ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
全150件中、1~20件目を表示
映画は18禁要素が終わってから始まります。
ネタバレタイトルで失礼ですが、それがこの映画の要かと。でも、その18禁要素が大事な舞台背景の説明かと思います。
クラブで働くアニーは条件次第で売春も応じるストリップダンサー、大金持ちの御曹司に気に入られ、セックスドラッグの乱痴気騒ぎ。そしてプロポーズ(と金の条件付き)で迫られ結婚。それが親に知れて大騒ぎ。で、映画はそこから。
そのプロポーズがどこまで本気か。特に明示されていないのだけど、遊び歩いて道楽三昧の道楽息子にまともな夫として家庭を築けるなんて思えない。主役のアニーも判っているのかいないのか。離婚を親の部下から迫られても、法と暴力も振るって強気の抵抗。それはどこまで本気なんだろう。お金目当てか、愛情か、ただ負けたくないだけなのか。すでに道楽息子はトンズラして、その振るまいは男としてそれでいいのか。
その対比なんでしょう。(限定的な例えで申し訳ないけど)DETROIT BECOME HUMANというゲームに登場する二人目の主人公にそっくりな腕っぷしの強い用心棒。その彼の男っぷりが実に格好いい。最初は取り押さえられて腕を縛られたアニーとは険悪な仲だったけど、だからこそ、徐々に距離を詰めていく様がとても良い。すかさず突きつけられたバットを奪う手際、他の親の部下達と比べても物に動じない紳士振り、登場する男たちのなかで唯一、鍛えられた「本物の男」だったからこそ、アニーも惹かれていったのでしょう。
距離を詰めた挙げ句、煙草に火を付けてから回す親密さ。にも関わらず、「男色」などと何の根拠もなく煽って席を立つアニーは、ほら来なさいと誘っているに決まってる。
それでも応じない。それでも紳士振りは変わらない。自分がネコババするなどと考えもせず、隠し取っておいた指輪を譲るあたり、惚れない女などいるものか。そして遂に実力行使、忘れたはずの18禁要素で上に乗るけど、ああ、それでも応じない。アニーは苛立ち、果てはすがりついてすすり泣く。その彼女の想いは何だろう。
単純になびかない彼への苛立ちか。散々、金目当てで道楽息子に振り回され、その母親との勝負にも負かされ、何も自分は「本物」、「真(まこと)」を得られない。ストリッパーとして生きてきた彼女に「これでいいのか」という想いがあったのか。やはり、芸者と同様、立派な紳士に身請けして貰うことを夢見ていたのか。それとも、負けたという想いが悔しかったのか。
映画としての絵作りや個々のドラマも非常に面白い。正直、18禁要素も手抜き無く魅力的だけど、アニーが時折見せるシリアスな顔をとらえるシーンが印象的。道楽息子の捜索中、父親の部下が店内の若者達に説教するシーンは、道楽息子を含めて遊びほうける映画そのものの舞台に対する客観視なのでしょうか。
アニーが用心棒にすがりつくシーンをぶった切るようなエンディング。そして無音の無骨なスタッフ掲示のスライドは、自分で感じた余韻を味わえという監督の配慮なのでしょう。
正直、私は上映時間の都合で選ぶしかなく、飛び込みで鑑賞した映画だったのですが、意外にも当たりを引いたと思ってしまってごめんなさい。何の情報も確認せず、18禁と聞いて、それが釣り要素だけの映画なのかという疑いがあったものですから。
静かに心に響くエンドロール
享楽に興じるだけの映像に食傷気味になってきたところから、中盤はガラッとモードチェンジ!イヴァンを探す4人のドタバタが超楽しい!これ中盤から別物の映画やん(笑
アニーは決して大金持ちになりたかったわけではない。(と思う。たぶん。)
本当に大金が目当てなら、離婚にももっと抵抗しただろうし、イヴァンの母親に啖呵きったように裁判でも起こしたはずだが、それをせずに去った。お高そうなミンク(じゃなかったか)のコートさえも投げつけて。欲しかったのは下記のような普通の幸せだったのではないか。
・心から求婚され、愛する人の妻にになること
・家族の一員として受け入れられること
・自分の尊厳を認めてもらうこと
・線路沿いのアパートのルームシェアから抜け出すこと
娼婦のような呼び方にはしっかり抗議し、
嫌われているとは思いながらもイヴァンの母親に丁寧に挨拶して握手を求める。(なんてアサーティブな姿勢)
「結婚は無効よ」という聞く耳もたないイヴァンの母に法的な根拠と対応を毅然と突きつける。イヴァンの母は非合理な苦しい反論。。
極めつけは「イヴァンはそんな母親が嫌いなのよ。だから母親が嫌がるような私と結婚したのよ。そんなこともわからないの?」と核心を突く捨て台詞を吐いて去る。解っていたのか。。
なんて賢くてかっこいい。
でも体つきは華奢で折れそうな女の子なのだ。
車の中でイゴールにまたがりながら、思わず泣くシーン。やっと泣けた。。
雨の中で車のワイパー音だけが聞こえてくる。そこから無音のエンドロールへ。
至極のエンディング。
アニーがイヴァンの家でガルニクとイゴールとドタバタするシーン。私の愛娘の暴れようとそっくりで笑った。(噛みつくところとか、、、。)
どこか重ね合わせて観ていたからか、幸せになって欲しいと切に願う。
※イゴールが親友に似てて笑った。優しく、格闘技が強い。そしてどこかホモッぽい(笑
※上流階級や金持ちに翻弄される悔しさ。。
※イヴァンがアニーや友人たちと遊び暮らすシーン。不思議と誰も心底楽しそうじゃない。
※ラストシーン。イゴールの上で単に行為をして終わるんじゃなくてホッ。だってそれやったらもう猿よ。笑
※大金持ちのくせに、手切れ金がたった1万ドルかよ。中井くんでもその10倍出したぞ。
※前半・中盤・後半でこうもテイストが変わるのをどう評価するか。五月雨でまとまりがない映画ともいえる。そんな小っちゃなこと気にすんな、エモーショナルに作ったらいいんだよ、ともいえる。ふむ。作品賞は評価分かれるでしょうね。(逆に主演女優賞は文句なしだ)
感想メモ
ストリップクラブで働くアノーラ、客として来店したロシア人の御曹司イヴァンといい感じになり、契約彼女として1週間過ごした後、ラスベガスで勢いのまま結婚!
結婚した直後、広場?商店街?みたいなところではしゃいでいるシーンは凄くキラキラしていて好き
屋根に花火が映し出されている、偽物の花火が今後の2人を暗示していたようにも思う
そして始まる後半のストーリー
娼婦と結婚なんて認めない!という両親の部下が家に来て結婚を無効化させようとする、イヴァンはあえなく逃亡、アノーラは部下たちと共にイヴァンを探す旅に
あっさりと置いて行かれたアノーラが可哀想なのは勿論のこと、金持ちの家庭問題に振り回される部下たちも可哀想、車の中の4人は権力や金に振り回される人たちとして一種の諦観、虚しさを共有していたように思う
ラストシーン、結婚を無効にして自分の家に帰るアノーラをイゴールが送る
イゴールは権力に唾を吐くアノーラの事を尊敬しているように見える、また一連の騒動に巻き込まれた彼女に同情しているようにも見える
上司に内緒で結婚指輪をくすねてきてアノーラに渡すイゴール
アノーラは無償の優しさを知らない?信じていない?彼の行いに身体でお礼をしようとするが、イゴールのキスを振り払った時、彼女は自身に付き纏っていた買う買われるといった一種のヒエラルキーを脱し、真実の涙を流すのだった
その力強さは煌びやかな店と同様に虚構的で軽く脆い
NYでストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会う。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5千ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したと噂を聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける(公式サイトより)。
この作品の最大の魅力はアノーラの揺らぎにある。
ハリウッド映画ではおなじみコンビニエントなラスベガス婚が大富豪の親にバレ、バカ息子が単独で逃亡した後、アノーラはイヴァンとの対話を求める。そこに客とセックスワーカーという関係性を超えた恋愛感情が芽生えたかというとそうでもなさそうだし、かといって、金銭的な利得の最大化のための行動、例えば、彼女自身も隙を見て逃亡し、別れてやる代わりに10憶用意しろさもなければマスコミに、といった方向に走るわけでもない。彼女を監視する大富豪の取り巻きたちが、それを許さないくらい、屈強で冷徹かというと、そんなこともない(というか、割と無能である)。
エスコート嬢として働くアノーラはフロアでは愛想を振りまき、男性客に媚と疑似恋愛を売る一方で、楽屋では客を腐し、本番を提供しない、あるいはその主導権は自分にあるという一線を保つことで、自分の人生をかなり力強く生きている。が、その力強さは煌びやかな店と同様に虚構的で軽く脆い。
そうした軽い力強さの背景にあるであろう、彼女が片言のロシア語が分かることや、アノーラという名は「明るい」という意味で、その愛称は本人が好んで使うアメリカ的な「アニー」ではなく、ロシア語のおける象徴的な女性名である「アーニャ」であることなどは、意図的に描かれておらず、それゆえ、彼女の行動原理の揺らぎに説得力を持たせている。
イヴァンの口から「アノーラと生涯を共にする」と言わせることは、贅沢三昧の一生よりも彼女にとって価値のある、軽い強さではない、確固たる強さのアイデンティティとなることに漠然と気づいたからこそ、イヴァンとの対話に強硬にこだわった。
だが、聖書にある「量った秤で量られる」ということばさながら、彼女自身が無自覚に採用してきた「軽さ」「虚構」「享楽」という生存戦略を逆に振りかざされ、アノーラ自身が追い込まれていく。ワンショットで撮られたラストでアノーラは、不器用ながら、愛に目覚めたものの、行為としては裏切られたイヴァンや下衆な男性客に提供して、対価を得てきた性サービスと同じであることに気づき、絶句する。エロティシズムと脆さが共存する、もの悲しい名場面である。
リアル「プリティ・ウーマン」現実はそれほど甘くない!
アカデミー作品賞にノミネートされたって事で注目していた本作品。まぁ9割がたエロ目当てなんだけど・・・
残念ながら公開中は予定が合わず、大画面で観ることができなかったので、今回WOWOWを録画して鑑賞したんですが、う〜んどうでしょう。何で、これがノミネートされたんだろう?
娼婦が富豪と恋仲になるっていうと「プリティ・ウーマン」が真っ先に頭に浮かぶんですが、世の中そんなに甘くない?シンデレラストーリーがファンタジーな夢物語だってのをマジマジと実感させてもらった感じです。
【ネタバレ】
最近の映画で、これほど女性のセクシーカットが拝めるってことで、スケベオヤジは大満足です。
冒頭からヤリ放題。若いっていいな〜の連続です。主役の女性、ヌードが綺麗でしたよね。
さて、ストーリーですが、この御曹司が娼婦相手にのめり込んていくところは、結構好きでした。金の使い方が半端ないな〜とは思いながらも、アノーラに対する優しさみたいなものも感じられて、ホンっと「プリティ・ウーマン」のシンデレラストーリーみたいでワクワクしちゃいました。
バックに流れる音楽も良かったです。
ところが、勢いで結婚したあたりから、ほんとに大丈夫か?って不安が押し寄せてきました。そもそも結婚に至った理由が不純でしたよね。
極めつけは、富豪の親から命令された息子のお目付役が出てきたところでガラッと雰囲気が変わります。
逃げた息子を探すところからは、まさにコメディですね。登場人物みんなが普通じゃない。話し方から何から、常軌を逸している。
富豪の息子の印象も一気に変わった気がします。やっぱりただのぼんくら息子だったのかと。
泥酔した息子が見つかって、両親が現れたところで、また何か変わったような・・・
娼婦が富豪と結婚するなんて、夢物語だというリアルを突きつけられます。ハッキリ言って腹立たしさしかなかったです。
両親の見下した態度といい、息子の無責任な言動といい、何だこいつら!って感じ。アノーラが可哀想で、可哀想で・・・
最後まで、何かしっくりきませんでしたね。夢物語なんてありえないってことを突き付けられたようで。
ラストシーンが深い
すごく切ない映画でした。前半、アニーとイヴァンが享楽的な日々を送るシーンの連続には、「いったい何の映画を見せられてるんだろう?」と辟易し始めた頃、突然映画は別方向に走り出します。その切り替えが小気味よく、ここでまず「してやられた」と、思ってしまいます。
やはり秀逸なのはラストシーンでしょう。ズシンときます。あの長ったらしいピンク映画もどきの描写も、ここに持ってくるためのもので、絶対必用なものだったと気づかされます。本当にこのショーン・ベイカーという監督はただ者ではありません。
印象的なのは、ラストシーンに行く前、アニーとイゴールがイヴァンの家で一夜を過ごすところです。アニーに手を焼きながら、だんだん彼女に対して同情的になり、惹かれていくイゴールの無骨な心情がよく描かれています。しかしアニーは、そうしたイゴールの好意を徹底的に拒否します。頑として寄せ付けない、強い意志を感じさせます。この二人のやりとりは、すれ違う人間心理を見事に表現しています。この描写がラストへと繋がっていくのですね。
心に鎧を被ったままのアニーに対し、イゴールは去り際に奪い返した結婚指輪を差し出します。面白いですね、たとえ他人の指輪であっても、男が女に指輪を渡す行為は求愛に他なりません。それに対してアニーの取った行動が泣かせます。彼女は指輪の対価を、かつて男たちにサービスとして行った行為、売り物としてのセックスで支払おうとします。戸惑いながらもアニーのペースに身を委ねてしまうイゴール。当然愛おしさが込み上げてきたイゴールはアニーにキスしようとします。そんなイゴールを拳で撲って拒絶するアニー。ここで観客はアニーが何に対して頑なに拒絶していたのかに、気づかされます。
もしここで彼女がイゴールに心を許せば彼女の半生を、彼女の生き様を、彼女の描く未来さえも、全て否定することになると彼女は恐れたのだと思います。イゴールと繋がりながら、号泣する彼女の心は最後まで孤独でした。
あれほど賑やかだった画面が静寂に包まれ、唐突にエンドロールが流れます。アニーとイゴールがこのあとどうなったか、それは観客一人一人の想像に任されます。絶妙なエンディングです。しばらく立てないほど、余韻の残る映画でした。
イゴ〜〜ル!?…
予想不可能なストーリー。現代のプリティ・ウーマンとはならなかった。前半まではロシアのオルガルヒ?のバカ息子とストリッパーが身分不相応なラブラブ展開、彼の親からの反対にあい、別れ、そして本物の愛に目覚めるような展開とてっきり思っていた。しかし、疾走した彼を探す珍道中が始まり、彼はやはりクズで子供だったことが分かり、結末は…まさかのイゴ〜〜〜ル!!とはならず現実的なラストだった。マイキー・マディソンの脱ぎっぷり、Fワード全開、とにかくエネルギッシュで男前、彼女の魅力が寄与した作品だったが、アカデミー作品賞というのは意外な感じがした。
ラストシーンが頭から離れない
公開時気になっていたもののR18の規制に尻込みして観られなかった本作。
Amazon primeで配信が始まったので早速鑑賞しました。
すごく良かった。
想像していた話とはだいぶ違いました。
ストリップダンサーのアニー(アノーラ)がロシアの御曹司に見初められ、2人は結婚。
身分違いの恋は割とありふれたテーマだし、この物語がどういう方向に向かっていくのかなと思いながら観ましたが…
こうなるんですね…!!
アノーラとイヴァン(御曹司)の間に愛がないのも見ていればわかるし、こんなの上手くいくわけないだろ!と誰もが思う結婚なのだけど、アノーラ自身も恐らくそれはわかっていたと思うけども、懸けてしまう。
幸せになれるのではないかと。
店を辞める時、皆んなから祝福される。アニーやったね!おめでとう!
そんな中犬猿の仲だったダイヤモンドからは「そんな結婚上手くいくわけない!せいぜいもって2週間!」なんて言われてしまう。
きっとアノーラはこう思ったはず。絶対に幸せになってやるんだと。
今まで自分をコケにしてきた人間、誰もが羨むような生活をしてやるんだと。
しかしダイヤモンドの言う通り、結婚生活は呆気なく幕を閉じる。
息子の勝手な行動に怒り心頭のイヴァンの両親がロシアからアメリカにやって来る。それを聞いたイヴァンは妻であるアノーラを置いて1人逃亡。
ここからの展開が実に面白かった。
逃げ出したイヴァンを見つけるべく、イヴァンの両親に雇われた牧師のトロイ、トロイの手下のガルニクと用心棒のイゴール、そしてアノーラの4人でドタバタ珍道中を繰り広げる事になる。
3人が夫婦の住む豪邸に乗り込んできて、アノーラが大暴れしたシーンなんか暴れ方が凄過ぎて笑ってしまったし、ガルニクが突然吐くところなんかも笑えた。
そしてなんと言っても、イゴール。彼が本当にいい。
映画を観て数日経った今でもイゴールのことばかり考えてしまう。私がアノーラだったら速攻で恋に落ちている自信がある。
登場してすぐに、この人は恐らく真面目でいい人なんだろうなと言うのがわかった。
でも不器用だ。
寒そうにしているアノーラに彼女の口を縛ったスカーフを手渡すし、手荒な真似をしてごめんと謝るシーンでは今このタイミングで言う!?みたいな。いい人なんだけど、不器用。
イゴール好きだなぁ、いいなぁと思いながら観てたけど、まさかあんなに重要なキャラクターだとは思わなかった。
イゴールはずっとアノーラの側にいた。
イヴァンがようやく見つかった時も(よりにもよってアニーが勤めていた店でダイヤモンドと一緒にいた。最悪である。)、イヴァンの両親と対峙した時も、ずっとイゴールはアノーラを見ていた。
普通だったら、こんな身分違いの結婚、単なるバーニャの戯れで、そんなのに騙されるアノーラが馬鹿なんだと、そう思うだろう。実際牧師のトロイはそう思っていて、アノーラが身につけていた4カラットの結婚指輪も「お前のものじゃない!」と取り上げたくらいだし。
でも、イゴールは違う。
イヴァンの母にまるで空気のように扱われてもなお、彼女に気に入られようと一生懸命ロシア語を話す惨めなアノーラを、イゴールは馬鹿にしない。
いよいよもうどうにもならないのだと理解したアノーラは、結婚を取り消すための書類にサインをする。
離婚できて良かった!せいせいする!と自分を守る言葉を吐きながら。
そしてイゴールが、今までただ黙って彼女と一家のやりとりを見ていたイゴールが、ここでついに一家に向かって言うのだ。
「彼女に謝った方がいい。」
うわ〜〜〜と声が出た。
それ!そうなんだよ。この一家、誰もアノーラに謝罪をしていない。
息子が迷惑をかけて申し訳ないと、たった一言の謝罪もなく、彼女の言葉と尊厳を無視した親子に、イゴールが!イゴールが言うんですよ!
良すぎる……。
ここからラスト20分は、とても静かでしたね。
明日には出ていかなければいけないイヴァンの家で、アノーラとイゴールは何をするでもなく過ごします。
そしてイゴールが言うのです。
「アノーラが好きだな。アニーよりアノーラの方がいい。」
タイトルの「アノーラ」をイゴールが回収しました。
アニーを演じているアノーラではなく、そのままの彼女がいいと、そう言っているように聞こえました。
アノーラにレ●プ魔だゲイだと挑発されても、イゴールは動じません。
そうして2人の間に何も起こらないまま夜は空けていきます。
雪の降り頻る中、イゴールはアノーラをおばあちゃんの車で送っていきます。
あれ、このまま本当に何も起こらないまま2人は別れちゃうのかな、と思った時、イゴールがアノーラに差し出したのは4カラットの結婚指輪。
イゴールはトロイから指輪を取り返してくれていた。
ここからのアノーラの行動と涙については、色々な感想や考察を見て、そのどれも当てはまっていると思うけども、逆にどれも当てはまってないのではとも思う。
こうだったんでしょ?とアノーラに言ったところで、アンタに私の気持ちが理解できるわけない!とキレられそう。
これまで観てきた2時間の物語と、映画には描かれなかったアノーラのこれまでの人生
その全てがあのラストシーンの涙なんだと思います。
アノーラだって、シンデレラになりたかった。
でも、まだ誰かの胸で泣けているだけマシだと思う。
あの2人のその後を考えずにはいられないけど、何となく一緒にならない気がする。
アノーラがアニーでいる限りは。
アノーラの泣き顔と、彼女を優しく包み込むイゴールの手のひらがずっとずっと頭にこびりついて離れない。
大好きな映画が一本増えました。
名はアノーラがいい
コメディと思うくらい
…笑った~
ロシアの金持ちのバカ息子を信じて
結婚したことがアニーの最大なる災難
アニーと手下の三人が織り成すドタバタ劇
愛されていると思っていたのに
彼にとってアニーは"遊び"の一人だった
…お金が介在する"愛"は本物ではなかった
展開も何となく読めるstoryだけど
ラストは優しい彼がいてホッとした
アノーラの新たな"恋"か"愛"が
はじまりそうな"予感"
誰に於いても臆することなく
主張する魅力的なアノーラに共感する
この作品はテンポもよくキャスト
演出も素晴らしいと思った
〇〇がキーパーソン
途中からイゴールがキーパーソンになっていたとは...
イヴァンが脱走したあたりの中盤シーンから、アノーラと一緒の画角に常にイゴールがいるんだけど?と思っていたらやっぱりキーパーソンだったかおぬし🔑👨🦲
イゴール...良い奴すぎない?笑
終始無表情😶の、感情出さない系男子。
それがまた私には逆にインパクトがあり人間味がない感半端なかった、けど、ばり優男(笑)
最後のなに?💍アノーラにこそっと返却するとか痺れたんですけど。カッコ良すぎない?その時も無表情イゴール笑
「イヴァンは謝ったほうがいい」
サラッとナチュラルに無表情で発言するイゴール。かっこいい。
おばあちゃん👵から譲り受けた物を大事にするイゴール。かっこいい。
「助けようか?」とアノーラに言うイゴール。かっこいい。
アノーラが寝に2階へ上がったあともアノーラのベッドに行かないイゴール。かっこいい。
寒そうなアノーラに「首元は温めたほうがいいよ」というイゴール。かっこいい。
飛行機✈️に乗ろうとしないアノーラとイヴァンの母がマウントとりあい口論するシーンでアノーラの方を向き、アノーラの発言を相変わらず無表情で聞くシーン。かっこいい。
この親にしてこの子あり
親はバカ息子と言って息子はバカ親と呼んでいたが...
私からするとバカ親でありバカ息子のバカ親子だと思う。
イヴァンは俗に言う“王子”?
御曹司ってことは王子か。
イヴァンはクズにも程がある🤮
イヴァン役の人、ちゃんとクズ感が出てて引き算の演技が素晴らしかった👏💓
ナチュラルにすごく自然にクズを演じきってらっしゃるのが素晴らしかった👏
面白く観たのですが‥
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが溜まっていたので数行で短く)
結論的には今作の映画『ANORA アノーラ』を面白く観ました。
ただ今作は、アメリカアカデミー賞・作品賞とカンヌ映画祭・パルムドールをダブル受賞していて、期待値が高過ぎたのもあり、残念ながら私的事前の期待値は超えて来なかった印象は持ちました。
理由は、ストリップダンサーの主人公・アノーラ(マイキー・マディソンさん)は、高額の愛人契約を結んだ後にロシア人のイヴァン(マーク・エイデルシュテインさん)と結婚するのですが、その後のイヴァンの両親が差し向けた手下からのイヴァンの失踪や以降の展開が、主人公・アノーラの生活近辺で完結するなど、そのスケールの小ささにあったとは思われました。
ロシア人のイヴァンの両親の振る舞いも、現実のロシアのメタファーにも感じましたが、現実のロシアのプーチン大統領やその周辺で起こって来た何百人にも及ぶ怪死や殺害事件を思えば、現実を超えられておらず、映画としてのインパクトは残念ながらなかったとは思われました。
そう私的思われた要因の一つに、今作が、日本の邦画で良く観るスケール感とストーリー展開に似ている点もあったと思われます。
逆を言えば、このスケール感は欧米の人にとっては新鮮さがあったかもしれず、日本の邦画も今後、評価される可能性が開かれているとも思われました。
ただ、今作ラストの、ロシア人イヴァンの両親の手下の部下・イゴール(ユーリー・ボリソフさん)に指輪を返却された時の、主人公・アノーラの行為と涙は、相手への感謝の気持ちをその行為でしか表せない彼女の現実と自覚を表現していて、このラストの涙の着地だけで今作が優れている事を証明しているとは、一方で僭越ながら思われました。
少し期待しすぎた...
最初の30分ほどはスピード感があって良かったけど、しょうもないドタバタが長い。娼婦がどうこうよりも、金持ちの描き方が典型的。
俳優たちの演技には迫力があるが、本当に面白みがわからなかった。
振り回されて、信じた自分もバカだったってぶん殴りたくなるような話。だから最後のシーンは印象に残る。
純愛になるのかと、少し展開を期待しながら観てしまったが、本当にただのバカ息子だった。
バカとかどうこうより、若いね、って感じ。
理不尽さを描いてるけどそこまで悲観的じゃない
ほろ苦い現実。
よくみるとポスターのガラスはひび割れているんですよね。
前半のシンデレラストーリーから(のっけから行く先不安しかないが)、一転ロードムービー風になる。一見、なんの共通点もなさそうな四人の珍道中になるが、この四人は「誰からも省みられない」立場にあるという共通点があるのではと思いました。
ちっぽけなプライドにひびが穿たれ、そこから痛みがじわじわとくる感覚。
世の中の理不尽さに社会すべてに憤り、アノーラという仮面をつけて、全身全霊で、がつがつとぶち当たりに行く姿に共感した。
アノーラは、職業人としてイゴールに奉仕したけど、イゴールはアニーの心を求めた。
二人に未来があると信じたい。
涙が止まらない
予告と公式のあらすじを見て思い描いていた映画とは、
3つの点で大きく違った。
まずは、全体のつくり。
環境音以外の音楽は、最初から最後まで一切ない。
つまりは、ドキュメンタリー風味。
カメラも手持ち多し。
次に、構成。
第1部から第3部までに勝手に分けちゃうと、
第1部は「アニーのお仕事編」。
その詳細が緻密に描かれる。
「あの行為」の客観的に見た時の滑稽さがわかるほど、
ベタつきなく描かれる。同時に、アニーが(やむなき)「プロやなあ」ということが分かる。
3つめは、ストーリー展開。
第2部で、まさかあんな展開になるとは、
思ってもいなかった。
そしてこの第2部が、
ワタクシには大好物で、
終始クスクス、ワハハと笑いどおし。
ここから先は、
ネタバレ気味。
* * *
「親バレ」後、
お坊ちゃま君がいきなり家出したあとの、
長年子守役をしてきたおっちゃん及び
その手下のボディガード2人対
アニーの「たたかい」(ここはカギ括弧をつけたい)と、
なぜかそのあと呉越同舟で
お坊ちゃま君を探すロードムービーが、
一挙手一投足、台詞のいちいち、
隅から隅まで面白くって。
さらには、
お坊ちゃま君の両親が自家用ジェットで駆けつけた第3部。
母親との闘い(ここはまさしく「闘い」)の推移(と周りの対応)がまた見もので。
そしてそして、
あの彼の台詞と行動、
途中からある程度予想はついたけど、
その予想を超えてきて。
と思いきや、アニーは、
やっぱり「プロ」根性というか職業病が抜けなくて。
ここからは、
完全にラストのネタバレ。
* * *
ラスト、
職業病的対応をして、
相手が「心通じたか」と思って反応しようとしたら
職業的反射的拒絶反応が出ちゃって、
でもほんとのラスト、
それを自覚して。
きっとこれで、アニーの、
フロリダ出身で、ディズニーとシンデレラが憧れだったアニーの、
いや、本人は「アニー呼び」にこだわってたけど
「俺は、アニーよりアノーラの方がいいと思う」
と言われたアノーラの、
心のどこかしらが、
ほどけたに違いない。
今思い出しても、
涙。
そこで、タイトルが出る。
アニー、ではなく、
Anora
と。
さらにさらに、涙涙…
「It's a good name.」
前半は、おままごとの時間。時折息継ぎをする様に宙を見つめるアノーラ。対するイヴァンの目は散漫で何も見たくないと訴えている、目を合わせようとすればサングラスの後ろに逃げ込んでいく。どちらも目の演技がうるさく観ていて少し疲れる。親の描き方、アノーラとイヴァンの抱える葛藤、どちらも古典的。だが、葛藤の現れ方が今の時代を上手く表現しているので、荒唐無稽な設定なのに妙に身近に感じる。
後半、使いっ走りの男三人とアノーラがイヴァンを探し回る。何処かコミカルで虚脱的でアキ・カウリスマキやジム・ジャームッシュを思い起こさせる。
そして終盤、2時間程過ぎた頃から漸く物語が動き出す。最後、イゴールに跨ることで気持ちを表現するアノーラ。その姿はとても切なく悲しい。確かに、人はそんなに簡単に変われないよ。それでも、イゴールが隣に居てくれたら、アノーラの未来は決して暗くはないんじゃないかなと思える。無音のエンドロールを見ながら、残響の様にそんな事を考えていた。
結論、戦士イゴールは偉大なり
生きる女性
喜びも辛さも経験してきた女性を通して描くシビアな現実社会での生き方。
どの世界にもあるだろう詰みそうな人生(盤上)からの起死回生の男と信じて進もうとする姿、そして自分を見失わずもがくことで活路を見出していく女性の生き様が素敵でした。
そしてシリアスかと思いきや、かなり派手なやり取りや笑えるシーンもあり良かった。
キャストの演技は良いが、それ以外は普通
教養のないアニー、甘やかされたボンボンのイヴァン、中間管理職のトロス、ヘタレチンピラのガルニク、寡黙なイゴール、冷酷な母親であるガリーナ等、演じる俳優はそのキャラクターにバッチリハマっている。しかし筋書きは終始ドタバタ劇で視聴者の予想範囲内から外れず意外性がない。演出も特段秀でているわけでもなく、楽しめない映画ではないが期待しすぎると肩透かしを食う。
全150件中、1~20件目を表示











