劇場公開日 2025年5月16日

「主人公カロリーネは折れやすい針から折れにくい針になった? ラストで見せた人生初の能動的な選択」ガール・ウィズ・ニードル Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5主人公カロリーネは折れやすい針から折れにくい針になった? ラストで見せた人生初の能動的な選択

2025年5月22日
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鑑賞方法:映画館

第一次世界大戦直後のデンマークを舞台にしたモノクロ作品。モノクロームか、まあたまたまだけど、今年はよく見てるような気がするなと感じたので、私が2025年に映画館で鑑賞したモノクロ作品を挙げてみます。

『敵』1月に鑑賞 吉田大八監督
『TATAMI』3月に鑑賞 ガイ•ナッティブとザーラ•アミール•エブラヒミの共同監督
そして、今回の
『ガール•ウィズ•ニードル』5月に鑑賞 マグヌス•フォン•ホーン監督

と半年間で3本、2ヶ月に1本のペースで観ておりました。あくまでも私ひとりの個人比になりますが、2024年に映画館で観たモノクロが『WALK UP』(ホン•サンス監督)、2023年が『せかいのおきく』(阪本順治監督)の1本ずつだったことを考えると明らかに多いです。まあだからどうしたといったレベルのお話なんですが、私個人の印象ではこれらの作品群(それぞれモノクロにした意図も感じられますし、なかなかの名作揃いといった感じ)の中でも特にモノクロにした必然性、モノクロにした効果、ともにいちばん強く、大きく感じられるのがこの作品『ガール•ウィズ•ニードル』です。撮影における技術的な面が素晴らしいことはもちろんのこと、モノクロームにしたことによってこの作品の物語性、寓話性がかなり高められたと思います。

本作の監督、マグヌス•フォン•ホーンはスウェーデン生まれだそうですが、本作がデンマークで実際にあった事件を基にしてデンマーク語で語られた物語であること、名前に”フォン”が入っていることから、あのデンマーク生まれの鬼才ラース•フォン•トリアー監督が想起されます。実際にフォン•トリアー監督から少なからず影響を受けているそうです。そう言えば、本作のヒロイン カロリーネは過酷な運命に翻弄され続ける点においてフォン•トリアー監督の代表作である『ダンサー•イン•ザ•ダーク』のヒロイン セルマによく似ています。以下、両作品のネタバレを防ぐために少し曖昧な書き方をします。どちらかというと鑑賞者に同情されやすいタイプのセルマのほうがずっと受け身で過酷な運命の波に飲み込まれていったの対し、鑑賞者に同情されにくいタイプのカロリーネはずっと受動的で仕方ないからそうするみたいな行動を繰り返していたのですが、ラストで人生初と言ってもいいほどの能動的な選択をして前を向きます。ただし、それがその後の彼女の幸福に繋がるかどうかは定かではありません。このあたりのところから、単純にハッピー•エンド、バッド•エンドの二分法では割り切れない映画的な興趣が煙のように立ち昇り、それがたなびいて余韻を残す、そんな感じがしました。

いずれにせよ、マグヌス•フォン•ホーン監督はこの作品の完成度からいって近い将来、カンヌのパルムドールを獲るような作品を生み出すかも知れないと思いましたのでチェックを入れておきました。

Freddie3v
ファランドルさんのコメント
2025年5月23日

たしかにこの映画、モノクロならではの良さを感じました。

ファランドル
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