「またもやA24 アメリカの様々な問題をブチ込んできた怪作」シビル・ウォー アメリカ最後の日 スパチカさんの映画レビュー(感想・評価)
またもやA24 アメリカの様々な問題をブチ込んできた怪作
報道スチルカメラマンを主人公にした作品だけに、カメラや写真の観点から感想を書いてみたい。
まずジェシーが持つカメラは、なぜNikon FE2だったのか?
FE2は1983年に発売されたフィルムカメラ
映画の中では祖父が持っていたカメラとのことだった
ハイエンドではないので写真を趣味とする人などが一般的に買う機種だったはず
1983年当時で考えても、おおよそ報道のプロを目指すような人間が手にするカメラではない。
話はちょっとズレるが、今フィルムカメラは静かなブームになっていて、現代のデジタルカメラのシャープで全てを写してしまう高分解能に対して、気分を写し込むような、あいまいさや鈍いフォーカスなどの雰囲気がレトロ感も相まって人気がある。
映画に戻ると、このNikonFE2というアイテムは、ジェシーのあどけなさやひ弱さ、薄っぺらいTシャツなどと相まって、彼女がその辺りにいる普通の子で、思いつきでしか行動していない危なっかしい無知な女の子であるということを補強している。
映画の中でジェシーがフィルムを自家現像しているシーンが出てくるが、水道もない場所で現像→停止→定着→水洗の工程を行うことはできない。
フィルムなので多くて36枚しか撮影できないが、フィルムを詰め替えるシーンはひとつもない
ホワイトハウスに侵入するシーンでは、兵士の機関銃の弾切れのシーンはやたら出てきたが、ジェシーの弾切れは一度も無かった
ここまで矛盾点が多い中、FE2にしたかった理由とは何なのか?
監督に聞いてみたい
またジェシーが使っているのはモノクロフィルムだった
これについてはアメリカの過去の内戦「南北戦争」を想起させたかったという気もする
この南北戦争との関連も映画の中にはたくさん詰まっていそうで、その観点から読み解くのも面白そうだ
最後に、大統領が射殺されて兵士たちがその前で笑っているモノクロ写真は、よくハンターが獲物を前にポーズしている写真のようだった。
大統領をハントした兵士たち、その写真をハンターのように激写したジェシー。
Shootという英単語が「銃を撃つ」という意味に加え、「写真を撮る」という意味もあるように、快感さえ覚えながら本能のように連射したジェシーと、頂点(絶頂)をすでに迎えたリーとの世代交代がこの銃撃シーンで行われたのは暗喩的な気がする。