「内戦が勃発した米国。 強権な大統領vs.市民部隊という構図だが、市...」シビル・ウォー アメリカ最後の日 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
内戦が勃発した米国。 強権な大統領vs.市民部隊という構図だが、市...
内戦が勃発した米国。
強権な大統領vs.市民部隊という構図だが、市民部隊側が優勢。
まもなくワシントンD.C.に迫ろうかという勢い。
ベテラン記者のジョエル(ワグネル・モウラ)は、ベテラン女性カメラマンのリー(キルステン・ダンスト)とともに大統領のインタビューを試みる旅に出ることとした。
大統領は14カ月もの間、ビデオメッセージのみで、報道陣の前に一度も姿を見せていない。
危険な取材行には、超ベテラン記者サミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)と、新人カメラマン・ジェシー(ケイリー・スピーニ―)が帯同することになった・・・
といったところからはじまるジャーナリスト活躍篇。
原題の「Civil War」、一般名詞では「内戦」なのだが、頭大文字で書くと米国では南北戦争を意味する(というか、南北戦争は対立構造をわかりやすくするための日本語なのだが)。
なので、今回の内戦は「Civil War II」、略してCWII、第二次米国内戦となりますね。
対立構造を表現するなら「東西戦争」か。
内戦の原因は大統領三選による独裁。
国内の多様化に基づく小集団の小競り合いが続き、結果、三選後に強権発動。
市民への爆撃、で、報道の自由も奪われた。
市民への爆撃を機に、イデオロギーを超えて2州が共闘、民兵を組織し、武装蜂起・・・
という設定を冒頭で簡潔に表現している。
ま、わからなくても、かつての南米のバナナ・リパブリックを想起すればよろしという作劇法。
つまり、イデオロギー的な映画ではなく、あくまでも「ジャーナリスト活躍篇」なのだ。
なので、一時期、頻繁に製作された、他国内戦を舞台にした同種映画を思い出しました(『アンダー・ファイア』『サルバドル 遥かなる日々』)。
道中は、ジャーナリストたちの冒険ロードムービーに舵を切り、プアホワイトたちのナショナリズム(というか不平不満の暴発というか)の挿話を挟んで、最終的には三選大統領を独裁者に仕立てた活劇篇と相成る。
赤サングラスの過激ナショナリストの場以降、序盤から通底していた若いジェシーの成長譚に一気に舵を切り、リーとジェシーの報道及び死への恐怖の心情が入れ替わる。
結果は、ジェシーの通過儀礼的成長譚となるのだが、「独裁者は退治されるべき」を画にしたラストショットは殊更にショッキング。
やや悪趣味で、架空の物語としても後味が悪い。
このラストショットから、映画全体を、実は「悪趣味なブラックジョーク」と捉えることも可能か。
とすれば、観比べるべきは『ウディ・アレンんのバナナ』だったりして・・・
その他、関連作品(文芸)としては、筒井康隆『東海道戦争』、井上ひさし『吉里吉里人』。
ひさびさに、米国映画鑑賞の昂奮を覚えた映画でした。