「アベンジャーズは最後まで登場しなかったけど、続編から?」シビル・ウォー アメリカ最後の日 himmさんの映画レビュー(感想・評価)
アベンジャーズは最後まで登場しなかったけど、続編から?
近未来に起こってもおかしくないシチュエーションの描写。ひょっとすると製作者はAIか?と想像してしまう位に現代アメリカを多角的に立体的に抉り取った手腕は素人にはすごいとしか思えない。兆、京、垓の情報の断片を組み合わせて、起こりうる状況を画像に落とし込むトランスフォーミングも人間業離れしていた。すごかった。
「アベンジャー」を期待して観に行くと外れた感が半端ないかもしれない。レビューもそういった感想があふれていたけど。さすがに現代のアメリカ人でキャプテンアメリカが登場してワルモノをぶっ倒す作品とそうでない作品の差は理解しているんだろう。ちなみにジョンウェインは赤いサングラスつけて出てました。
ニューヨーク、ワシントン、シャトル便で1時間くらいの距離だけど、交通事情を加味して今回はぐるっと遠回り。結果としてエグイくらいあの辺のアメリカ人を描いてしまうところもすごかった。偏見と差別むき出しで銃をぶっぱなし、強奪者には死をもって報いさせるという伝統的な米国流の問題解決法、古くはホロコースト、近くは中東での人命軽視の死体処理等、州兵、私兵、自警団、正式軍(東、西)の使い分けとか、作戦時のヘリコプターの使い方とか、軍の作戦プロトコル等を知り尽くした人が制作人にいたんだろうと感じた。緑地の多さ、芝生の濃さ、湖畔を進む軍事車両等、はなに野宿しているおっさんの奥で軍用トラックが下手へ、ヘリコプターが天へフレームアウトしていく静と動、映像美とも言えるなにげない風景、無機質な戦闘兵器と夜空にくぐもった音で聞こえてくる砲撃、銃声の音、さらには”Go stealers!" のペイント。大いなる力を持った3期目大統領が引き起こした惨劇の様子をドキュメンタリーとして描いたのかと錯覚してしまう。
更に主人公の世代交代、ジャーナリストの宿命である非人格に徹しなければならないプロ意識の発現とトラウマになる心の傷跡、それを新旧の世代交代にかぶせていくシナリオワーク。主人公を虫けらのようにヤッテしまうことで、レンズを通じた意思の継承を見せてしまう小業等、挙げだしたらキリがないほどすごい作品だと思いました。