「裏テーマは『みんな戦争大好き?』」シビル・ウォー アメリカ最後の日 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
裏テーマは『みんな戦争大好き?』
半年前の米国公開時から期待していてようっっやく観れた!!今年ジョーカーより期待していたと言っても過言でないです。いやあ~自分は期待通りでしたね。
分断されたアメリカ。内戦が発生し、既に政府軍は劣勢な状況に立たされている。そんなアメリカ全土を舞台にした戦争ドンパチ映画かと思いきや、主人公達はジャーナリストでガキとお年寄りも交えてのんびりワシントンDCを目指す、まさかのロードムービー。ここで肩透かしを食らった感は正直否めない。
しかし、あえて安直にマイケル・ベイ的な各地の状況を扇状的に見せるやり方では無く、殆ど見せずに主人公達にスポットを当てて既成事実として当たり前になった状況からスタートさせた方が、アメリカ人的にはよりリアリティを感じたことだと思う。
実際日本の話だとして大阪で反乱が起きました~!!みたいな映像を見せられるよりも既に得体の知れない反政府勢力が結構浸透してますって状況から入った方がリアリティを感じると思うのだ(大阪民スマン笑)。
そうして半分はロードムービー、終盤が期待通りのドンパチという構成になっていて、終盤のアクションは半年待った甲斐が有る圧倒的な迫力と轟音とスピーディーさで最高だった。他の映画の数倍くらいはみんな殺意が強くて、一切の躊躇無しにワシントンの官僚やSP達を殺しまくる。どっちが悪役なのか分からなくなってくるような錯覚に陥るが、本来これが戦争なのだと思い出させられる。
そうして本作は反政府勢力の勝利に終わり、その後は伏せられたまま幕を閉じるのだが、本作の裏テーマとして人の戦いへの欲求があるのではないか?とちょっと深読みしすぎたような持論を述べていきたいと思う(笑)
本作で印象的なのはエイリアンロムルスでも主演を演じて今が旬のケイリー・スピーニー演じるジェシーだが、このジェシーが徐々にジャーナリストとして、いや、戦地を生きる人間として開花していく姿も描かれるのだ。そこには笑顔が常に描写されており、誰かに褒められるでも無く、まさに今銃撃戦が行われている現場で笑顔を浮かべている。そして最後の最後もリーが死んだばかりなのに眼の前の生死に夢中になっている。果たしてそれはジャーナリストとしての魂なのか、それとも人間が本来持つ何かを刺激されて開花してしまった結果なのか?
もう一つ印象的なのは男性ジャーナリストのジョエルが割と好戦的で銃撃戦の現場でも興奮している姿がはっきりと描かれる事だろう。ジャーナリストとしてベテランだからそうなのか、でもそれならリーは対称的に人間らしくこの状況にどこか陰鬱としている姿が描かれる。これは主役としての補正なのか。どちらかと言うとジェシーは友としてはジョエルと仲が良い感じで、ともするとジョエルの好戦的な性格に影響された結果なのか?
そもそもの内戦の理由がぼかされている点、道中で印象的だった「どのアメリカ人だ?」の赤メガネ、最後のホワイトハウス虐殺。これらを踏まえると、裏テーマとして人は殺しが大好きというメッセージが隠されているのではないだろうか。内戦の理由がぼかされている点に関してはそもそもリアルの情勢を考慮してのことだろうが、赤メガネに関しては死体を見るに人種差別的な思想を持っていそうだったし、反政府勢力なのかどうかも分からず仕舞いで判明しているのは明らかに民間人ばかりを殺していた大量殺人鬼だということ。
そういえば序盤のガソリンスタンドで吊るされていた人間も、家に立て籠もっていたスナイパー対決もどっちがどっちなのかよくわからない存在だった。
本作、一見政府軍と反政府軍との戦いを描いた作品のようだが、道中でかなり曖昧な存在が3回も出てくるのだ。そしてそれらの状況に特に絶望する事も無く、むしろ徐々に好き好んでいくような素振りすら見せていくジェシー。
ホテルのシーンでおじいちゃんが言っていた言葉が印象的だ。どちらかが勝利すれば今度はそいつら同士で争うだろう、と。
政府軍と反政府軍の戦いは序章に過ぎない。今はこうした形が有るだけ。本来、人間は戦争が大好きでみんなその麻薬に染まっていくのだ・・・・・
だってそうだろう?
僕達だって終盤のホワイトハウス攻略戦で興奮したじゃないか^
戦争は最高だ
戦争が身近にある風景なのが嫌でしたね、遠くでパンパンと聴こえる銃声。PRESSとか密接に関わろうと考えると、色々無くしたり麻痺していったりするんでしょうね。そして戦争が終わるとPTSDに。