ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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アカデミー賞5冠に期待しすぎたかな
体感として全体の
20%:セクシーシーン
20%:桁違い金持ちの勘違い放蕩息子とその仲間達のバカ騒ぎ
50%:優しすぎるお目付け役の大人達の振り回され珍道中
10%:主人公のアノーラの必死に自分の立場を守ろうとするプライド
って感じで、映画館で笑っちゃう演出が多々あるけど、アカデミー賞を5冠も獲る作品なのかな?予告も観てたけど、ちょっと期待しすぎたなー。
23歳。美人でスタイルもよくて稼ぎ頭のアノーラ。でも不安定で不特定多数の男の前で半裸でセクシーに踊って稼ぐなんて若いうちしかできないし、保険も年金もなにもないまま大人になる不安から、豪邸に住む21歳のかわいい男子に大金払うから専属になって、って言われて無邪気な目でプロポーズされたら「あれ?ほんとに、もしかして、玉の輿…?!いや、やってみせる、確実にモノにしてみせる、じっちゃんの名にかけて!!!」みたいな意気込みとプライドと気迫は、ラスト1分まで続く。
思い立ったが吉日でオモチャみたいにポップに結婚して、有頂天になってる2人が空虚すぎて見ててツラい。
そして放蕩息子の親がアメリカに来るって言った途端、アノーラを残して家出するってwお目付け役も優しすぎるしw ロシアのイメージがなんかよくなった。
息子の結婚をなかったことにしようと奮闘するお母さま、あるあるある。ほんと胸糞悪いわー。
唯一、お目付け役のロシア人イゴールは、最初から優しい目をしてたし行動もずっと優しかった。いい男。
離婚してからのアノーラのフォローも最高。
豪邸から結婚する前の家に帰ってきたアノーラ。
車で送ってくれたイゴールから奪われた結婚指輪を「内緒だよ」と渡されて、私のこと好きなんでしょ?これはお礼なんだから、と言わんばかりに無言で運転席のイゴールに跨って挿入する?も無反応のイゴールに「虚勢は見抜かれてる」と気づき、イゴールを叩くがその腕も掴まれて、
あれ?結局イゴールにだけは弱音を吐けるんじゃない??と判断してやっとアノーラは泣くことができた。
最後の最後でアノーラの硬く自分を守っていたプライドが崩れ、やっと1人の女の子に戻った時、最初のストリップ店や享楽の爆音とは真逆の無音のまましんしんと雪が降る中ワイパーの音でエンディングを迎える、というなんとも切ないラストだった。
あれ?
なんかいい作品だったのかも。
あ、ストリッパー役の女子達のスタイルはすごかった…ポールダンスもできてるから鍛え上げられてるんだけど、なに食べたらああなるんだろ。
これが作品賞かぁ
面白くなくもなかったけど、結構予想通りでしたよね。
アニーは別に愛があったわけではなくて、乗りかけた玉の輿と、ミエ、プライドから引き返せないだけだと思います。ラストは本当にイヴァンと愛し合って幸せな人生を送れたら、、、という夢を見た自分への哀れさと、イゴールへの優しさに対してアニーが出来る代償の払い方だったと思います。ビジネスだけの関係と分かっていたはずなのに、、と。だってイヴァンの良いところって何も描写がなかったしね。
そこそこ面白かったし、役者も良かったのですが、ショーン•ベイカー作品ですから、個人的にもう一歩足りない感じでした。オスカー受賞というのもちょっと驚きです。もう少しアニーの内面や、生い立ちを描いてくれればもっと理解できたのかもしれないなぁ。
貧富差からの幸せの結婚、だがリアルな権力は残酷
身体を売る娼婦のアノーラことアニーはアメリカ旅行のロシアの大富豪の長男との出会いで、たった数週間で旅行先のラスベガスでゴールイン。前半までは順風満帆、だがしかし現実はそう甘くは無かった。
結婚は当然ロシア側の親にも伝わり、その側近であるトロスはアメリカで教会勤めをしながら長男の結婚について破棄するよう親から告げられる。ガードマンの男2人を連れトロスは長男説得に向かうも長男逃亡、アニーは離婚させようとするトロスらに反抗するも逃亡した長男を探しに4人で夜中まで街へ捜索へ。個人的にここのパートが1番面白い。アニーの心情もさることながら、道中レッカーされたり仲間に嘔吐されたりのトロス、ガードマンの2人もアニーとの衝突でくたびれており、狭い車内はカオスで面白すぎる。その後長男を発見するも、ラスベガス婚のため合流した大富豪両親と共にラスベガスへ。向こうの母親は当然のことながらアニーを嫌悪し、最終的に敵対するアニー。
最後にはガードマンの1人イゴールさんの協力のもと、結婚前の日々に帰ってゆくのだった。
このイゴールさんもアニー側についてくれ、無償の愛情で慰めるのは当初お金目当てのアニーにとってどうしようもならない悔しさと虚しさで終わるラストでした。
アニーと呼ばれたいアノーラ、そこに本質があるのかな。
ロシア系大財閥のボンボンに見初められた娼婦・アノーラの、どん底人生一発大逆転の、でも鼻につく金満的シンデレラストーリーな前半と、高みに高まったところから急角度で一気に叩きつけられる後半の落差に、胸が躍ってしまった。アニーごめん。
まー前半のこれでもかの嫌味な描写は、この落差を楽しませるためだよなーと思いつつ、アノーラの強欲で傲慢な振る舞いもあって、そりゃーこちらとしては大財閥の両親の肩を持っちゃいますよ。
でもね。
ラストシーンの「これおばあちゃんのお下がりなんだ」からの流れで一変。この落差は、「単に上がった分だけ下がっての元の場所に収まった」のではなくて、数世代を重ねても「這い上がることができない冷酷な現実」を描いたものなんだな。
そう。あのボンボンの母親への取り入られようとする強引な態度も、厚顔無恥ではなく必死の表れだったわけだ。
不器用だけど心優しいロシア系チンピラの抜け出せていない境遇に、慰め合うが故にアニーの心が折れる様は、救いがなくことごとく切ない。
タイトルなし(ネタバレ)
これで今年のアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたもの全部観ましたがこの映画のイゴール役のユーリ・ボリソフをはじめノミネートされた人全員素晴らしく、もし年度がばらけてたら各人受賞出来るのではと思うほど。
車のワイパー音だけが響くラストシーンからの無音のエンドロールだけで5億点の映画だった。
女性のための女性の作品
[60代男です]
前半は、若い二人がひたすらセックスしては贅沢な暮らしを満喫しているのを見せられるだけ。そのセックスも、愛し合う恋人同士のものではなく、娼婦がお金をもらったお返しとして男を喜ばせるためにやるセックスだ。
この前半は退屈。
中盤、バカ息子が勝手に結婚したことを知った親が激怒し、別れさせようと手先を送り込んでくる。その手先3人が現れたとたん、なんと男は妻を放り出して一人で逃げる。
そこから主人公が手先3人と一緒に、ひたすら男を探しまわるだけなのが後半。
この後半も退屈。
そして終盤、男を見つけ出し、男の両親もやってきてから急に引き込まれて観れた。ここから結末までは面白かった。
この終盤がなければ、正直、僕にはまったく楽しめなかった。
観終わって、一番に感じたのは、これは一貫して女性にストレスを感じさせないという姿勢で作られた作品だということ。
それは女性のための女性の作品だからだ。
気性の荒い主人公の感情だけを追って物語が進み、それに対する敵対者の正体も女性だ。
結婚相手の男すら後半になると姿を消し、その男も、一族の手先たちも、主人公の周囲で主人公を振り回す脇役たちみんな、結局は最後に出てくる母親の意志で動かされている駒にすぎない。
自分の感情で、自分の意思で、自分のために主体性を持って行動しているのは、主人公とこの母親。あとは主人公をイビる同僚もだが、なんにしても全員女性だ。
劇中では男の一族が主人公をこばんでいるかのような印象を与えているが、もし母親が主人公に好意的であったなら、普通にハッピーエンドになる話なのだ。
父親のほうは主人公の言動に気持ち良ささえ感じているふうなシーンさえあった。
そして幼稚な精神で主人公を苦しめるバカ息子も、この母親が生み出した存在なのだ。
つまり本作は、主人公の女性が、別の女性が支配する世界の中で翻弄され、あがき、対決する物語なのだ。
男たちはみな、その敵対している女性が支配する世界の一部でしかない。
考えてみれば、前半でしつこいほど繰り返される二人のセックスも、通常の男主導のラブシーンとは違い、受け取ったお金の対価として受け身の男を喜ばせるために能動的に行う、女性が支配するセックスだった。
うんざりするほど具体的なセックス描写をするのに、レイプはもちろん、女性がいやいや行うセックスは出てこない。
お金のための場合でも、不快さを耐えたりするような演出はカケラもなく、女性たちは楽しんでやっている。
暴力的なお客どころか、女性に屈辱的なこと、不快なことを強要する男も出てこない。
日本で風俗店を舞台にした映画を作ればそういう描写が中心になるのとは正反対だ。
僕は男なので断言はできないが、現実世界だと、いくら男女平等と言っても腕力で勝てない女性は、二人きりの空間で目の前に迫られたりすれば確実に心理的なストレスがあると思う。
本作はそういうものが一切、排除されている。
男の女性への暴力が出てこない。
それが一番表れているのが、中盤の、押しかけてきた手先たちを相手に繰り広げる主人公の乱闘シーンだ。主人公は殴る蹴る噛みつくとやり放題に暴れるが、男の側は押さえつけようとするだけ。ひたすら痛い目をみるのは男のほうだけだ。
いくら傷つけるなと言われていたからと言っても、顔面を足の裏で蹴られて鼻の骨を折られたなら、男はカッとなって相手の顔面を殴り返すだろう。しかし本作では、痛がって情けない顔をするだけだ。
この現実とは違う描写も、女性にはストレスなく映画を楽しめ、現実では味わえない解放感すら感じる部分ではないだろうか。あくまで男の僕の想像だけどね。
主人公は常に、まったく我慢などすることはなく、言いたいことを言い、やりたいことをやり、自由に思うままに行動する。これほど伸び伸びとした女性主人公の作品ってちょっとないかもしれない。
ここがアカデミー会員たちの心に響いたのではないかと思う。
一族の3人の手先の中の一人が主人公を見るまなざしに、観客の目を誘導していく終盤が良かった。
離婚が成立し、主人公が相手親子と最後の別れのとき、その手先の一人が脇から初めて雇い主に意見する。息子は謝るべきじゃないかと。ここが一番の見せ場。僕にとってはね。女性から見れば違うのだろうが。
それに対して息子が反応する前に、母親が絶対に謝らせないと宣言する。バカ息子は母親の所有物にすぎない幼児なのだ。とても一人の男として、自分の選んだ女性と結婚できるような人間ではないという、主人公にとって絶望的な現実を再確認させる。
ラスト、主人公が、自分に好意をよせてくれる男を相手にしない態度だったのもリアルで良かった。たった1日で気分を切り替えられるほど裏切られた主人公の心の傷は小さくないのだ。
二人の間にこの先、進展があるのかどうかは分からない。安易にくっつけて終わらせていたら、主人公の感情にリアルさがなくなっていたところだった。
本作の主人公は、作者の都合で気持ちが操作されているような作り物っぽさがない。
感情がリアルで、本当に生きている生身の人間に見えるのがいい。
役者が演技しているということが意識から消えて本当のことを見ているかのように楽しめた。
追記)
ラストシーンの意味が分からない方のために解説
主人公は心の中はまだ愛した男のことでいっぱいで、他の男など相手にする気持ちになれないが、目の前の男から、金銭的にも重大な恩をもらったので、それまでやってきたように、対価を体で返しはじめる。
行為の最中に男からキスをされそうになる。
結婚前までなら当然、キスなどお金を払ってくれる相手とならいくらでもしていたが、結婚したときから相手は愛する男ひとりだけという気持ちになって過ごしていたため、キスはしたくなかった。
キスを拒んでいるうちに、自分が唯一、愛情を込めたキスをする相手、その愛する男はもういないこと、その男の方には愛などなかったことが頭の中によみがえってきて、たまらずに泣き出した。
おしまい。
ラストシーンの主人公の心情が複雑すぎる
アノーラはとても頭のいい女の子。離婚と婚姻無効の違いも分かるし、法的問題では弁護士を要求する権利があることも知っている。
クズ男のために勝てない争いをする必要もない。1万ドルもらって、自分を好きになってるおじさんを頼った方が効率がいいに決まってる。
こんなことは全部分かった上で、手に入れかけた夢のような金持ちの生活をあきらめきれない、子供でも大人でもない23歳のアノーラが見事に描かれている。
このジャンルの映画を普段観ないので、過去作との比較はできないけど、主人公の心理がシーンごとに移り変わっていく様子が見事に表現されていて、間違いなく名作といえる映画。
ここまで丁寧に描いておいて、ラストシーンは主人公の心情を観客にゆだねているのが印象的で新しい。
ざっと挙げてみると、
①真の愛に出会えた安藤(たぶん違う)
②手に入れかけた夢の生活への未練
③現場の生活に戻ることの苦悩
④新たな相手をつなぎとめる為に、結局セックスに頼るしかない不甲斐なさ
いろいろ考えられるけど、自分の人生経験では最後の主人公の心理が分からないので、星四つ。
シンデレラ
シンデレラが一番好きと話すアノーラ。
派手な結婚を祝うドレスと笑顔。
その後ろには華やかな花火が短い瞬間にも見える。
毛皮を本物かどうかも分からない。
最後に残ったのは心の傷と顔の傷。そして涙。
切ないシンデレラになった。
滅茶苦茶な行動に出るが彼女の前に出てくる
キャラクターは全員、愛おしい。
監督が愛を込めてるのだろう。
Fの言葉が半端無く多かった。
まさかの479回もあるとは笑。
あの赤いスカーフ。
口に巻かれた後は、お洒落なマフラーに。
アノーラがイゴールにかけた毛布も赤。
まるで彼女の生きざまと生きる象徴の赤色。
似てると思ったら、イゴールはコンパートメントNO,6のの方だったのかぁ。
ユーリー・ボリソフ覚えておきます。
タフでクールで破天荒なアノーラ。
彼女の負った傷を寄り添うイゴール。
彼の愚直な男のさりげない優しさは素敵。
降りしきる雪の冷たさと優しさが
入り交じって、やっと泣けて良かったね。
また沈黙のエンドロールが涙をそそる。
良い意味で期待外れ
「期待外れ」と言う言葉が適確かどうかは分かりませんが、正直なところ、鑑賞前の想像を大きく越えてきました。ありていな言い方をすれば「最高に面白い」でした。
予告編、チラシデザイン、宣伝文句から想像していたのは、1人の女の子の華やかなサクセスストーリーを描く「プリティ・ウーマン」ぽい内容かな、と。ただし「シンデレラストーリーのその先の〜」というのが、私自身の貧困な想像力ではとても思い描けませんでした。
実際鑑賞を始めてみると、これは思った通り、普通でない(?)女の子がでてきて、金持ちのアホボンボンと恋仲になり、ボンボンの友達も巻き込んだ「パリピ」な様子が映し出れていきます。
私にはその「パリピ」なシーンがやや冗長に感じられ、途中から少し飽きてきていました。まさか、このままパリピなシーンが延々と続くはずがないよね?何かが起こるよね?何が起こるのか分からないけど…と思っていたら、アホボンが逃げ出した辺りから急にアクセルを全開したかのように、俄然目が離せなくなりました。
怪しげなお目付け役の牧師と、一見コワモテのその2人の部下が絡んでくると更に面白さのスピードが加速します。なぜかと言うと3人のキャラクターが見た目と違いとても魅力的だからです。
牧師なのにマフィアみたいな雰囲気で、言葉の悪さと脅し文句も筋金入り。部下もいかにも何のためらいもなく暴力を振るいそうで、特に若い方(イゴール)が何をしでかすか分からないような不気味な雰囲気を醸し出していました。
わ〜、これは女の子がボコボコにされる陰惨な場面が出てくるのかな?嫌だな、と思いながら観ていたのですが、ボコボコにされるどころか暴れ放題、叫び放題の女の子に3人ともタジタジで、むしろ3人のほうが可哀想に思えてくるぐらい。鼻を折られたり、サイコ呼ばわりされたりそれはもうめちゃくちゃ。それでも、キレることなく女の子に暴力を振るったらだめ、という彼らの出で立ちにしては謎(?)の信念があるようでじっと耐えてる姿、特にイゴール君がとても印象的で気になりました。
実際、女の子ともうひとりの男が言い合ってるシーンでも、なぜかイゴール君にフォーカスが当たっていたりと、何かを匂わすようなシーンはありました。
すると本当にイゴール君がキャラ立ちし始め、おとなしいのかと思っていたら、聞き込みをしたお店を容赦なくバットでぶち壊したり、女の子を常に気遣うような素振りも見せ、本当に途中から彼から目が離せなくなりました。とにかく、彼のアノーラに対する眼差しがとても優しい。
またおばあちゃんの話しを時々したり、もうひとりの仲間のために薬を持ってきたりと、何かしら行動や言動に生真面目さがにじみ出ている。
とにかくいいキャラだなあ、と思ってたら、案の定最後においしいところをもっていってしまいましたね。
彼を絶讃していますが、牧師ももうひとりの仲間も憎めない愛らしいキャラで、アホボン探しの夜間珍道中は笑いっぱなしでした。
アノーラもなかなか強烈で憎めなかったですが、それに勝るとも劣らず、他の人たちもとても魅力的で良かったです。
変な例えですが、ボケとツッコミがバランスよく描かれた何か壮大な「吉本新喜劇」みたいな作品でした。
今回は数少ない女性のフォロワーに見捨てられてしまう男の本音を語るぞ❤️
監督のアカデミー賞の、映画館で映画を見る体験は必要だ!という発言に感銘を受けて、片道二時間半遠征して鑑賞したのすけ。
監督が色んな人に感謝していたけど、セックスワーカーにも感謝をしていて、
公の場で珍しい事言うなぁ?確か、主人公はストリップダンサーなんだから、いわゆるシモの世話はしないだろ?
と、思っていたのだが、あっちのストリップって、間近で見た踊り子を選んで、チョメチョメできるんだぁ?
日本みたいに、パネマジ( 分からない人、ググれ!) で、写真のおにゃのことは、全く別人が出てきて、店員に抗議するも、返金は出来ないと突っぱねられて、何度、枕を濡らした事か。
更に俺が体験したパネマジは、出てきたおにゃのこが、何と小人で( あまりにも、恐ろしい思い出なので割愛)
さて、ストリップダンサーのアノーラだが、客のロシア人のゲスい金持ちの若造に専属契約を持ちかけられて、値段を吊り上げたりする。
金持ちからしたら、一発ごとに料金が掛からなくて( まぁ、お下品!) サブスク感覚、料金定額で、やり放題だか( 酷すぎるので省略)
ここから、しばらくパリピ共の乱痴気騒ぎが展開されて、ウンザリしてくる。
また、こいつらが発情期のハムスターや、ウサギの如く、ヤリまくる。20分くらいヤリまくる。もう、ウンザリしすぎてぐったりしてくる。
おい!監督!あの感動的なスピーチは何だったんだ?
まだ、この時は、只の太客だったのだが、何やかんやあって、その場のノリでラスベガスで結婚をする。
さー、問題はこれからだ。プリティー・ウーマンのリチャード・ギアは自分のチカラで稼いでる金持ちだたが、このロシア人のガキは豪邸に住んではいるものの、名義は父親で、高級車も本人の持ち物ではない。つまり、こいつには何も無い。
そんな、ヒロシに騙されたアノーラは、当然、ロシアの両親に結婚を大反対される。そして、アノーラのなかった事にする為に、父親の手下の番頭さんと、屈強な二人の殺し屋にしか見えない男がやってくるのだが...。
極真空手の故・大山倍達総裁の名言、
アメリカには、バレエダンサーとは、喧嘩はするな!という、ことわざがある!
との発言の通り、自分を取り押さえに来た屈強な男二人と番頭さんをアノーラがジェイソン・ボーンのようになぶり殺しにするのだw
もうね?アノーラが強いったら、もう!圧倒!
ようやく、はげちゃびんの男がアノーラを後ろ手を縛るも怯む事無く、FUCK、FUCK、と言いながら、もう一人のヒゲのオールバックの男の顔面を両足でドロップキックをかます。
おい!監督!面白いじゃないか!?
オールバックの男は、
鼻が折れちゃったー!冷やすモノが無いよー!
と、喚きまくる。あまりにも、痛かったので、冷蔵庫から冷やすモノを探して、冷やして、ようやく落ち着く。
この乱闘シーンは10分くらい続き、全員が、FUCK、FUCKとタランティーノの映画よりも叫びまくる、この乱闘シーンが面白いんだよ?場内のお客さんも大笑いしてました。
ちなみに、ロシア人彼氏は、アノーラを守りもせずに逃走しています。
さてさて、逃げたロシア人彼氏を、番頭さんと、二人組がアノーラを人質にして追うのだが、ここでも喧嘩は終わるわけもなく、ずっとFUCK混じりの口喧嘩が続く。
追跡途中で、オールバックが絶妙なタイミングでゲロを吐く。お子さんがはしゃぎすぎてゲロを吐くみたいに。ここでも、お客さん、大爆笑。突然、ゲロを吐く登場人物は監督のお約束のようだ。
番頭さんは、
ふざけんな?!この車は明日、女房が使うんだ!どうしてくれるんだ!?
と、キレるw この珍道中、とにかく、いつも誰かがキレている。ここでも、客席、大爆笑。何だ?このモンティ・パイソンは?
そして、ようやく彼氏を見つけるのだが、その場所がアノーラが踊っていたあの店という事が分かるのだ。おい、どこまで肉欲まみれなんだ?おまいは?
彼氏を相手したのは、アノーラが結婚したとはしゃいでいた時に、
もって、二週間だね?
と、素敵な予言をした踊り子のダイヤモンド姉さん( 何て、源氏名だ) が、彼氏を見つけるや、速攻でパックンチョしちゃう❤️
激怒プンプン丸のアノーラは、ダイヤモンド姉さんを一発で仕留める。覚悟、完了!!
そして、一向はロシア人両親が待つ空港に辿り着く。待ち構えるは、最大の難関、悪意しかない義理の母。
当然、嫌われまくっているので、暴言のナイフで傷つけられるアノーラ。彼氏は、何も喋らず味方をしてくれない。
結婚したから、財産を半分貰う!
とアノーラは言うが、鼻で笑われる。でも、ここまで人間の尊厳を蔑ろにされたアノーラは反撃に出る。
お母さん、彼が、貴女が嫌いなタイプの女の子ばかり選ぶのは貴女が大嫌いだから、貴女の嫌がる事をするんじゃないですか?
と、人として言っちゃいけない事を言うと、母親は激怒するが、隣にいる旦那はそれを聞いて大爆笑するのだ。何て、恐ろしい光景なんだ...。
はげちゃびんも黙ってはいない。お金持ちの息子に向かって、
貴方は、アノーラに謝るべきだ!
と、その一言でクビになるかもしれないのに、息子に問いかけるのだが、それでも息子は何も言わないのだ...。
お前にとっては、只の風俗嬢だったかもしれないが、まず人間なんだぜ?職業差別すんなよ?っと、思った。
全てを失ったアノーラを自宅まで送るはげちゃびん。車内でアノーラを慰めようとするもとんからりん空回りするのだがー?
ここから、今までの前半ド下ネタ、中盤お笑い喧嘩道場からは想像できない。心暖まる二人の会話が始まるのだ。うん、これはアカデミー賞を取るべき映画だ!
散々、はげちゃびんに迷惑かけたのに、優しい言葉をくれるので感謝の気持ちを込めて、アノーラは自分の身体を差し出す。アノーラは、生い立ちが不幸だったから、他にお礼の仕方を知らないのだ。
その時、はげちゃびんのとった行動は?
その後は、劇場でお楽しみください!ありがとう!浜村淳でした!!
前半がアレなので、普通のカップルにはお勧めしかねます。乱行ばかりやっているカップルwにだけお勧め。
あと、エマニュエルの映画に絶望した人な?シネフィルは絶対に見るべき!面白いぞぉー?!
ばーちゃんのクルマ
助演男優賞にノミネートされていたイゴールが良かった。イゴールにとってばーちゃんのクルマは大切なものであり、アノーラのハプニング的なお礼だったとしても神妙な気持ちだったのではないか。
ラスト数分がものすごい傑作!!
見終わった後、ものすごい余韻がありました。簡単に言えば、バカ息子と勘違い女の物語ですが、ラスト数分にこめられたやり取りが大変素晴らしかったです。
最後、雪がポイントです。イゴール(だったかな?)がアノーラを車で送った際に「トロスには内緒だよ」と、取り上げた指輪をアノーラにあげた時に、もしかしたら娼婦であるアノーラは、初めて人間の愛や温もりを感じたのかもしれません。
アノーラは、御礼にイゴールの膝に乗り抱きつきます。しかし、イゴールは「あなたとはそういった行為はできませんよ」と言わんばかりに拒みます。同時に身分の違いによる冷たさをアノーラは味わうことになり、泣き崩れます。
雪の冷たさと身分の違いによる冷たさがリンクしているのだなあと感じました。
物語のほとんどは、下品な言葉が飛び交う内容ですが、意外と退屈しませんでした。
追記 個人的な感想です。
バッファロー66
最初はバカセックスコメディかと思いましたが、ラストの車のシーンでこの映画が好きになりました。
タイプは違うけど、バッファロー66を見終えた感と似てました。
何の感情移入出来ない時間からの・・・
むしろ嫌いなノリ満載でどうしようかと思いましたが、見て良かったです。
映画館で見て良かったです。
家なら早送りで見て、やっぱりエロバカセックス映画だなーって言ってたと思います。
R18+
紹介文にある通り、ストリップダンサーのアニーことアノーラが
ロシアの金持ちのボンボンと結婚したことから始まるドタバタ劇。
で、なぜこの映画がR18+なのかというとやはり全裸になっての性描写が
刺激的すぎるから。でもこの作品には重要な要素であった。
親の金で遊び放題のイヴァン。当然抱いた女は数知れないだろう。
そんな彼が高額報酬で「契約彼女」になる話を持ち掛けたり挙句には
「結婚しよう」と言い出す。恋愛感情が芽生えるほどの深い付き合い
ではないのに彼女を独占したいとまで思うのは、やっぱり体の相性が
良かったからだろう。
表向きはストリップダンサーでも個室で”裏オプション”をしていた。
劇中で「イヴァンが娼婦と結婚した」「私は娼婦じゃない」という会話が
あるが、肩書は違ってもやることは一緒だった。目的はお金だし。
イヴァンが夢中になるくらい良い女性はつまり「床上手」「名●」
だったに違いない。これを言葉で説明するよりも映像で見せた方が
説得力がある。それであんなにベッドシーンを入れたのだと思う。
マイキー・マディソンはセクシー系に特化した女優ではないが
よくぞ体当たりでこの役を演じたなと思う。スクリーンの彼女は
とても魅力的だった。
米国人と結婚すればグリーンカードが取得できて米国に永住できるから
という思惑がイヴァンにはあったにせよアニーを結婚相手に選んだのは
体が堪らなく魅力的だったからに違いない。
そして親に相談もせずイヴァンが結婚、しかも相手が風俗嬢と知れば
反対して当然だし二人を引き離そうとするのは目に見えていた。
そこからのドタバタは思っていたよりもコメディー要素満載だった。
見た目が屈強な男2人が送り込まれる。片方(イゴール)はどことなく
プーチン大統領っぽい外見(個人の感想)。予告編で見た印象では
2人はもしかしたらロシアンマフィア?と思ったが反社ではないみたい。
で、見た目とは裏腹にちょっと間抜けでアニー相手に苦戦するところが
面白い。
勢いに任せてノリで結婚してしまったとは言え、成人男女が自分の意志で
結婚して法的に認められているのだから撤回しろと言うのは理不尽だ。
アニーが正論をぶつけて真っ向から対立するところが小気味よい。
ところが甘やかされて育ったイヴァンはアニーを置いたまま一人で
逃げ出してしまう。しょうもない奴だ。
この映画の上手いところ。登場人物が、それぞれの成り立ちや属性に
相応しい振舞い方をする。物語自体は現実には起こりそうもない話なのに
彼らの行動には妙に納得できてしまう。
馬●息子は最後まで馬●息子のままだし、大富豪の両親も「やっぱりね」
な感じ。そして結婚を全力で撤回させに来る連中は雇用主の意向に沿う
必要性であのような行動を取った。
アニーの職場の人間関係も「こういう人いるよね」と思える。
アニーことアノーラは、お金のために風俗店で働く女性だが決して馬●では
なくて状況に適応するしたたかさ、ちゃんと自己主張する強さを持っている。
めちゃくちゃお下品な言葉で相手を罵ったりするのは育った環境からか。
途中ちょっと中だるみを感じる時もあったが全編でジェットコースターの
ような疾走感で話が進んで飽きなかった。人物描写もさすがだと思った。
騒動が決着してからのラスト。伏線を小出しに入れてはいたが、そう来たか!
イゴールは必要に迫られてアニーを拘束したり嫌われる行動はあったが
根は良い奴のようだった。
馬●息子との結婚が結局撤回されて良かったしそれなりのお金を受け取って
いたし、意外と誠実な男性と出会えたしで人生捨てたもんじゃないと思った。
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余談
平日の午前中の回。予約した時点では空席がたくさんあったが当日入場すると
約300席の7割近くが埋まっているまあまあの入り。アカデミー賞効果を実感。
両脇が空いていればいいなと思ったが上映時間ぎりぎりに自分の左に若い男性が
着席。紙袋に入ったフライドポテトに味付け用の粉をかけてシャカシャカ。
ポテトの匂いもしてきた。これって売店で売っていたっけ?
同じ列の右側2席ほど離れたところに老カップル。女性は呼吸器系の疾患?
まるでいびきをかいているかのような呼吸音。時々咳もしていた。
何となく気が散った。
終映後の老カップルの会話。「何だか思った通りじゃなかった」
「プリティ・ウーマンと全然違ったね」←何を期待していたの?
比較対象がプリティ・ウーマンとは恐れ入りました。
(追記)プリティ・ウーマンと比べたのはそういう宣伝の仕方をしていた
からだと分かりました。失礼しました。
現代版シンデレラストーリー 愛を知らない姫の心を射止めた真の王子は...
アノーラは愛を知らない。家庭のぬくもりを知らずに育った彼女の周りに集まってくる男たちはみんな彼女の体が目当て。彼女のセクシーダンスに男たちはこぞってお金を払う。
アノーラはまともな教育も受けられず、食べていくための職業はおのずと限られる。それでも彼女は生きていくために真摯に待遇の悪いエロティックダンサーの仕事を日々こなしていた。
そんな彼女に転機が訪れる。店に訪れた上客のロシアの大富豪の息子に見初められるのだ。もちろん二人の間に愛情などというものはない。バカ息子はただのお遊び、アノーラはお金が目当てだった。そんな二人の結婚生活が破綻するのは誰が見ても明らかだった。
前半はうんざりするほど彼らの狂乱っぷりを観客は見せられこの二人が幸せになれるはずがないと誰もが確信する。その通り物語は進んでいくが意外なダークホースが現れる。
イヴァンの両親に雇われているアルメニア系アメリカ人の三人。この中で独特な空気感を漂わせる男イゴールは用心棒としてアノーラたちの前に現れるが、けして冷酷な暴力をふるう男ではなく暴れるアノーラに怪我をさせないよう彼女を慎重に抑え込む。
しかしそんな彼に暴力を振るわれたと言い続けるアノーラ、自分をレイプする気だった、自分に暴力を振るったと言い続ける。しかし、イゴールにはそんな気はなかった。これはアノーラの中に培われた男性観によるものだろう。男はみんな自分の体が目当て、金を出すか暴力をふるうか。彼女の生い立ちがそんな男性観を作り上げたのだろう。
もちろん彼女も彼に向かってアルメニア人が、と罵る。ユダヤ人同様受難の歴史を持つ彼らへの配慮を教育を受けていない彼女は持ち合わせていなかった。彼女もけしていい子ではない。愛を知らない彼女はまだダイヤの原石でしかない。誠実な相手との出会いと摩擦で磨かれることにより彼女はその輝きを手に入れることができるんだろう。その相手はもちろんヘタレのイヴァンではなかった。
中盤は延々とアルメニア人三人組とアノーラによるイヴァン捜索の爆笑珍道中が描かれる。駐禁を食らった車をレッカー車から無理やり引き離したり、聞き込みをする店の無礼な若者に説教たれたり、車内で嘔吐したりと、いったい何を見せられてるんだろうか。現代版プリティウーマンを期待した観客は肩透かしを食らわされる。しかしこの珍道中の合間にもイゴールはアノーラへの気遣い忘れない。そんな彼に相変わらずひどい言葉を浴びせ続けるアノーラ。
すべての決着がつき、アノーラを家に送り届けたイゴールは隠し持っていた結婚指輪を彼女に手渡す。それを受け取った彼女はイゴールに体を与えようとする。
彼女は常にこうしてきた。お金のために見返りとして体を与える。男は自分の体目当てにお金を払う。
しかしイゴールはそれを拒む。彼がしてきたアノーラへの数々の優しい気遣い、それは純粋な思いやりからだった。彼女を憐れんで彼女の力になりたいという純粋な思いからだった。
見返りを求めようとしないそんなイゴールの姿に彼女は戸惑う。見返りを求めない、彼女の体が目当てでない人間がこの世にいることを初めて知り戸惑いそして涙する。
無償の愛を与えようとするイゴールの姿に人間の優しさをはじめて感じ取った彼女はただただ涙するのだった。
不遇な生い立ちにより彼女にかけられた愛を知らないという魔法はイゴールという本当の王子により解きほぐされていくのだろう。
タイトルなし(ネタバレ)
2023年のマイベスト映画が「コンパートメントNo.6」な私はこの映画、もはやすごい早い段階で涙が出てきて、ラストで静かに泣き、パンフレットを涙ぐむしまつでどうやっても泣いてしまう。
アノーラの家(正しくはイヴァンの両親の家)に入ってきたイゴールがコンパートメントメントでリョーハを演じていた彼だと気がついたときから
アノーラを目で追うイゴールを私もつい目で追ってしまう。イゴールはあの奇妙な人探し珍道中の中で状況を理解し、疑問を持ち、静かに考えていた彼がアノーラの救いになる結末にほんとうに泣いてしまった。
最後の夜、自分のことをレイプしない(したいと思わない)男を珍獣を見つけたような驚きでアノーラは見つめている。
そんなやついるのか?というフレッシュな驚きを感じられる環境で彼女が生きてきたことがわかる。
ショーン・ベイカーはセックスワーカーをジャッチしない説教しない、搾取しないとゆう言葉がパンフレットにあるように、フラットで注意深い目線でマイノリティ達を写すことが分かっているから、とんだ乱痴気騒ぎの物語だけど安心して観れるのが彼の映画の好きな所。私は過去作の中でタンジェリンが好きなので原点回帰的なこの作品の作りも大好きだ。
R 18に相応しい
アカデミー賞受賞とお洒落なポスター、彼女を誘って観に行くと引かれてしまうくらいR18に相応しい前半。
いきなり説教を始めるトロス、鼻が折れて吐くほど気分が悪いのに行く先々で女の子を口説いてるガルニク、サイコ野郎ゲス男がだんだんとカッコよく見えてくるイゴール、アルメニア・トリオが憎めない、愛おしくさえ思えてくる中盤。
降り頻る雪、車内に響くエンジン音と断続的なワイパーの音、どんな美しいメロディや歌詞よりも哀しく胸に残るラスト。
アカデミー賞作品賞に相応しいかどうか、賛否はあるだろうが、賞を狙いにいっているような作品じゃないこういった作品が受賞するのは嬉しいサプライズですね。(近年はアカデミーがサプライズ狙いにいってるみたいですが)
どこまでも応援したくなる魅力的なアノーラを演じたマイキー・マディソンは文句なく主演女優賞に相応しい。
HEAD QUARTERSへ行きてぇー!
世界中のアノーラたちに幸あれ
祝!本年度アカデミー賞作品賞受賞!
昨年度のカンヌ国際映画祭でもパルムドール受賞!
カンヌのパルムドールとアカデミー作品賞をW受賞したのは『パラサイト 半地下の家族』以来。
どんだけ敷居の高い作品かと思ったら、これが意外や意外。
身分違いの恋×シンデレラ・ストーリー。
私的にはドタバタ・コメディにも思えた。
だけど勿論、ただのそれだけじゃない。
身分違いの恋×シンデレラ・ストーリーに一捻り。
ドタバタ劇はヒロインのパワフルな姿。
アノーラに喝采!
NYのストリップクラブでダンサーをするロシア系アメリカ人のアノーラ。通称アニー。
生活は貧しく、特に夢も無く、安い賃金の酷い職場で、毎日毎日客の相手。
この社会のピラミッドの底辺。それがある日突然一変するのだから、人生は分からない。
ロシア語を少し話せるので、ロシア人客の相手。
今時な青年。名はイヴァン。
ロシア語で会話したり、その場のノリノリ雰囲気で楽しい一時を過ごす。
この時一回限りの客かと思いきや、気に入られ、彼の自宅へお呼ばれ。
訪ねてみたら…、驚いた!
粗末な我が家なんて言うが、超豪邸。セキュリティも万全、家の中は広く、高価そうな家具、エレベーターも付いている。専属家政婦もいる。
あなた、何者…?
ちょっと濁すような言い方だが、両親はロシアで“凄い人”らしい。ググればすぐ出るほど。
イヴァンは超金持ちの息子。ボンボン、御曹司。
しかしそんなお高い性格じゃなく、人懐っこく、無邪気な子供のよう。アニーにぞっこん。
アニーも超金持ちの息子と昵懇になれて、豪邸で過ごせて悪い気はしない。
以来、何度かお呼ばれ。お酒を飲んで飲んで、ヤッてヤッて、楽しいエッチな時を過ごす。
ある時イヴァンから提案。ただの客じゃなく、専属になって欲しい。つまり、“契約彼女”。
一週間。報酬は1万5000ドル。
双方合意の上でのお遊びの筈だった。
イヴァンはセクシーでキュートでホットな“彼女”を自慢。
友人らを招いたり、外で遊び歩いたり、毎日毎日どんちゃん騒ぎ。
ベガスにもひとっ飛び。美味しいもの食べて、お酒ガブ飲みして、時にはハイになって、勿論ヤッてヤッてヤリまくって…。
クッソ、金がありゃ何でも出来る。羨ま…いい加減にしろよ、こら!
ずっと底辺にいたアニーにとっては、信じられない別世界。そこに、アタシがいる。
やっぱり悪い気はしない。イェーイ、サイコー!
楽しい時はあっという間。一週間なんて秒。
イヴァンはロシアに帰ったら父親の会社で働く事が決まっている。が、どうもイヴァンは両親の事が好きじゃないよう。
ロシアに帰らず、このままアメリカに残りたい。
方法は一つ。アメリカ人と結婚して、アメリカ人になれば…。
例えば、君と。
…えっ? プロポーズ…?
いつもおふざけのイヴァンもこの時は真剣に。
あくまでお金や契約など割り切ってたアニーも、熱い想いがたぎる。
そのままの足でチャペルに赴き、結婚。夫婦に。
君を愛してる。あなたを愛してる。
世界は私たちのもの。世界は私たちを中心に回っている。
合意の上の契約交際が本気となり、結婚。
王道の身分違いの恋×シンデレラ・ストーリーは、エネルギッシュで若さに溢れたラブストーリーに。
ひと昔前の映画だったら、ここでハッピーエンド。
でも、まだ半分も経ってない。
それにたくさんの映画を見てれば、何となくこの後の展開は予想出来る。
一見、ハッピー。が、違う見方をすれば、ハイテンション女の子と金持ちバカ息子が衝動的に結婚しただけ。
ハッピーエンドだけで終わらない。
イヴァンが結婚した。しかも、娼婦と。
噂で持ち切りになる。NYに住むとあるロシア人たちの界隈で。
アルメニア人のトロスは、子供の洗礼式の途中、誰かからの電話に冷や汗。二人の男、ガルニクとイゴールをイヴァンの豪邸に向かわせる。
アニーとイヴァンが真っ昼間からヤッている所に、やって来たガルニクとイゴール。
イヴァンは物凄い剣幕で追い返そうとするが、二人は引き下がろうとしない。
トロスやあなたのご両親から言われてきました。
“両親”という言葉に急に萎縮するイヴァン。
何故彼がそんなに両親にビビるのか。まあ、すぐ予想は付く。
ガルニクとイゴールは雇われ用心棒。トロスはお目付け役。
つまり、“そっち”の世界。
イヴァンの両親はただの超お金持ちではなく、ロシアの裏社会の超大物。ロシアのゴッドファーザーのような、新興財閥の一族だった…!
息子の衝動結婚に猛反対の両親。離婚ではなく、そもそも結婚を無効にする為、こちらにお出でになるという。
その間、トラブルが無いように。トロスもイヴァンの豪邸(正確にはイヴァンの“両親”の豪邸)に向かい、ガルニクとイゴールに釘を刺す。
ところが、イヴァンが隙を付いて逃げ出す。アニーを置いて…。
哀れ置き去りのアニー。ショックに沈むかと思いきや、ギャーギャー喚き、Fワードを吐き散らし、物を投げ付けるわ、逃げ出そうとするわ、大暴れ。
ガルニクとイゴールも負傷するほどたじたじ。力自慢のイゴールがようやく取り押さえる。
トロスがやって来てもまだまだ収まらない。
仕舞いには、「レ~イ~プ~!」と大絶叫。
猿ぐつわで黙らせ、少し冷静になり、トロスと取引。
アニーはイヴァンと会って話したい。この結婚が合法である事、私たちは愛し合っている事、無効になど絶対させない事。
話せばいい。が、イヴァンを探し出したら、即結婚無効手続き。勿論手切れ金は払う。
目的は違えど、逃げたイヴァンを探したいのは双方同じ。
イヴァンを探しに4人で街をあちこち訪ね歩く事に…。
幸せの頂点から、一気に急落。
怪しい男どもと逃げた夫探し。アタシ、何やってんの…?
見てて気の毒なアニー。トロスたちにもちと同情。ボスの命令とは言え、バカ息子に振り回され…。うんざり面倒臭い仕事。
真冬の夜。手掛かりナシ。疲労困憊。イライラも募る。
それでもまだアニーはイヴァンを信じていた。
探し回って、探し回って、遂に意外な場所で見つかった。
イヴァンと出会ったアニーの元勤め先のクラブ。そこで泥酔した状態で、アニーの同僚とやってる最中に…。
イヴァン確保。でも、これで終わりじゃない。寧ろ、ここから。
アニーはイヴァンと話をしようとするが、泥酔状態で埒が明かない。
夜が明けた。たった一夜の出来事なのに、何日も経ったような…。
早速裁判所に赴いて無効にしようとするが、ベガスで結婚したのでベガスで手続きしなければならない。
何処まで面倒掛ける!? イヴァンの両親が来る前までに済ませておきたかったが、間に合わず、イヴァンの両親がお出でに。
母親は開口一番ヒステリック。父親に事情を説明するトロスは低頭しきり。
酔いが醒めてきたイヴァン。面と向かってバカ息子、バカ息子と言われ、さすがのバカ息子も言い返すかと思ったら、根っからのバカ息子だった。
両親の言いなり。両親と会う前の威勢の良さは何処へやら…。
やっと気付いたアニー。気付くのが遅いかもしれないが、彼女は最後の最後まで信じていたのだ。それだけに…。
イヴァンの両親はアニーをアウト・オブ・眼中。殊に母親は話し掛けてようやく顔を合わせたら、あからさまに見下し。アンタや家族や友人皆を破滅させてやるとまで脅し。
イヴァンはイヴァンで、あんなにヤリまくって愛し合ったのに、急に冷めたように…。
イヴァンも、この家族も、最ッ低!
無効手続きにサイン。去り際、クソ最低一族に“餞別”の言葉。
ここにアニーの味方はいない。ただ一人を除いては…。
イヴァンの両親は最低。(父親は最後、母親に言い返したアニーに喝采大笑い)
アニーを置いて逃げ、挙げ句両親の言いなりのイヴァンもクソ男。
そんなクソ男に惚れるアニーも…との意見は少なからずあるが、誰がアニーを責められようか。
ただただ真剣に愛を信じ、真っ直ぐに、幸せを自分で掴み取ろうとしただけ。
生まれや自分の境遇や逆境や偏見にも負けない。めげない。
社会の底辺で生きる人々を描いてきたショーン・ベイカー。その一つの到達点。
開幕からテンポ良く、飽きさせない演出力は確かなもの。
センスやアート性を感じつつ、本作はエンタメ性もあり。
見た事ある監督作は『フロリダ・プロジェクト』くらいだが、ずっとインディーズ・シーンで活躍してきた異才が、カンヌやアカデミーで頂点に。
監督もまた“アニー”のような体現者であろう。
立役者がもう一人。マイキー・マディソン。
突如として現れた新星と言われているが、映画出演はちょいちょいあり。『スクリーム(2022)』は印象に残った。
脇役だった彼女を監督が大抜擢。初の主演や監督の期待に遥かに応えた。
大ハッスル! 笑って、ハイになって、喜んで、楽しんで、喚いて、叫んで、暴れて、パニクって、ショックして、悲しんで、泣いて、全ての感情を。それでいて力強く、ポジティブに。
大胆なヌードや激しい濡れ場も体当たり。(監督とマイキーの双方の合意でインティマシー・コーディネーターは付けなかったという)
セクシー、キュート、作品の源とでも言うべき圧巻圧倒の演技力、存在感。
マイキー・マディソンの魅力、大大大爆発!
それにしても『スクリーム(2022)』からメリッサ・バレラやジェナ・オルテガに続き、また一人飛躍したね。改めて『スクリーム(2022)』見直したいなぁ…。
実はアカデミー主演女優はデミ・ムーアを応援していたが、マイキーも分かる気がする。いずれ『サブスタンス』を見てから自分なりの判定を。
クソバカ息子を演じたマーク・エイデルシュテインもある意味天晴れ。彼のクソバカぶりが無かったらアニーは輝かなかった。
監督の才とマイキーの魅力炸裂だが、MVPが。イゴール役のユラ・ボリソフ。
前半はほとんど無口。でもその分、誰よりも事の成り行きを見つめ、アニーを見守っていた。
言葉は発せずとも、不器用ながらも時々、アニーにスカーフを差し出したり、ペットボトルを渡したり。
彼の眼差しが物語ってる。アニーに同情。彼女の力になってやりたい…。
アニーにどんなに罵られ、侮辱差別的な言葉言われても(アニー、なかなかに言葉が悪い…)、陰ながら寄り添う。
無効手続きの場。ずっと無口だったイゴールが、思わぬ言葉を。
イヴァンはアニーに謝るべき。
よく言った、イゴール!
アニーが帰るまで付き添い。最後の夜、二人で酒やハッパをやりながら、他愛ないお喋り。
アニーの言い方は変わらずキツいが、イゴールも意外と饒舌。笑うとナチュラルなナイスガイ。
アニーは自分の事を“アニー”と呼ばせているが、イゴールは本名の“アノーラ”の方がいいと。
“アノーラ”の名前の意味は…。
カンヌやアカデミーを獲ったからって、お高く身構える事はない。
他愛ない話を捻りを加えて面白おかしく。
何より逞しいアノーラの姿に元気や勇気を貰える。
何か、思ってた以上に面白かった。
カンヌやアカデミーがこういう作品を選ぶとはねぇ…。
『オッペンハイマー』とは大違い。
人によって好みはあるかもしれないけど、近年のカンヌやアカデミーでも割かし間口は広い気がした。
だけど、明るさ楽しさだけじゃない。最後の最後はしんみりさせられた。
アノーラを自宅アパートまで送り届けたイゴール。
預かっていたイヴァンとの結婚指輪を返す。
何の感情に付き動かされたのか、イゴールとSEXを。
二人が惹かれたのは個人的には蛇足感。シンパシーだけに留まって欲しかった。
が、キスを返そうとしたイゴールを、アノーラは叩き返す。
そこに恋愛感情は無く、寄り添ってくれたお礼だったのかもしれない。
それにアノーラは愛に裏切られたばかり。まだ新しい恋もする気は起きない。
途端に泣き出すアノーラ。これまでずっと強気でいたが、急に悔しさが込み上げてきたのか。
言葉無く、ただ抱き締めるイゴール。
アノーラもイゴールも社会の底辺で生きる者。
いつだって彼らや同じ境遇の人々は、金持ちバカ野郎どもの犠牲者。
彼らのリアルな姿、涙、声を聞け。
そして世界中のアノーラたちに幸あれ。
夢は見えるが掴めない
ショーン・ベイカーと言えば、フロリダ・プロジェクトが印象的だ。ディズニー・ワールドのすぐ側のモーテルに住んでいる親子が目の前に見えている夢の国だが、そこへ行く夢さえも叶わず、日々の生活に困窮している社会問題を提起した作品である。
本作も同様のテイストで、ストリッパーをしているアノーラが富豪と結婚し、セリフにもあるディズニー・ワールドに行くという夢を寸前で掴み損なってしまうという共通点がある。
ショーン・ベイカー自身がディズニーに思い入れがあるかは分からないが、低所得者との対比でディズニー・ワールドを出してくる辺りが共感しやすい。
フロリダ・プロジェクトはドキュメンタリータッチで音楽も殆ど掛からず、淡々と進行していく印象だったのに対し、本作はエンターテイメントとしての要素もありとても見やすくなっている。と思ったが音楽自体は店やプレイヤーから流れる曲ぐらいしか無いので環境音としての音楽がなければ、フロリダ・プロジェクト同様に硬派になっていたかもしれない。
逆に音楽すら日常的にない生活がフロリダ・プロジェクトなのかもしれない。
正直、本作が作品賞を取ると考えていた人は少ないのではないだろうか。作品賞=硬派というのがこれまでにあったが、エブリシングが取ってからアカデミーとしてもやはり業界が盛り上がるような作品、つまり万人受けしつつテーマ性のある作品が近年選ばる傾向にあるのだろう。
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