シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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またもやA24 アメリカの様々な問題をブチ込んできた怪作
報道スチルカメラマンを主人公にした作品だけに、カメラや写真の観点から感想を書いてみたい。
まずジェシーが持つカメラは、なぜNikon FE2だったのか?
FE2は1983年に発売されたフィルムカメラ
映画の中では祖父が持っていたカメラとのことだった
ハイエンドではないので写真を趣味とする人などが一般的に買う機種だったはず
1983年当時で考えても、おおよそ報道のプロを目指すような人間が手にするカメラではない。
話はちょっとズレるが、今フィルムカメラは静かなブームになっていて、現代のデジタルカメラのシャープで全てを写してしまう高分解能に対して、気分を写し込むような、あいまいさや鈍いフォーカスなどの雰囲気がレトロ感も相まって人気がある。
映画に戻ると、このNikonFE2というアイテムは、ジェシーのあどけなさやひ弱さ、薄っぺらいTシャツなどと相まって、彼女がその辺りにいる普通の子で、思いつきでしか行動していない危なっかしい無知な女の子であるということを補強している。
映画の中でジェシーがフィルムを自家現像しているシーンが出てくるが、水道もない場所で現像→停止→定着→水洗の工程を行うことはできない。
フィルムなので多くて36枚しか撮影できないが、フィルムを詰め替えるシーンはひとつもない
ホワイトハウスに侵入するシーンでは、兵士の機関銃の弾切れのシーンはやたら出てきたが、ジェシーの弾切れは一度も無かった
ここまで矛盾点が多い中、FE2にしたかった理由とは何なのか?
監督に聞いてみたい
またジェシーが使っているのはモノクロフィルムだった
これについてはアメリカの過去の内戦「南北戦争」を想起させたかったという気もする
この南北戦争との関連も映画の中にはたくさん詰まっていそうで、その観点から読み解くのも面白そうだ
最後に、大統領が射殺されて兵士たちがその前で笑っているモノクロ写真は、よくハンターが獲物を前にポーズしている写真のようだった。
大統領をハントした兵士たち、その写真をハンターのように激写したジェシー。
Shootという英単語が「銃を撃つ」という意味に加え、「写真を撮る」という意味もあるように、快感さえ覚えながら本能のように連射したジェシーと、頂点(絶頂)をすでに迎えたリーとの世代交代がこの銃撃シーンで行われたのは暗喩的な気がする。
移動距離が長いからか、意外とローペースで進行するロードムービー。戦...
迫真。
〔60代男です〕
一切の説明なしに、アメリカが内戦状態におちいっている状態で始まる。
東西で対立しているらしいが、その理由も不明。
西側勢力に属しているニューヨークの4人の報道カメラマンたちが、敵の東側勢力である大統領にインタビューするため、首都ワシントンを目指して危険な旅をするロードムービー。
途中、戦争と無関係に暮らす人々の町もあるが、兵士たちに停められて、彼らの気分次第で射殺されてしまう恐ろしい状況にも出くわしたりする……。
主人公たちが行く先々で目撃することが、ただの作り事に見えない。
アメリカが内戦に陥れば、本当にこうなるんじゃないかという気がするほどリアルさを感じさせる。
派手な戦争ものを期待する人の期待に応える作品ではないが、最初から最後まで、息詰まる緊張感が持続する。
最後に到着したワシントンでは、ホワイトハウス陥落の市街戦の真っただ中に入って行く。
なんか「トゥモロー・ワールド」を連想する構成だった。
主演のキルステン・ダンストが、タフな報道カメラマンになりきる名演。
新人カメラマンのケイリー・スピニーが、小柄だし23歳というのがウソみたいな子供にしか見えないが、本作は彼女が経験を重ねて成長していく物語でもある。
映像も迫真だったが、主人公たちが交わす言葉も印象的で、思い返せばどれもこれも名ゼリフだった。
名作だが、ひとつだけ引っかかったのは、新人娘がなんとフィルムカメラ1台だけで撮ってること。しかもモノクロ。趣味でやってるわけじゃないんだから、これは説明してもらわないと理解できない。デジタルデータでは電磁波で消されるとか何か問題が予想されるということだとしたら、遥かに経験豊富な主人公がデジタルしか使っていないのは変だしね。
アメリカ内戦
予告では派手さが目立ったがストーリーはジャーナリスト一行が大統領取材の為に陥落間近のワシントンへ向かうロードムービー。平和な日常中に突然、残酷なシーンが現れる。確たる内戦の発端は描かれず、ロメロのゾンビ映画を思わせる異様な不気味さが漂う怖さ。ウクライナ、ガザ、ミャンマー、様々な紛争地域で起きている戦闘、虐殺、理不尽さをアメリカ内戦に置換え分断され内戦下のアメリカを描くのが主題。ジャーナリストとは何か?を描くのかと思いきや、あれだけ最前線にいたらそりゃ死ぬ!?悲観的にならない潔さ。
アメリカには武装組織や民兵がいて政府が人民の自由や権利を抑圧するなら武器を持ち戦うと普段から備えている人間がかなりいるので、内戦になれば狂信的な人間が率先して一般市民を交戦規定などガン無視し喜び虐殺に加担する。まあ、いざとなれば日本にもいるけど。
思い出した小説
予告からのイメージとはちゃうかった・・。
パンフレットはよくできてる
鑑賞後に友人と内戦のことを描きたいのか、ジェシーのカメラマンとしての成長を描きたいのかよくわからないって議論に。パンフレットを見ていると、表紙の値札が剥がれないし、よくみると縁が緑色だけどTIMEに似てる…となり、ページをめくっていくと最後の方に載っていた白黒の写真がジェシーの撮ったものだけで、リーの撮った写真が1枚も無いことに気づく。つまり、このパンフレットは大統領の死後、映画の中の世界で実際に出版された雑誌で、ジェシーの写真が評価されたということになってるのか?
これが「アメリカの最後」でもいいのか?!
米国で発生した架空の内戦をジャーナリストの視点から描いた問題作。
政治的な主張の違いから深刻な対立が激化する現代のアメリカ。そんな状況に着想を得て本作が作られたことは容易に想像できるが、一方で現実の政治的対立を反映しないよう、慎重な配慮がなされていることにも注目。
そのひとつが設定上のリアリティの欠如。
3期目の任期に突入した合衆国大統領は、FBIを解体した以外にどんな施策を行ったか、作品上まったく示されない。
従って、いかなる理由で19もの州が連邦離脱に至ったのかも、WF(西部勢力)との間で内戦にまで発展したのかも最後まで不明のまま。
そんな中、唯一具体的といっていいのが、WFを構成しているのがテキサスとカリフォルニアの二州だという点。
政治的に保守的な地盤のテキサス州と、リベラルな政治風土のカリフォルニア州が連合して政府に反旗を翻すことなど有り得ないのは、合衆国憲法で大統領の任期が二期までに制限されていることと同じく、アメリカ人にとって常識。
当然、これらの非現実的な設定が恣意的なものであることも明白。
さらなる対立を煽るような政治的題材を引用して、公開後に暴動を誘発することを危惧しているからで、それが杞憂ですまされない可能性があることは、2020年に起きた連邦議会占拠事件が証明している。
NYでの暴動を取材後、メディアに沈黙を続ける大統領から独占インタビューを取るべくワシントンDC入りを計画するベテランジャーナリスト3人。
その中のひとり女性カメラマンのリーに憧れ、フォト・ジャーナリストを志す若いジェシーがさらに加わった一行は自動車で首都を目指す。
作品は一貫してジャーナリストの主観で綴られ、民間人の犠牲を声高に非難したり、兵士との心の交流などの戦争映画にありがちな、お涙頂戴の場面や感動的な演出を排除することで、製作者が観る側にも画面から目を背けず中立な立場で鑑賞するよう求めていることが伝わってくる。
戦争がなぜいけないのか─。
殺人の肯定もだが、戦争が人間を簡単に狂わせるからだと自分は思う。
一行は首都までの道中、幾度も戦闘に遭遇し、戦争の狂気を目の当たりにする。
拷問した捕虜との記念撮影をリーらに求める若い兵士、相手が誰かも分からぬままライフルを乱射する狙撃兵、ホワイトハウスで交渉中の報道官を文字通りの問答無用で射殺するWFの突撃兵。
そして、極めつけは顔見知りのジャーナリストと合流後の一行を待ち受ける所属不明の武装グループ。
一行に「どんな種類のアメリカ人なんだ」と訊問し、異質と判断すれば即座に射殺する彼らの正体は明確には示されないが、おそらくは内戦に便乗して人間狩りを繰り返す差別的な自警団。
これらのエピソードは戦時下での実際の出来事をモチーフに「再現」され、非現実的な設定とは裏腹に、リアルな戦争の狂気と恐怖を観る者に突きつける。
ジェシーを演じたのは、『エイリアン・ロムルス』でヒロインの少女を熱演したケイリー・スピーニー。
撮影時の実年齢が25歳で設定上は23歳だが、メンバー中とりわけ若い彼女の見た目の印象はもっと若く10代にもみえる。
自警団に捕らわれて自らも殺されそうになった挙げ句、合流した報道仲間と一行の知恵袋的存在だったサミーの命を奪われ、激しく動揺したジェシーはその後の行動に変化が生じる。
それまでは若さゆえか、拙さや戸惑いが目立ったが、首都制圧を目指す現地のWFに合流後、飛び交う銃弾をものともせず、率先して被写体にカメラを向ける。
つらい経験を越えて報道カメラマンとしてひと皮剥けた姿にもみえる一方、自暴自棄にも映る彼女の行動をリーたちは心配する。
クライマックスの首都攻防戦のシーンは圧巻の一言。
火力にものを言わせ、殲滅作戦で政府軍を圧倒していくWFは脱出を図る大統領の車列にも、容赦なく砲弾を浴びせる。
そんな中、リーは長年の経験から大統領がホワイトハウスにとどまっていると判断、ジョエルやジェシーとともに邸内へ進入し、WFの突撃兵も追随する。
数度の銃撃戦ののち、突撃隊はついに大統領執務室に肉薄し、世紀の一瞬を逃すまいとジェシーは不用意にも一歩前へ。シークレットサービスの照準に捉えられた彼女の命を救ったのは、みずから盾となったリーだった。
自身の憧れで道中の庇護者だった彼女が代わりに銃弾を浴びて斃れるのを目の当たりにしながらも、ジェシーはスクープを優先して執務室へと向かう。
その姿をジャーナリストとしての成長と捉えるべきか、人間性の喪失と感じるべきなのか─。
作品中の大統領をトランプ前大統領に比定する人も多いと思うが、本作の大統領は出番も極めて少なく、ほぼ無個性で名前すら判らぬまま。
最後でジョエルに促されて命乞いするが、WFの兵士に躊躇なく「処刑」される。
このシーンを観て溜飲を下げる人もいれば、やり過ぎと感じる人も多い筈。
だが、内紛や内戦下で敗者が正式な手続きなしで処刑されるケースはルーマニアのチャウシェスクやリビアのカダフィらの例にあるとおり、珍しいことではない。
製作側は鑑賞者の中にこれらの例を想起する人がいることを期待し、同時に「アメリカの最後も同じでいいのか」と問い掛けているのかもしれない。
映画はジェシーが撮影したと思しき、処刑された大統領を取り囲む誇らしげな突撃兵の写真にエンドロールが重なる映像で終了する。
このラストに強い違和感や嫌悪を感じた人は、やはり「戦争はいけない」と分かっているからだと思う。
作品の最後で一人前の戦場カメラマンとして、スクープをものにしたジェシー。
彼女の将来を待ち受けるのは、ピュリッツァー賞などの名誉や富か。
それとも目標だったリーや、26歳で戦地に散ったゲルダ・タローと同じ末路なのか。
そんなことは、世界中で戦争が続く限り誰にも分からない。
圧倒的にシナリオにリアリティーがない
報道について
戦場カメラマンの視点で、近未来かも知れない内戦中のアメリカを描くものですが、今現在の世界の縮図を巡っているようにも感じました。
残酷で緊迫した描写もありますが、音楽やロードムービーのような構成で重くなりすぎずに観やすかったと思います。
多くは語らないものの深い葛藤を抱えた戦場カメラマン・リーのキャラクターも印象的で、キルステン・ダンストの演技も良かったと思います。
カメラマン志望・ジェシーの軽率な行動は、うーん…と感じるところもありましたが、内戦でさえなければよくある若者のノリですし、やはり理不尽な暴力の方が悪いだろうと。
全体的に若者に未来を繋げるという想いも感じます。
ジャーナリストのスクープ合戦への皮肉がありつつも、真実を伝え警鐘を鳴らすという報道の使命に触れているところも印象深いです。
SNSでデマが飛び交う昨今、選挙にも多いに影響があるようですし、正確な真摯な報道が大切だと改めて感じます。
報道についての作品でもあるのかと。
最後のカットは、禍々しい…
こういうのは現実でも見たことがありますが本当に胸クソで、戦争が狂っていると強く思わされます。
アジア人は問答無用
うーん。タイムリーなテーマを扱っているだけに結構期待していたんだけど、ちょっとこれは頂けない。『明日の現実かもしれない』と謳うにはあまりに現実味がない。
ジャーナリストを主人公にするというのは結構攻めてて面白いなと思ったけど、これといった良さは引き出せておらず、正直前半はかなり退屈だった。なんか軽い。全くもって重さを感じないぞ。これが『アメリカ最後の日』だ?嘘でしょ?
ドキュメンタリーチックなのにめちゃくちゃ作り物っぽい。展開も劇画ぽくて緊張感がない。ジャーナリストを主人公にしたことでカメラを使った演出が取り入れられており、シャッター音と共に映される静止画は、動く映像よりも恐怖を感じたし、そこに関してはいいアイデアだなと思えた。ただ、それを加味しても狙ってんのか?わざとなのか?と疑っちゃうほど映画ですよ!作ってますよ!感が強すぎるし、全体的に安っぽくて印象に残るシーンも僅か。CGを多用しているのがすぐ分かる。もっと上手くできないものかね。。。
IMAXでの臨場感は半端じゃなかった。
迫ってくるようなヘリコプターの轟音、耳に鳴り響く銃声音、重くて痛い爆発音。劇場でなければここまで没入することは出来なかった。音に対するこだわりは一級品。
それ故にこんなちんけな脚本になってしまったのがガッカリ。しかも、音はすごいんだけど映像がつまらないから、ホント退屈してしまう。IFを描くにしても、もっと映画らしいワクワクや恐怖が欲しかった。歴代の戦争映画に何も近づけていない。これでは、歴史に名を残せない。あまりに微妙すぎる。
正直何も印象に残らなかったので、自分にしてはかなり短いがこの辺で。書くことが無さすぎる。個人的にはオチに嫌悪感を抱いてしまったから、気持ち的には星3.0以下。ただ、ジャーナリストという設定、そして音響のことを考えれば、この点数が妥当かなと思える。
うーん。期待していただけに、ショックがデカイな。。。社会風刺にも何にもなってないもんな。予告が全てなんだよな。。。
ある意味、オブラートに包んだ情緒的な作品。
予想よりも、かなり情緒的な描きかたではある。やはり、はっきりとは描きにくい題材なのかもしれない。
各州の州知事が出てくるのかと思いきや、そのあたりは説明のみで、大統領のインタビューを敢行しようとするメンバーの置かれる劇的な状況がロードムービー的に描かれていく。
少し物足りない感もあり、期待とは違う印象もある。
何かを意図して作られた可能性もあるのではないかと、勘ぐってしまうほど、大統領選の動向によっては、あり得ない話ではなくなっていると感じる。
民主主義は多数決で物事が決する。その結果を不正な手段や、暗殺や、戦争で変えようとするときが、シビル・ウォーの始まりかもしれない。
いくら嫌いな人間が大統領になったとしても、そこに多数の民意があるのであれば、その事実を受け入れて、平和的な手段で乗りきってほしいと思う。
ないようがないよう
アメリカ最後の日とかアメリカ分断とか
御大層な文言の割にそこはバックボーンでしかなくて
戦場ジャーナリストのお話
なのに戦場カメラマンについての話も薄い
冒頭ガススタと途中のイカれた奴くらいしかイベントもないし
最後もアドレナリン出てたって感じなんだろうけどあれでいいの?
評価は割れると思うけど、私は高評価。
とにかく、映画館では何度も、周囲の人が吃驚しているのを感じられるほどに、怖さを体感できるアミューズメント的な映画ではあったと思う。
そんな風に銃撃シーンを楽しんで見ている人なんて私くらいのものかもしれないけれど、ホラー映画が怖さを楽しむ映画であるように、この映画もその衝撃シーンを楽しむ映画としては最高だったかもしれない。
いや、そこが結局映画館で金払って、観る理由でもあるんですよ。死体がいくら出てこようと、衝撃的な殺戮シーンがいっぱいあろうとも、それらは作り物なのだから。
だから、どれだけ問題作だと言われていても、映画はアミューズメントでないと困る。
その意味で、本作は十分楽しめたので秀作だと思いました。特に、やはり映画館の音響でないと、この映画のアミューズメント性は半減すると思えるほどに、音は凄かったです。多分、音に関してはかなり入念に作られていたと思います。
ただ、ストーリーに難を感じてしまうようなタイプの人だと、この映画は全然面白くないかもしれません。例えば、大統領選の年に公開されていることを意識するような人で、かつ、トランプが好きな人だと、リベラル・民主党のプロパガンダ映画にさえ見えるんじゃないでしょうか? カリフォルニア州とテキサス州の連合軍っていう設定がかなりあざといわけですし。FBIを解体してたり、実際の憲法に合致してない三期目の大統領だなんて、トランプそのものなわけですしね。
しかし、この映画にはストーリーらしいストーリーは特にないのです。いや、作り手のアレックス・ガーランド監督には何か言いたいことはあるのでしょうけれど、そんなの無視して良いと思います。とにかくこの映画は、怖さを存分にアミューズメント感覚で楽しむ映画なのです。
それにしても、あの傑作ドラマ『ブレイキング・バッド』に出演以来売れっ子となった、マット・デイモンをブサイクにしたとよく言われる、ジェシー・プレモンスはサイコパス的な役をさせたら素晴らしい怖さと気持ち悪さを発揮しますね。
秀作です。
追記:そのジェシー・プレモンスと、ジャーナリスト役をやってたキルスティン・ダンストさんは夫婦だそうで。
MJが記者になったバース
主演のキルスティン・ダンストはサム・ライミ版『スパイダーマン』のヒロインMJ役です。
MJは映画では女優になりましたが、コミックやゲームではたくましい記者(報道カメラマン)として危険な現場に潜入したりもしていました。
必然的にこの映画の主人公リーにMJを重ねてしまいますよね。
リーはもうすっかりベテラン。スパイダーマン:ピーター・パーカーとは、恋人→結婚→離婚→パートナー、といった経緯を辿ったのではないかと察します。
彼譲りの使命感から、大統領にインタビューをし報じるための危険なロードムービーが始まります。
スパイダーマンは大混乱のニューヨークで人助けをしなければならないので、今回の旅には同行できませんでした…。
途中で訪れる町では、その都度、ドラマ『ウォーキングデッド』を思い起こさせるようなゾッとする体験をします。そういえばあのドラマでも、ゾンビより人間の方が厄介でした。この映画はゾンビモノじゃないのに、非常にショッキングな場面があります!
しかし僕が密かにこの映画で注視していたのは、
キルスティン・ダンストが、今後作られるでろうライミ版『スパイダーマン4』のヒロインとして続投するに値するか!? という点です!
MJは若い頃はビッチな面があり、ファンからも共感を得づらいキャラクターでした。しかしピーターが心に決めた相手である以上、僕は2人の仲を応援したい。『スパイダーマン4』にも是非キルスティンに続投してほしいんです!
ただ、〇ヒーローを恋人に持ち苦悩するという演技力、〇ヴィランにより危険な目に遭わされるというアクション面、〇そして美貌、MJ役に必要な要素は多く、キルスティンが今でもそれをキープできているかを確かめたかったんです。
そして結果は…
合格でした!
特に、中盤の穏やかな日常を送り続ける『トワイライトゾーン』の異世界のような町の洋服店で、グリーンのドレスを試着し鏡を見る場面、1粒だけ、誰にも気づかれないような涙の雫をこぼすという演技には、脱帽せざるを得ません!
『アメイジング・スパイダーマン』のヒロイン、グウェン役のエマ・ストーンは演技力もかわいさも健在ですが、グウェンのライバルとも言えるMJ役のキルスティン・ダンストもまた、名俳優としての道を歩き続けていたんですね。
内容の重さはもちろんですが、忘れられない映画となりそうです。
プロットは刺激的ですが、合衆国が国内戦争に至った事情が皆目わからず、リアルな戦闘場面が宙に浮いてしまっている問題があります。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、アレックス・ガーランド脚本・監督によるアメリカ合衆国・イギリスの合作映画で「A24」の製作・配給によります。
19の州が合衆国から離脱しテキサス州とカリフォルニア州からなる「西部勢力」と連邦政府による内戦が勃発した近未来の米国を舞台に、ニューヨークから首都ワシントンD.C.へと向かう4人のジャーナリストたちを主人公に圧倒的没入感で描いたアクションスリラー作品です。
米国の分断についてはもはや当たり前のように語られ、大統領選を控え、両陣営が激しく批判し合っているのを見ても、さもありなんという感じですが、そんなふうに麻痺しかかった頭を、本作は激しく覚醒させることでしょう。
タイトル通り、テーマは内戦ですが、比喩ではありません。南北戦争以来ともいえる、米国本土を戦場にした戦争が描かれるのです。
●ストーリー
強権を振りかざす(憲法で禁じられているはずの3期目を務める、FBIを解散させるなど)大統領に反発した19の州が分離独立を表明し、内戦に発展した近未来のアメリカ合衆国。テキサス・カリフォルニアを中心とした「西部勢力(WF)」と、オクラホマ~フロリダにかけて広がる「フロリダ連合」は政府軍を次々と撃退。けれども権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えます。しかし、WFはワシントンD.C.に迫り、首都陥落は時間の問題となっていました。
ベテラン戦場フォトグラファーのリー・スミス(キルスティン・ダンスト)と、ジャーナリストのジョエル(ヴァグネル・モウラ)は、14か月間メディアの取材に応じていない大統領に直撃インタビューを行うべく、2人の師である老記者サミー(スティーヴン・ヘンダーソン)と、リーに憧れる駆け出し写真家ジェシー・カレン(ケイリー・スピーニー)を連れ、ニューヨークを出発します。寸断された州道を迂回し、ピッツバーグ、ウェストバージニア、バージニア州を経由する、およそ1500kmの旅となったのです。
無政府状態となっている郊外を移動する間、一同は様々な光景を目撃します。ガソリンスタンドを守る地元民と、見せしめに晒されている瀕死の略奪者。政府軍の捕虜を処刑する民兵。敵の正体も判らぬままにらみ合いを続ける狙撃兵たち。内戦に不干渉を貫き、監視兵の警護の元で安穏とした生活を求める村。ジェシーは同道する3人から教えを受け、戦場ジャーナリストとして成長していきます。彼女に若き日の自分を重ねるリーもまた、ジェシーの師として振舞うようになるのです。
彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていくのでした。
●解説
映画の舞台は内戦状態の米国。合衆国から離脱した“西部勢力”と政府軍が戦い、反乱軍は首都に迫っていました。戦場カメラマンのリーたち4人は、14カ月も取材を受けていない大統領への単独インタビューの特ダネを狙ってワシントンDCへ向かおうとして車で首都を目指すのです。
観客が与えられる情報はこれだけ。内戦に至る経緯や反乱軍の実態などは、登場人物の会話やニュースの断片から推測するしかありません。そして車で出発してからは、リーたちにも何が待ち受けているか分からないのです。観客は4人と一緒に、戦場を通り抜けることになるのです。
ワシントンDCまでの道筋には、焼け焦げた車が放置され、激しい局地戦にも遭遇します。いかにも不穏な空気が漂う場所もあれば、戦争などないかのように不気味に静まりかえった町もあるのです。そこがどの勢力圏なのか、出会った人物たちの素性や所属など、全く分りません。画面はヒリヒリした緊張感に包まれて、片時も気が抜けないです。
入念な音響効果が、戦場体験を迫真のものに高めている。銃撃音、爆発音、ヘリコプターのローター音などが大音響で響き渡り、平穏な風景が突然銃声に切り裂かれて度肝を抜かれます。そうした恐怖と共に、最前線に到達する高揚感も生々しく伝えてきます。銃撃や爆発に近づくにつれて興奮状態となり、最初は戦場の現実に泣きべそをかいていたジェシーは、前へ前へと突き進むようになっていくのです。
ところで、本作の立脚点は徹底しています。
リーは目の前で起きる凶行に「自分は質問しない。他の人が質問するために記録する」と中立を標ぼうします。同様に本作も米国の分断や正義、ジャーナリズムや戦場の倫理といった問いについて、映画は一切の価値判断をしていません。観客にただ、戦場を体験させるだけなのです。これ以上ないリアリティーで。
●感想
主人公たちが車を走らせる頭上には青空が広がり、美しい田舎の風景は牧歌的ですらある。しかしほんの少し視線を移すと、あちこちで煙が立ちのぼり、戦闘、拷問、処刑などの陰惨な現実が繰り広げられています。その強烈なコントラストと、誰と誰が戦っているのかもわからない戦争の不条理性が戦慄を呼ぶのです。相手が誰かもわからず撃ち合う農場での恐怖。分断の一因でもある「どういうアメリカ人だ?」というセリフの現実性。終盤の銃撃戦を含めジャーナリストの視点で見せることで、暴力の臨場感が駆け抜けます。連邦議会襲撃事件であらわになった無秩序と崩壊への不安が背景にあるのでしょう。さらに、過去に行ってきたアジアや中東での武力衝突のすさまじさも想像できます。
また、観客の視点を担うキャラクターのジェシーは、野心満々だが経験の乏しい駆け出しカメラマンですが、そんなルーキーが血生臭い地獄巡りの果てに、皮肉な形で成長していくドラマも見応えたっぷりでした。
やはりついさっきまで平穏な日常があった場所で、暴力や戦闘が目撃されるシーンは、怖かったです。真に身近に戦争を感じさせてしまうから。
ラストに向かうにつれ、アレックス・ガーフンド監督による本作は、来国の現状を鋭くえぐった傑作と確信し始めました。ところが、ラストの展開を見て呆然としました。これこそリアルという高らかな宣言なのか、それとも全編が政治的な主張にすぎなかったのか。複雑な思いにとらわれ、素直に傑作と認めがたくなったのです。
まず前途してきたように確かにプロットは現状を反映し、なかなか刺激的ですが合衆国が国内戦争に至った事情が皆目わからず、同問題への洞察力が足りないため、リアルな戦闘場面が宙に浮いてしまっている問題があります。
やはりどうして内戦に至ったのかという経過と背景を描くべきでした。
説明を省いて、恐怖を煽る手法は、黒沢清監督の映画『Cloud クラウド』と一緒でしょう。確かに説明しない方が、よく分からない恐怖感はアピールできます。しかしそれでは現実味に欠けてしまうのです。
次ぎに、とにかくホワイトハウスに侵攻する西部勢力は、大統領を撃ち殺せば、なんとかなるといった発想の一点張り。立ち向かってくるSPは無条件で銃殺するどころか、大統領専用車で逃走を図る大統領の家族も皆殺しにするのです。もし幼い子供が交じっていたらもかなり惨たらしい映像となっていたことでしょう。そこには一切人間としての感情というものがありません。A24が得意とするゾンビと西部勢力の兵士たちとの差がないのです。つまり本作はゾンビ映画の変形といって過言ではないでしょう。
もし本当にアメリカ国内が内戦状態に突入したら、アメリカ国民は黙っていないはずです。政府軍や反乱軍に対して果敢に反戦を唱え、燎原の火の如く全国に抗議デモが広がっていくことでしょう。それがアメリカという国のお国柄で、本作のように内戦に傍観してしまうなんてあり得ません。
そして極めつきは、核のボタンの存在です。
本作のような独裁者タイプの大統領なら、ホワイトハウスを包囲されそうになったら、あらゆる手で反撃するはずです。その中には核で西部勢力を威嚇するというオプションも含まれます。核のボタンについて全く触れられなかったことも疑問に感じました。
映画館で、戦場の中に放り出されたような感覚で 体感的に戦争が嫌だと...
現実味のある終末
簡単に言えば、「もしアメリカで内戦が起きたら」という想定で描かれた作品ですが、多くの方がそう感じているように、ここには何かの啓示のようなものがあるような気がしてなりません。
「アメリカの内戦」 ≒ 「アメリカの崩壊」という図式ができるのですが、まずこの地球上にある国家で最強とも言える「アメリカの崩壊」なんてことはなかなか考えづらいです。しかし、2017年に誕生して以降、アメリカ国内では様々な形で分断が強調され、2021年の連邦議会襲撃事件を見れば「アメリカの内戦」は決して考えにくい未来ではないのかもと思えてきます。つまりは「アメリカの崩壊」も否定し切れないわけです。
PR映像の中で、本作は「終末を描いた作品」と言っていましたが、正しくその通りだと思います。映画はこれまで数多く終末を描いてきました。それは自然災害であったり、宇宙人の襲来、巨大隕石の衝突、ゾンビの大量発生だったりするわけで、そのどれもがSFであり、まさか現実に起こるとはといった内容。しかし、世界の終末がアメリカの崩壊であったなら。一転、終末が現実味を持って迫ってくるわけです。
ここまで、その企画の素晴らしさを述べましたが、ストーリー上では戦争という極限状況の下での人の変化、成長や狂気をうまく描いており、本当によくできた作品です。
主人公を演じたのはキルスティン・ダンスト。若い頃はその役柄に違和感だらけでしたが、本作でのベテラン感、冷めた視線など、素晴らしくハマっていたのは特筆すべきかと思います。
大々的にCMを打っているので大味な作品だと勝手に思っていましたが、しっかり芯のある映画。これがただの絵空事であることを祈るのみです。
人間の醜さを上手に表現
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