。そこがどの勢力圏なのか、出会った人物たちの素性や所属など、全く分りません。画面はヒリヒリした緊張感に包まれて、片時も気が抜けないです。
入念な音響効果が、戦場体験を迫真のものに高めている。銃撃音、爆発音、ヘリコプターのローター音などが大音響で響き渡り、平穏な風景が突然銃声に切り裂かれて度肝を抜かれます。そうした恐怖と共に、最前線に到達する高揚感も生々しく伝えてきます。銃撃や爆発に近づくにつれて興奮状態となり、最初は戦場の現実に泣きべそをかいていたジェシーは、前へ前へと突き進むようになっていくのです。
ところで、本作の立脚点は徹底しています。
リーは目の前で起きる凶行に「自分は質問しない。他の人が質問するために記録する」と中立を標ぼうします。同様に本作も米国の分断や正義、ジャーナリズムや戦場の倫理といった問いについて、映画は一切の価値判断をしていません。観客にただ、戦場を体験させるだけなのです。これ以上ないリアリティーで。
●感想
主人公たちが車を走らせる頭上には青空が広がり、美しい田舎の風景は牧歌的ですらある。しかしほんの少し視線を移すと、あちこちで煙が立ちのぼり、戦闘、拷問、処刑などの陰惨な現実が繰り広げられています。その強烈なコントラストと、誰と誰が戦っているのかもわからない戦争の不条理性が戦慄を呼ぶのです。相手が誰かもわからず撃ち合う農場での恐怖。分断の一因でもある「どういうアメリカ人だ?」というセリフの現実性。終盤の銃撃戦を含めジャーナリストの視点で見せることで、暴力の臨場感が駆け抜けます。連邦議会襲撃事件であらわになった無秩序と崩壊への不安が背景にあるのでしょう。さらに、過去に行ってきたアジアや中東での武力衝突のすさまじさも想像できます。
また、観客の視点を担うキャラクターのジェシーは、野心満々だが経験の乏しい駆け出しカメラマンですが、そんなルーキーが血生臭い地獄巡りの果てに、皮肉な形で成長していくドラマも見応えたっぷりでした。
やはりついさっきまで平穏な日常があった場所で、暴力や戦闘が目撃されるシーンは、怖かったです。真に身近に戦争を感じさせてしまうから。
ラストに向かうにつれ、アレックス・ガーフンド監督による本作は、来国の現状を鋭くえぐった傑作と確信し始めました。ところが、ラストの展開を見て呆然としました。これこそリアルという高らかな宣言なのか、それとも全編が政治的な主張にすぎなかったのか。複雑な思いにとらわれ、素直に傑作と認めがたくなったのです。
まず前途してきたように確かにプロットは現状を反映し、なかなか刺激的ですが合衆国が国内戦争に至った事情が皆目わからず、同問題への洞察力が足りないため、リアルな戦闘場面が宙に浮いてしまっている問題があります。
やはりどうして内戦に至ったのかという経過と背景を描くべきでした。
説明を省いて、恐怖を煽る手法は、黒沢清監督の映画『Cloud クラウド』と一緒でしょう。確かに説明しない方が、よく分からない恐怖感はアピールできます。しかしそれでは現実味に欠けてしまうのです。
次ぎに、とにかくホワイトハウスに侵攻する西部勢力は、大統領を撃ち殺せば、なんとかなるといった発想の一点張り。立ち向かってくるSPは無条件で銃殺するどころか、大統領専用車で逃走を図る大統領の家族も皆殺しにするのです。もし幼い子供が交じっていたらもかなり惨たらしい映像となっていたことでしょう。そこには一切人間としての感情というものがありません。A24が得意とするゾンビと西部勢力の兵士たちとの差がないのです。つまり本作はゾンビ映画の変形といって過言ではないでしょう。
もし本当にアメリカ国内が内戦状態に突入したら、アメリカ国民は黙っていないはずです。政府軍や反乱軍に対して果敢に反戦を唱え、燎原の火の如く全国に抗議デモが広がっていくことでしょう。それがアメリカという国のお国柄で、本作のように内戦に傍観してしまうなんてあり得ません。
そして極めつきは、核のボタンの存在です。
本作のような独裁者タイプの大統領なら、ホワイトハウスを包囲されそうになったら、あらゆる手で反撃するはずです。その中には核で西部勢力を威嚇するというオプションも含まれます。核のボタンについて全く触れられなかったことも疑問に感じました。
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