ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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映画は18禁要素が終わってから始まります。
ネタバレタイトルで失礼ですが、それがこの映画の要かと。でも、その18禁要素が大事な舞台背景の説明かと思います。
クラブで働くアニーは条件次第で売春も応じるストリップダンサー、大金持ちの御曹司に気に入られ、セックスドラッグの乱痴気騒ぎ。そしてプロポーズ(と金の条件付き)で迫られ結婚。それが親に知れて大騒ぎ。で、映画はそこから。
そのプロポーズがどこまで本気か。特に明示されていないのだけど、遊び歩いて道楽三昧の道楽息子にまともな夫として家庭を築けるなんて思えない。主役のアニーも判っているのかいないのか。離婚を親の部下から迫られても、法と暴力も振るって強気の抵抗。それはどこまで本気なんだろう。お金目当てか、愛情か、ただ負けたくないだけなのか。すでに道楽息子はトンズラして、その振るまいは男としてそれでいいのか。
その対比なんでしょう。(限定的な例えで申し訳ないけど)DETROIT BECOME HUMANというゲームに登場する二人目の主人公にそっくりな腕っぷしの強い用心棒。その彼の男っぷりが実に格好いい。最初は取り押さえられて腕を縛られたアニーとは険悪な仲だったけど、だからこそ、徐々に距離を詰めていく様がとても良い。すかさず突きつけられたバットを奪う手際、他の親の部下達と比べても物に動じない紳士振り、登場する男たちのなかで唯一、鍛えられた「本物の男」だったからこそ、アニーも惹かれていったのでしょう。
距離を詰めた挙げ句、煙草に火を付けてから回す親密さ。にも関わらず、「男色」などと何の根拠もなく煽って席を立つアニーは、ほら来なさいと誘っているに決まってる。
それでも応じない。それでも紳士振りは変わらない。自分がネコババするなどと考えもせず、隠し取っておいた指輪を譲るあたり、惚れない女などいるものか。そして遂に実力行使、忘れたはずの18禁要素で上に乗るけど、ああ、それでも応じない。アニーは苛立ち、果てはすがりついてすすり泣く。その彼女の想いは何だろう。
単純になびかない彼への苛立ちか。散々、金目当てで道楽息子に振り回され、その母親との勝負にも負かされ、何も自分は「本物」、「真(まこと)」を得られない。ストリッパーとして生きてきた彼女に「これでいいのか」という想いがあったのか。やはり、芸者と同様、立派な紳士に身請けして貰うことを夢見ていたのか。それとも、負けたという想いが悔しかったのか。
映画としての絵作りや個々のドラマも非常に面白い。正直、18禁要素も手抜き無く魅力的だけど、アニーが時折見せるシリアスな顔をとらえるシーンが印象的。道楽息子の捜索中、父親の部下が店内の若者達に説教するシーンは、道楽息子を含めて遊びほうける映画そのものの舞台に対する客観視なのでしょうか。
アニーが用心棒にすがりつくシーンをぶった切るようなエンディング。そして無音の無骨なスタッフ掲示のスライドは、自分で感じた余韻を味わえという監督の配慮なのでしょう。
正直、私は上映時間の都合で選ぶしかなく、飛び込みで鑑賞した映画だったのですが、意外にも当たりを引いたと思ってしまってごめんなさい。何の情報も確認せず、18禁と聞いて、それが釣り要素だけの映画なのかという疑いがあったものですから。
静かに心に響くエンドロール
享楽に興じるだけの映像に食傷気味になってきたところから、中盤はガラッとモードチェンジ!イヴァンを探す4人のドタバタが超楽しい!これ中盤から別物の映画やん(笑
アニーは決して大金持ちになりたかったわけではない。(と思う。たぶん。)
本当に大金が目当てなら、離婚にももっと抵抗しただろうし、イヴァンの母親に啖呵きったように裁判でも起こしたはずだが、それをせずに去った。お高そうなミンク(じゃなかったか)のコートさえも投げつけて。欲しかったのは下記のような普通の幸せだったのではないか。
・心から求婚され、愛する人の妻にになること
・家族の一員として受け入れられること
・自分の尊厳を認めてもらうこと
・線路沿いのアパートのルームシェアから抜け出すこと
娼婦のような呼び方にはしっかり抗議し、
嫌われているとは思いながらもイヴァンの母親に丁寧に挨拶して握手を求める。(なんてアサーティブな姿勢)
「結婚は無効よ」という聞く耳もたないイヴァンの母に法的な根拠と対応を毅然と突きつける。イヴァンの母は非合理な苦しい反論。。
極めつけは「イヴァンはそんな母親が嫌いなのよ。だから母親が嫌がるような私と結婚したのよ。そんなこともわからないの?」と核心を突く捨て台詞を吐いて去る。解っていたのか。。
なんて賢くてかっこいい。
でも体つきは華奢で折れそうな女の子なのだ。
車の中でイゴールにまたがりながら、思わず泣くシーン。やっと泣けた。。
雨の中で車のワイパー音だけが聞こえてくる。そこから無音のエンドロールへ。
至極のエンディング。
アニーがイヴァンの家でガルニクとイゴールとドタバタするシーン。私の愛娘の暴れようとそっくりで笑った。(噛みつくところとか、、、。)
どこか重ね合わせて観ていたからか、幸せになって欲しいと切に願う。
※イゴールが親友に似てて笑った。優しく、格闘技が強い。そしてどこかホモッぽい(笑
※上流階級や金持ちに翻弄される悔しさ。。
※イヴァンがアニーや友人たちと遊び暮らすシーン。不思議と誰も心底楽しそうじゃない。
※ラストシーン。イゴールの上で単に行為をして終わるんじゃなくてホッ。だってそれやったらもう猿よ。笑
※大金持ちのくせに、手切れ金がたった1万ドルかよ。中井くんでもその10倍出したぞ。
※前半・中盤・後半でこうもテイストが変わるのをどう評価するか。五月雨でまとまりがない映画ともいえる。そんな小っちゃなこと気にすんな、エモーショナルに作ったらいいんだよ、ともいえる。ふむ。作品賞は評価分かれるでしょうね。(逆に主演女優賞は文句なしだ)
あの夢物語のアンチテーゼ
ストリップクラブで働く女性アノーラが、若い金持ちボンボンに見初められ、勢いそのままに結婚。序盤は『プリティ・ウーマン』のロマンティックな夢物語を想起させる。
しかし本作は、その期待をバッサリ裏切る方向へ。身勝手な行動が親にバレそうになった瞬間、無責任な夫は、妻を置き去りにしてさっさと一人で逃亡。そこに愛はなく、あるのは金銭と愛欲で結ばれた関係に過ぎなかったことを観ている側は一瞬で感じ取る。
「ここで悟るべきだった」と思う一方で、アノーラはここから暴走ともいえる行動に出る。関係がすでに破綻している危うさを感じつつも、教会で結んだ「真実の愛」の可能性に賭けてしまう。その選択の重さが、彼女を引き返すことのできない感情の深みへと誘っていく。
ラストシーンで印象的なのは、示談金を得たにもかかわらず、彼女が決して晴れやかな表情を見せない点だ。金は手に入り、やり直す手段もある。それでも心は満たされていない。愛を手に入れたと信じてしまった自分自身をどう扱えばいいのか分からないまま、感情の捌け口として、自分に好意の目を向ける別の男と交わろうとして画面は暗転する。
『アノーラ』は現代版『プリティ・ウーマン』ではなく、その幻想を信じた後に残る現実を描いたアンチテーゼ。救いはないが、否定もしない。その曖昧さこそが、観るものにとって評価が分かれる部分だと思う。
淋しいロシア人
そろそろ今年もオスカーの季節。去年の賞取りレースで5部門を獲得した傑作を未見というのはまずいと思って配信を探してみた。
「シンデレラの現代版」っていうキャッチフレーズは、どうよって思って映画館での鑑賞はちゅうちょしてしまっていた。
ロシア出身のストリッパーが偶然店をおとずれたロシアの大金持ちの御曹司と、拙いロシア語での会話がきっかけで親しくなり、「専属」として関わっているうちに、結婚の約束をするまでの一時間はアダルト版の「プリティ・ウーマン」なのだが、話がするっと流れていく。身分差のある男女の間のあるはずの葛藤が全然ないのである。かといってアノーラが御曹司イヴァンを落とそうと策を巡らすわけでもない。あくまでなんとなくである。実際の恋愛も、そんなもんだろうなとも思った。ただまあニューヨークで英語の不自由なロシア人と片言のロシア語しか話せない元ロシア人の会話は、寂しげで印象深かった。なんとなくこれが主題なのか、と勘繰ったが、深掘りされず物語は進行する。
めでたく同棲を始めた二人だが、お屋敷付の結構な身分でさらに自立もしていないから当然、お父さんお母さんの逆鱗に触れて、実家の意を受けた危なそうなオジサンたちに襲撃される。すったもんだの末、お坊ちゃんはパンツ一枚で逃げ出してしまう。フツー二人で道行だろうとツッコんだが、アノーラは怖いオジサンたちとイヴァンを探して全米をうろつくシュールな展開の果てにそもそもイヴァンには何の愛情もなかったという絶望的な結末で2部が終わる。流れていくのではなく、あまり脈絡の感じられないドタバタが続く。このパートは往年のジム・ジャームシュのようなドラマを拒否したようなリアリティがあって結構すごい。ただし無意味にみえるエピソードの羅列の裏では実は本当のドラマが進んでいる。イヴァンが現れないことで、前半の幸福の劣化を示して、反面次のシーンの救いが示唆される。
そして最後のほぼ無言の長い長い端正なラブシーンで終わる。
秀作なのだろう。しかしその秀作のゆえんは混とんの国アメリカで、何者でもなく生きる移民の痛切な寂しさの読み解きにあるのではないかと思う。
が、アカデミー五冠については、会員たちが強い女性という今風のテーマになんとなく入れた結果じゃないかとやや憤慨。結構な人が見ないで投票したのだろうなと邪推してしまう。
ラストシーンの考察
雪の降りしきる車の中、イゴールはアノーラを送り、別れようとする。
ディーゼルエンジンのエンジン音とワイパーの音が雪の中の静けさと、二人だけの空間を演出する。
暴れたアノーラを押さえつけたシーン辺りから、イゴールがアノーラに興味があるのが垣間見える。
アノーラも徐々にイゴールへの嫌悪感が薄れて行くのがわかる。
それでもレイプ魔だなんだとイゴールをけなすのは、最後の方はアノーラもイゴールに惹かれて行く心の裏返しの言葉に見えた。
イゴールがアノーラへパクった指輪を渡したのは、イゴールの気持ちを表し、アノーラも気持ちを感じ取っている。
別れ際にイゴールの上に跨がり、キスをしようとするが、イゴールはそれを拒否する。
イゴールの気持ちを考察するに、好きが故に成り行きでsexする人間じゃない事を顕示しており、誠実さの表れと思える。
アノーラの行為は自らの惨めさを掻き消すためにそうしたようにも見えるが、イゴールへの好意がそうさせたと思える。
アノーラが泣き崩れるのは、自分の惨めさや、どうせこんな女だと自暴自棄になる気持ちが入り混じり、感情が溢れてしまったのだと思う。
緩急入り混じる劇的な展開とマイキー・マディソンの演技
ロシアの名家の御曹司とストリップダンサーの女性が酒とセックス三昧から衝動的にベガスで結婚してしまう怒涛の一週間から一転、今度はこの二人を離婚させるべくこの一族に仕えるおバカ三人組と叫びまくる女性とのやり取りはコントのような可笑しさもあり、最後はプライベートジェットで両親がわざわざロシアからやってきて御曹司を連れ帰り嵐が過ぎ去る緩急入り混じる展開と、喜怒哀楽が劇的に入り混じる女性を演じたマイキー・マディソンの演技が良かったポイント。
ラストシーンのアノーラの行動は…
ラストシーンのアノーラの行動は、優しきイゴールに惹かれたのか、それとも異様な2日間を共にしてくれたことへの彼女なりの感謝だったのか、それとも彼をたぶらかしたかっただけなのか…。イゴールのキスを拒んだ彼女は我に返り、感情が溢れて泣き崩れる。
こんなエロく切ないシーンは見たことがない。
ストリップダンサーから富豪と結婚という夢を見、捨てられそうになってもがき続けた最後の瞬間、自分の失望を受け止めてアノーラは泣くのだ。それをただ受け止めるイゴール。
いいとこ持っていくイゴール。
カンヌ&アカデミーだけど、映画館ではパス。
タイトルホルダーだったにも関わらず、映画館で当時観る気が起きなかった。あらすじだけ読んでも、ある種の悲劇に向かって進むことがわかるだけに、結末が知れたような気がして意図的にパスした。
ほぼ案の定だったけど、ラストのアニーの涙が込み上げるシーンはこれまで観たことのない衝撃さをもって、ストレートで勝気に振る舞ってきたアニーの複雑な感情を表現。このシーンをして、それまでがあると掛け値なしで思えた。
前半の出会いから結婚までが正直長く、観ているこちらがグダッたけど、アルメニア人たちが動き出してから、ようやく話が動き出す。非マフィア的な彼らの設定が効果的で、これまでとテンポが変わり登場人物全員が被害者という共通点がいたく面白かった。
身分違いの恋の話かなー?
現代の辛口シンデレラストーリー?ではないと思いました。
何故なら、アノーラは途中からイヴァンのことを愛してないと気付いたからです。
むしろ意地でも結婚して、世間で言う幸せを手に入れたかっただけのように見えました。
汚い言葉を連発し、虚勢を張っていたアノーラが、最後のシーンではからアニーに戻って泣いるところで、何故か一緒に泣けてきました。
よく頑張ったから、もう次いこう!と言ってあげたい。
アノーラでもアニーでもきっと受け入れてくれる、イゴールが一緒に幸せになれる人なのに。
イヴァンとの諸々の騒動は、イゴールと始まるこれからの日々の、プロローグだったんだと思いたいです。
良い余韻のR18+
Amazon Prime Videoの日本語吹替版を日本語字幕を付けて観ました。ロシア語で話す場面は〈かっこ〉有りで、英語は〈かっこ〉無しです。主役のマイキー・マディソン(吹替:瀧本美織)のキャラクターが魅力的で、その他のキャストとても良かったです。
前半は性描写多めのトキメキのシンデレラストーリーで、後半は(皆が同時に話して煩い)イライラするドタバタ劇(悲劇のような喜劇)なのですが、終わりがとっても良かったです。
感想メモ
ストリップクラブで働くアノーラ、客として来店したロシア人の御曹司イヴァンといい感じになり、契約彼女として1週間過ごした後、ラスベガスで勢いのまま結婚!
結婚した直後、広場?商店街?みたいなところではしゃいでいるシーンは凄くキラキラしていて好き
屋根に花火が映し出されている、偽物の花火が今後の2人を暗示していたようにも思う
そして始まる後半のストーリー
娼婦と結婚なんて認めない!という両親の部下が家に来て結婚を無効化させようとする、イヴァンはあえなく逃亡、アノーラは部下たちと共にイヴァンを探す旅に
あっさりと置いて行かれたアノーラが可哀想なのは勿論のこと、金持ちの家庭問題に振り回される部下たちも可哀想、車の中の4人は権力や金に振り回される人たちとして一種の諦観、虚しさを共有していたように思う
ラストシーン、結婚を無効にして自分の家に帰るアノーラをイゴールが送る
イゴールは権力に唾を吐くアノーラの事を尊敬しているように見える、また一連の騒動に巻き込まれた彼女に同情しているようにも見える
上司に内緒で結婚指輪をくすねてきてアノーラに渡すイゴール
アノーラは無償の優しさを知らない?信じていない?彼の行いに身体でお礼をしようとするが、イゴールのキスを振り払った時、彼女は自身に付き纏っていた買う買われるといった一種のヒエラルキーを脱し、真実の涙を流すのだった
その力強さは煌びやかな店と同様に虚構的で軽く脆い
NYでストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会う。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5千ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したと噂を聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける(公式サイトより)。
この作品の最大の魅力はアノーラの揺らぎにある。
ハリウッド映画ではおなじみコンビニエントなラスベガス婚が大富豪の親にバレ、バカ息子が単独で逃亡した後、アノーラはイヴァンとの対話を求める。そこに客とセックスワーカーという関係性を超えた恋愛感情が芽生えたかというとそうでもなさそうだし、かといって、金銭的な利得の最大化のための行動、例えば、彼女自身も隙を見て逃亡し、別れてやる代わりに10憶用意しろさもなければマスコミに、といった方向に走るわけでもない。彼女を監視する大富豪の取り巻きたちが、それを許さないくらい、屈強で冷徹かというと、そんなこともない(というか、割と無能である)。
エスコート嬢として働くアノーラはフロアでは愛想を振りまき、男性客に媚と疑似恋愛を売る一方で、楽屋では客を腐し、本番を提供しない、あるいはその主導権は自分にあるという一線を保つことで、自分の人生をかなり力強く生きている。が、その力強さは煌びやかな店と同様に虚構的で軽く脆い。
そうした軽い力強さの背景にあるであろう、彼女が片言のロシア語が分かることや、アノーラという名は「明るい」という意味で、その愛称は本人が好んで使うアメリカ的な「アニー」ではなく、ロシア語のおける象徴的な女性名である「アーニャ」であることなどは、意図的に描かれておらず、それゆえ、彼女の行動原理の揺らぎに説得力を持たせている。
イヴァンの口から「アノーラと生涯を共にする」と言わせることは、贅沢三昧の一生よりも彼女にとって価値のある、軽い強さではない、確固たる強さのアイデンティティとなることに漠然と気づいたからこそ、イヴァンとの対話に強硬にこだわった。
だが、聖書にある「量った秤で量られる」ということばさながら、彼女自身が無自覚に採用してきた「軽さ」「虚構」「享楽」という生存戦略を逆に振りかざされ、アノーラ自身が追い込まれていく。ワンショットで撮られたラストでアノーラは、不器用ながら、愛に目覚めたものの、行為としては裏切られたイヴァンや下衆な男性客に提供して、対価を得てきた性サービスと同じであることに気づき、絶句する。エロティシズムと脆さが共存する、もの悲しい名場面である。
リアル「プリティ・ウーマン」現実はそれほど甘くない!
アカデミー作品賞にノミネートされたって事で注目していた本作品。まぁ9割がたエロ目当てなんだけど・・・
残念ながら公開中は予定が合わず、大画面で観ることができなかったので、今回WOWOWを録画して鑑賞したんですが、う〜んどうでしょう。何で、これがノミネートされたんだろう?
娼婦が富豪と恋仲になるっていうと「プリティ・ウーマン」が真っ先に頭に浮かぶんですが、世の中そんなに甘くない?シンデレラストーリーがファンタジーな夢物語だってのをマジマジと実感させてもらった感じです。
【ネタバレ】
最近の映画で、これほど女性のセクシーカットが拝めるってことで、スケベオヤジは大満足です。
冒頭からヤリ放題。若いっていいな〜の連続です。主役の女性、ヌードが綺麗でしたよね。
さて、ストーリーですが、この御曹司が娼婦相手にのめり込んていくところは、結構好きでした。金の使い方が半端ないな〜とは思いながらも、アノーラに対する優しさみたいなものも感じられて、ホンっと「プリティ・ウーマン」のシンデレラストーリーみたいでワクワクしちゃいました。
バックに流れる音楽も良かったです。
ところが、勢いで結婚したあたりから、ほんとに大丈夫か?って不安が押し寄せてきました。そもそも結婚に至った理由が不純でしたよね。
極めつけは、富豪の親から命令された息子のお目付役が出てきたところでガラッと雰囲気が変わります。
逃げた息子を探すところからは、まさにコメディですね。登場人物みんなが普通じゃない。話し方から何から、常軌を逸している。
富豪の息子の印象も一気に変わった気がします。やっぱりただのぼんくら息子だったのかと。
泥酔した息子が見つかって、両親が現れたところで、また何か変わったような・・・
娼婦が富豪と結婚するなんて、夢物語だというリアルを突きつけられます。ハッキリ言って腹立たしさしかなかったです。
両親の見下した態度といい、息子の無責任な言動といい、何だこいつら!って感じ。アノーラが可哀想で、可哀想で・・・
最後まで、何かしっくりきませんでしたね。夢物語なんてありえないってことを突き付けられたようで。
ラストシーンが深い
すごく切ない映画でした。前半、アニーとイヴァンが享楽的な日々を送るシーンの連続には、「いったい何の映画を見せられてるんだろう?」と辟易し始めた頃、突然映画は別方向に走り出します。その切り替えが小気味よく、ここでまず「してやられた」と、思ってしまいます。
やはり秀逸なのはラストシーンでしょう。ズシンときます。あの長ったらしいピンク映画もどきの描写も、ここに持ってくるためのもので、絶対必用なものだったと気づかされます。本当にこのショーン・ベイカーという監督はただ者ではありません。
印象的なのは、ラストシーンに行く前、アニーとイゴールがイヴァンの家で一夜を過ごすところです。アニーに手を焼きながら、だんだん彼女に対して同情的になり、惹かれていくイゴールの無骨な心情がよく描かれています。しかしアニーは、そうしたイゴールの好意を徹底的に拒否します。頑として寄せ付けない、強い意志を感じさせます。この二人のやりとりは、すれ違う人間心理を見事に表現しています。この描写がラストへと繋がっていくのですね。
心に鎧を被ったままのアニーに対し、イゴールは去り際に奪い返した結婚指輪を差し出します。面白いですね、たとえ他人の指輪であっても、男が女に指輪を渡す行為は求愛に他なりません。それに対してアニーの取った行動が泣かせます。彼女は指輪の対価を、かつて男たちにサービスとして行った行為、売り物としてのセックスで支払おうとします。戸惑いながらもアニーのペースに身を委ねてしまうイゴール。当然愛おしさが込み上げてきたイゴールはアニーにキスしようとします。そんなイゴールを拳で撲って拒絶するアニー。ここで観客はアニーが何に対して頑なに拒絶していたのかに、気づかされます。
もしここで彼女がイゴールに心を許せば彼女の半生を、彼女の生き様を、彼女の描く未来さえも、全て否定することになると彼女は恐れたのだと思います。イゴールと繋がりながら、号泣する彼女の心は最後まで孤独でした。
あれほど賑やかだった画面が静寂に包まれ、唐突にエンドロールが流れます。アニーとイゴールがこのあとどうなったか、それは観客一人一人の想像に任されます。絶妙なエンディングです。しばらく立てないほど、余韻の残る映画でした。
イゴ〜〜ル!?…
予想不可能なストーリー。現代のプリティ・ウーマンとはならなかった。前半まではロシアのオルガルヒ?のバカ息子とストリッパーが身分不相応なラブラブ展開、彼の親からの反対にあい、別れ、そして本物の愛に目覚めるような展開とてっきり思っていた。しかし、疾走した彼を探す珍道中が始まり、彼はやはりクズで子供だったことが分かり、結末は…まさかのイゴ〜〜〜ル!!とはならず現実的なラストだった。マイキー・マディソンの脱ぎっぷり、Fワード全開、とにかくエネルギッシュで男前、彼女の魅力が寄与した作品だったが、アカデミー作品賞というのは意外な感じがした。
ラストシーンが頭から離れない
公開時気になっていたもののR18の規制に尻込みして観られなかった本作。
Amazon primeで配信が始まったので早速鑑賞しました。
すごく良かった。
想像していた話とはだいぶ違いました。
ストリップダンサーのアニー(アノーラ)がロシアの御曹司に見初められ、2人は結婚。
身分違いの恋は割とありふれたテーマだし、この物語がどういう方向に向かっていくのかなと思いながら観ましたが…
こうなるんですね…!!
アノーラとイヴァン(御曹司)の間に愛がないのも見ていればわかるし、こんなの上手くいくわけないだろ!と誰もが思う結婚なのだけど、アノーラ自身も恐らくそれはわかっていたと思うけども、懸けてしまう。
幸せになれるのではないかと。
店を辞める時、皆んなから祝福される。アニーやったね!おめでとう!
そんな中犬猿の仲だったダイヤモンドからは「そんな結婚上手くいくわけない!せいぜいもって2週間!」なんて言われてしまう。
きっとアノーラはこう思ったはず。絶対に幸せになってやるんだと。
今まで自分をコケにしてきた人間、誰もが羨むような生活をしてやるんだと。
しかしダイヤモンドの言う通り、結婚生活は呆気なく幕を閉じる。
息子の勝手な行動に怒り心頭のイヴァンの両親がロシアからアメリカにやって来る。それを聞いたイヴァンは妻であるアノーラを置いて1人逃亡。
ここからの展開が実に面白かった。
逃げ出したイヴァンを見つけるべく、イヴァンの両親に雇われた牧師のトロイ、トロイの手下のガルニクと用心棒のイゴール、そしてアノーラの4人でドタバタ珍道中を繰り広げる事になる。
3人が夫婦の住む豪邸に乗り込んできて、アノーラが大暴れしたシーンなんか暴れ方が凄過ぎて笑ってしまったし、ガルニクが突然吐くところなんかも笑えた。
そしてなんと言っても、イゴール。彼が本当にいい。
映画を観て数日経った今でもイゴールのことばかり考えてしまう。私がアノーラだったら速攻で恋に落ちている自信がある。
登場してすぐに、この人は恐らく真面目でいい人なんだろうなと言うのがわかった。
でも不器用だ。
寒そうにしているアノーラに彼女の口を縛ったスカーフを手渡すし、手荒な真似をしてごめんと謝るシーンでは今このタイミングで言う!?みたいな。いい人なんだけど、不器用。
イゴール好きだなぁ、いいなぁと思いながら観てたけど、まさかあんなに重要なキャラクターだとは思わなかった。
イゴールはずっとアノーラの側にいた。
イヴァンがようやく見つかった時も(よりにもよってアニーが勤めていた店でダイヤモンドと一緒にいた。最悪である。)、イヴァンの両親と対峙した時も、ずっとイゴールはアノーラを見ていた。
普通だったら、こんな身分違いの結婚、単なるバーニャの戯れで、そんなのに騙されるアノーラが馬鹿なんだと、そう思うだろう。実際牧師のトロイはそう思っていて、アノーラが身につけていた4カラットの結婚指輪も「お前のものじゃない!」と取り上げたくらいだし。
でも、イゴールは違う。
イヴァンの母にまるで空気のように扱われてもなお、彼女に気に入られようと一生懸命ロシア語を話す惨めなアノーラを、イゴールは馬鹿にしない。
いよいよもうどうにもならないのだと理解したアノーラは、結婚を取り消すための書類にサインをする。
離婚できて良かった!せいせいする!と自分を守る言葉を吐きながら。
そしてイゴールが、今までただ黙って彼女と一家のやりとりを見ていたイゴールが、ここでついに一家に向かって言うのだ。
「彼女に謝った方がいい。」
うわ〜〜〜と声が出た。
それ!そうなんだよ。この一家、誰もアノーラに謝罪をしていない。
息子が迷惑をかけて申し訳ないと、たった一言の謝罪もなく、彼女の言葉と尊厳を無視した親子に、イゴールが!イゴールが言うんですよ!
良すぎる……。
ここからラスト20分は、とても静かでしたね。
明日には出ていかなければいけないイヴァンの家で、アノーラとイゴールは何をするでもなく過ごします。
そしてイゴールが言うのです。
「アノーラが好きだな。アニーよりアノーラの方がいい。」
タイトルの「アノーラ」をイゴールが回収しました。
アニーを演じているアノーラではなく、そのままの彼女がいいと、そう言っているように聞こえました。
アノーラにレ●プ魔だゲイだと挑発されても、イゴールは動じません。
そうして2人の間に何も起こらないまま夜は空けていきます。
雪の降り頻る中、イゴールはアノーラをおばあちゃんの車で送っていきます。
あれ、このまま本当に何も起こらないまま2人は別れちゃうのかな、と思った時、イゴールがアノーラに差し出したのは4カラットの結婚指輪。
イゴールはトロイから指輪を取り返してくれていた。
ここからのアノーラの行動と涙については、色々な感想や考察を見て、そのどれも当てはまっていると思うけども、逆にどれも当てはまってないのではとも思う。
こうだったんでしょ?とアノーラに言ったところで、アンタに私の気持ちが理解できるわけない!とキレられそう。
これまで観てきた2時間の物語と、映画には描かれなかったアノーラのこれまでの人生
その全てがあのラストシーンの涙なんだと思います。
アノーラだって、シンデレラになりたかった。
でも、まだ誰かの胸で泣けているだけマシだと思う。
あの2人のその後を考えずにはいられないけど、何となく一緒にならない気がする。
アノーラがアニーでいる限りは。
アノーラの泣き顔と、彼女を優しく包み込むイゴールの手のひらがずっとずっと頭にこびりついて離れない。
大好きな映画が一本増えました。
名はアノーラがいい
コメディと思うくらい
…笑った~
ロシアの金持ちのバカ息子を信じて
結婚したことがアニーの最大なる災難
アニーと手下の三人が織り成すドタバタ劇
愛されていると思っていたのに
彼にとってアニーは"遊び"の一人だった
…お金が介在する"愛"は本物ではなかった
展開も何となく読めるstoryだけど
ラストは優しい彼がいてホッとした
アノーラの新たな"恋"か"愛"が
はじまりそうな"予感"
誰に於いても臆することなく
主張する魅力的なアノーラに共感する
この作品はテンポもよくキャスト
演出も素晴らしいと思った
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