ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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ここ最近で、最も余韻に浸れた映画
いわゆる「シンデレラストーリー」という枠組みをちょっと捻って活用しながら語られる、主人公アノーラの物語。
圧倒的な貧富の格差、資本主義社会でのマネーパワーの暴力性、アメリカ内でのロシアンコミュニティとロシアとアルメニアの関係性といった大きなものから、セックスワークや非正規雇用の仕事に対する見下しや偏見、労働倫理、世代間の価値観差、親子関係のあり方、セクシャリティの違いや障害に対する蔑み、職場内の人間関係に生じる嫉妬や連帯などの一人一人の内心に関わるような個人的なものまでが、リアルかつニュートラルに描かれているが、説教くささはなく、どちらかといえばコミカルで、観終わった後にほんのり温かな余韻が残る作品。
とにかく、アノーラ役のマイキー・マディソンが魅力的だが、それ以上にユーリー・ボリソフ演じる用心棒のイゴールが渋い!
どうしたら、あのように強くて包容力のある人物に育つのか。
何より、自分はラストシーンが大好き。
ここ最近の映画では、最もエンドロールで余韻に浸れた映画だった。
こうなる事は分かっていたんだけどね〜
アニーは最初から結末が分かってたんだろうね。でも夢見たかった、信じたかった。職場の同僚に2週間もたないって言われたのも本心つかれてキレた。どん底の生活から抜け出したいとは思っていたのだろうけど、どうしていいか分からない。たまたま巡ってきた宝クジのような話。経験した事がない生活。あの煌びやかな生活の場面のなかで女性の清掃員の生活が映る。あれはこの前までのアノーラなんだ。でも見ないようにしている。自分はアニーだから。途中のコントみたいなロードムービーも中々で、奥さんに頭の上がらない父親が、バカ息子と奥さんにボロクソ言ってるアニーに対して大爆笑しててウケました。最後のシーンは圧巻です。ワイパー音と車に降る雪。アノーラのことを唯一認めてくれていた無口な要人に素直になれない自分。情婦としてそれしか出来なかった自分に今まで積もりに積もった感情が溢れ出す。エンドロールも最高!
車のワイパー
忙しなく争う怒涛の展開が痛々しくて滑稽で笑える要素がてんこ盛り、監督の『タンジェリン』を思い出したりするそんな演出はショーン・ベイカーの得意技と言って良い場面かな?と。
イチャイチャとエロがゴチャ混ぜに危なっかしく幸せなカップルの日々を観ているコッチが飽きるギリギリに、それぞれの事情や苦労が身に染みるムサ苦しい男たちとの探索から全てを失いそうに完全敗北スレスレのアノーラが逆転勝ちの気分爽快と思いきや!?
少し単純な物語に拍子抜け、でも違った、終盤の二人が言葉を交わさずに、、、あれだけ流行り?流行った?音楽が流れたり派手な印象から車のワイパー音だけがエンドロールは無音で一気に緊張感が破裂寸前にこの映画の全てが変わってしまうラストに圧巻!!
前半は成り行きでロシアの大富豪の息子と結婚、からのシンデレラストー...
前半は成り行きでロシアの大富豪の息子と結婚、からのシンデレラストーリー。
セレブの乱痴気パーティやヌード、セックスシーンの多さに、アノーラの有頂天な感じも含めて、辟易してしまい冷めた目で見ていた。
そこから中盤、親に結婚がバレて手下に詰められ始めてからの展開が想定外を行く。皆んなヒステリックでコメディに変わっていくから驚く。アノーラと手下の聞くに耐えない罵詈雑言や、余りのぐだぐだの珍道中には笑ってしまった。
そんな中、唯一マイペースでそれ故にちょっと雑な扱いを受ける手下のイゴールが良いキャラしていた。最後まで観てたら惚れるよ笑。
そして終盤、ロシアのバカ息子に一矢報いるシーンはスカッとはしたが、かなりビターな展開。
そしてラスト、ついにアノーラの気持ちが決壊する流れ。始めは??だったが、振り返る中で前半の多々あったセックスシーンがあのシーンの空虚さを作り出すのに活きてる気がした。
そして、1人の女性としてまた立ち上がる予感を感じさせる、希望に満ちた素晴らしいラストだった。
ここまでやって主演女優賞取れないことはない気がするがどうだろう…作品賞もありそう
あらゆる差別と密接に関わる性産業における表層のシンデレラ・ストーリー、その見せかけっぷりをブチ壊して告発する
夢の続きとその残酷さ。市井の人々というよりもっと底から、性産業に携わり日々生きていくのがやっとな貧しい人々の眼差しを通してアメリカを描きえぐり出すショーン・ベイカーの一貫した作家主義で描かれる、アメリカンドリームならぬロシアンドリーム(?)なプリセンスストーリーのその先…クソ食らえ!笑わせては観客の心を傷つける鬼才、そんな監督らしい現実のアンチシンデレラ・ストーリーだ!! それを象徴するように、ポスタービジュアルに使われているシーンが幸せ絶頂のはずなのに、後ろに見える花火は天井(張りぼて)。つまり、誰も祝福していない移民などへの人種差別に、性差別、職業差別。
彼女は信じたかった(それでも信じようとし続けた)!他人に言われるがままのキャラクターじゃなくて主体性があるのがいい最高にパワフルで魅力的なアノーラを演じるマイキー・マディソンの体当たりな熱演が引っ張り、甘やかされたボンボンクソガキのイヴァンを演じるマーク・エイデルシュテインのノリノリな好演による2人の化学反応を楽しみ、そして目を見張る出来の中盤怒涛のスラップスティックコメディ的ドタバタパート(最高にエネルギッシュだけど編集が上手くて見やすい)から観客に近い視点になっていくイゴールに親しみを覚える。インティマシーコーディネーターを使っていなかったことが発覚して問題になっている本作だけど、自分にとってショーン・ベイカーとは評価されるラリー・クラークみたいな印象だったから、そこはちゃんとしてほしかった思いがある(たとえ役者本人が要らないと言っても)。
金持ちや権力者、一部の特権階級にとって、いかに取るに足らない・替えが利く存在か。なんてことない屁でもない様子で、消費するだけしては、時が来ればあっさり平然と使い捨てる。すべては鶴の一声ならぬ王様の気分次第で決まる怖い社会の縮図。豪邸で働いている掃除婦の人に、"アニー"ことアノーラを重ねられるようだった。きらびやかな"性"か、地味な清掃という違いだけで表裏一体のような。口封じや自分の思い通りに動かすにはとりあえずカネをばら撒いておけばいいと、本人にたとえその気がなくても結局のところ使用人が広義となった駒としか思っていないような。そんな蔑ろにされた扱いなんてガマンならない、リスペクトが肝心だ!彼等は『千と千尋の神隠し』湯婆婆よろしく、名前を剥奪しオマエ(私)は何者でもないのだと、惨めな思いにさせるかもしれない。主人公自らアニー呼びで通しているわけだが。アメリカでは疎かにされがちな名前に込められた意味を理解し、正しい名前で呼ぶこと。それは、光。
彼女がアメリカナイズドされた簡素な呼び方で通して、美しい名前なのにそれを恥じて本名を名乗りたがらないこと、ロシア語を話たがらないこと。監督がロシア人の大富豪を選んだ理由を含めて、そこに込められた意味は何だろうかと考える(作中にヒントが散りばめられているのに見逃している可能性もある)。ロシアに限って言えば、ウクライナ侵攻やプーチンのヤバさからか?…など邪推せずにはいられない。あと、ロシア系アメリカ人だけど名前はロシア語だし歴史の浅い移民なのか、両親不在の意味も…。だけど、如何なる理由があっても、己のバックグラウンドやアイデンティティーを恥じて生きることなんて悲しく辛いことだ。自分を知らないこと、自分を大事にしないこと。利用されないようにするには、先ず自分を知って、大事にする。性を介してしか他者と繋がりを持てないのか?
利己的な人間だらけのクソみたいな世の中で、静かに寄り添う優しい視線
正直、映画の2/3ぐらいを観終わった時点では「まあまあ面白い」ぐらいの感想。
「これでパルムドール?」と思ったが、2021年の『TITANE チタン』以来の、カンヌの独自色強めの受賞なのかと思った。
ところが、終盤のある場面を観てから評価激変。
「この映画、実はとんでもないのでは?」と思うようになった。
最終的には、自分程度の脳みそでは全てを理解することが不可能なほどの、ものすごく深いものが描かれているように感じた。
最初の方は若い男女・アニーとイヴァンの大金を使った豪遊とセックスの場面がずっと続くので、「一体何を見せられているのだろう」と半ば呆れ気味で鑑賞。
イヴァンの両親が、娼婦であるアニーとの結婚を阻止すべく3人の男を送り込み、そいつらがアニーとイヴァンの家に到着してから話が一気に面白くなっていった。
家の中でのアニーVS男たちの戦いは、去年公開『ナミビアの砂漠』の終盤にある喧嘩シーンを彷彿。
中盤、利己的な人間たちによる醜態が、いろいろな場所を巡りながら、ジェットコースタームービー的に繰り広げられていく作り。
前半に出てくるさりげない事象が、中盤に伏線としていろいろ生かされているのは上手いと思った。
ここまでは、まあまあ面白かった。
終盤、飛行機内の場面。
アニーにとって理不尽な展開が起きて絶望している中、近くにいた敵であるはずの一人の男が彼女の可哀想な姿を見て(もしかしたら気のせいかもしれないが)目に涙を浮かべていて、それを観て不意に感動して落涙してしまった。
利己的な人間だらけのクソみたいな世の中で、アニーにとってただ一人の仲間ができた瞬間な気がした(アニー本人はそのことに気づいていないが)。
こんな場面で泣いているのが自分だけな気がして、恥ずかしいので涙を引っ込めようと頑張ってみるも、さっきまで屈強な戦士の顔をしていたその男が、終盤はアニーを心配そうに見つめる優しい横顔に変わっていて、その顔を見るたびに涙腺が刺激されて大変困った。
いろいろあった後、部屋で語り合う二人の男女。
セックスワーカーとして様々な男と体の関係を持ってきたアニーにとって、男とは「女性を性欲処理の道具と思っている動物」に見えていたと思うが、そうではない男に初めて出会ったことで戸惑い、「恋愛」よりも人間にとって大事なものがあることに気づき始めるアニー。
ラスト、車中でアニーが取る行動は、ああいう方法でしか人と対話する方法を知らないから。
しかし、男が無理してそれに応えようとした時、強く拒絶し、号泣するアニー。
男性社会のおぞましい呪縛から解放された瞬間に見えた。
お口直しが 必要な映画
アニーの豊かな表情は一見の価値あり
ニューヨークでストリップダンサーとして生きるアニーことアノーラ。店の客で来たロシア人富豪の息子と数日の契約彼女ののち、衝動的に結婚。周囲の猛反発に奮闘するアニーを描いたドラマ。
この映画はR18だ。エロくないセックスシーンが前半にわんさか出てくるので、事前に覚悟した方が良い。しかし、この乾燥感漂う前半は、途中からアニーのキャラが立ってくるのに役立つのでご安心を。監督は「レッド・ロケット」のショーン・ベイカーだ。なるほどクセが強いはずだ。予告編で想像できるような在り来たりなストーリのはず、なのだが、展開の妙とでも云うのか、観ていて飽きさせない。
音楽とカットもスタイリッシュだ。ナイトクラブ、豪邸でのパーティ、ラスベガス、ニューヨークの夜の街、と話の筋とシーンの使い分けてテンポが良い。
また、本作は、極端なアンバランスを描いて物語に緩急をつけている。セックスワーカーvsググれば名が出る富豪の息子、アニー1人vs放蕩息子取り巻き達、共同生活のアパートvs豪邸、オンボロ車vs高級車、これがこの世界の現実である事を否応なしに見せつけられる。
そして見所は、なんといってもキャストが抜群に良い。
まず主人公アニー役マイキー・マディソンは、正に体を張った演技で、嫌味がない。遠巻きで観ても映える立ち居振る舞いだ。
中でも特筆すべきは、アニーの真顔だ。ストーリのポイントで、彼女は真顔でちょっと考える表情をする。観る者に彼女の心理を想像するタイミングを作るのだ。これがなんとも良い顔だ。ベットで放蕩息子と結婚の話をする時、彼女は一瞬真顔になった。社会の下層で生きる彼女は、目の前の男の力量と性格はどの程度か把握できているはずだ。「ワンチャン、でも、この先こうなるだろう」と予測しているように見えた。ただ、現実の物語は彼女のささやかな賭けを超越する展開になるのだが…
ロシアの富豪の息子イヴァン役マーク・エイデルシュテインも良かった。イケメンだが、私が親なら彼の判断など容易には認めないだろう。それくらいの放蕩息子を演じている、見事。
クセが強い映画なので、好き嫌いはわりとあるかもしれませんが、物語の展開に沿ったアニーの豊かな表情は一見の価値ありです。ぜひ映画館の大画面でご鑑賞ください。
25-032
遂にショーンベイカーの時代が来た
確かにショーン・ベイカーの突き抜けた一作になった。この人にとってはセックスがほぼハグしたり抱擁したりキスしたりダンスしたりと等価で出てくるのでエロいというより笑ってしまうのが毎度のこと。その中では伝え聞いていたプリティウーマン的シンデレラストーリーをどうやるのかと思っていると前半で確かにそのようなポイントに向かって真っ直ぐにハッピーストーリーを爆進させ、ベガスの結婚まで駆け上がる。となると、どう崩れていくのかと思うと、ここからが怒涛の面白さだった。
イタリアンマフィアものはたくさん観てるがロシアの富豪一族って設定も面白く、ロシアから親がやってくるタイムラグ、それまでになんとかしようとするアメリカにいるそっち系のお目付け役3バカトリオが本当に面白く、出てきた瞬間愛せる勝手なキャラクターっぷりがいい。まさかのお姫様を置いて逃走を始める王子と、豪邸内のグダグダプロレスの後、王子を見つけ出すために街を右往左往する姫と泥棒みたいな珍道中がアルトマンかと思うくらいのセリフのダブらせでこの辺りの騒乱ぷりが圧倒的。更に裁判、親の登場、ともうてんこ盛りのカオスっぷり。途中から王子の影が消え、代わりに目立ってくる朴訥な、しかし目がやたらチャーミングな男とそうなるだろうという流れの中でのラストまで、かなり冴えに冴えた現代のおとぎ話、みたいな映画だった。
夢見る娼婦じゃいられない
映画史上に残るバカ息子
全く予想外の方向にストーリーが進んでいく。戸惑う間もなく、笑いを堪えきれないハプニングの連続。当人たちが120%本気だからこそ巻き起こるドジの数々。アニーとイゴールのやりとりだけで爆笑につぐ爆笑、一体何の作品を観ているのかわからなくなるほど。
「プリティ・ウーマン」 のような展開を予想していたが、早々に怪しげな雰囲気に。アニーの結婚相手イヴァンは、絵に描いたような金持ちのバカ息子。自分の金と親の金の区別もつかず、ドラッグもやりたい放題。それなのに、両親が来ると聞くとビビりまくる。
ショーン・ベイカーの前作 『レッド・ロケット』 も笑えたが、共感できる登場人物はいなかった。しかし、今回は違う。コワモテなのに雇い主であるイヴァンの両親には涙ぐましいほど忠誠を尽くすトロスやガルニク。高倉健ばりの男らしさを気取るイゴール。人間味があふれ、表情を隠そうともしない彼らの振る舞いは、微笑ましくすらある。
実際は超迷惑なんだけど。
風俗業界で生きる人々を描き続けるショーン・ベイカー監督。今回は特大ホームラン。
笑い疲れ、物語を振り返るタイミングで、心の叫びが聞こえてくる。
泣けるなぁ。
ロシア語
けっこうコメディタッチだった。
予想のつく結末だけどほろ苦い。
わりとロシア語だった。
ストリップってああいう感じなんだ。何が楽しいのかなと思ってしまった。
セックスワーカーにしてはみんなきれいすぎるというか、そこそこしあわせそうに見えてしまった。あんな美人なら他に行き場もありそうにみえるというか。
2人が過ごす1週間はけっこう明け透け。ためらいとか慎みとかなし!
イゴールは明らかに仄めかしすぎで後半の予想がついちゃった。BARRYのノホハンクに似てる。きっとインスパイアされたはず。
最後のあれは男性の同意ないのはどうなのかな。
アメリカ人は名前の意味を気にしないものなのかな。
面白く見られたけど、賞レースに加わるほどかなあ。
感情をぐちゃぐちゃにしてくれる作品。とにかく笑えて、とにかく考えさせられる。
プリティウーマン アメリカ・ロシア編
そこに愛はあるんか?
結構好きなタイプの映画でした
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