ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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良い意味で期待外れ
「期待外れ」と言う言葉が適確かどうかは分かりませんが、正直なところ、鑑賞前の想像を大きく越えてきました。ありていな言い方をすれば「最高に面白い」でした。
予告編、チラシデザイン、宣伝文句から想像していたのは、1人の女の子の華やかなサクセスストーリーを描く「プリティ・ウーマン」ぽい内容かな、と。ただし「シンデレラストーリーのその先の〜」というのが、私自身の貧困な想像力ではとても思い描けませんでした。
実際鑑賞を始めてみると、これは思った通り、普通でない(?)女の子がでてきて、金持ちのアホボンボンと恋仲になり、ボンボンの友達も巻き込んだ「パリピ」な様子が映し出れていきます。
私にはその「パリピ」なシーンがやや冗長に感じられ、途中から少し飽きてきていました。まさか、このままパリピなシーンが延々と続くはずがないよね?何かが起こるよね?何が起こるのか分からないけど…と思っていたら、アホボンが逃げ出した辺りから急にアクセルを全開したかのように、俄然目が離せなくなりました。
怪しげなお目付け役の牧師と、一見コワモテのその2人の部下が絡んでくると更に面白さのスピードが加速します。なぜかと言うと3人のキャラクターが見た目と違いとても魅力的だからです。
牧師なのにマフィアみたいな雰囲気で、言葉の悪さと脅し文句も筋金入り。部下もいかにも何のためらいもなく暴力を振るいそうで、特に若い方(イゴール)が何をしでかすか分からないような不気味な雰囲気を醸し出していました。
わ〜、これは女の子がボコボコにされる陰惨な場面が出てくるのかな?嫌だな、と思いながら観ていたのですが、ボコボコにされるどころか暴れ放題、叫び放題の女の子に3人ともタジタジで、むしろ3人のほうが可哀想に思えてくるぐらい。鼻を折られたり、サイコ呼ばわりされたりそれはもうめちゃくちゃ。それでも、キレることなく女の子に暴力を振るったらだめ、という彼らの出で立ちにしては謎(?)の信念があるようでじっと耐えてる姿、特にイゴール君がとても印象的で気になりました。
実際、女の子ともうひとりの男が言い合ってるシーンでも、なぜかイゴール君にフォーカスが当たっていたりと、何かを匂わすようなシーンはありました。
すると本当にイゴール君がキャラ立ちし始め、おとなしいのかと思っていたら、聞き込みをしたお店を容赦なくバットでぶち壊したり、女の子を常に気遣うような素振りも見せ、本当に途中から彼から目が離せなくなりました。とにかく、彼のアノーラに対する眼差しがとても優しい。
またおばあちゃんの話しを時々したり、もうひとりの仲間のために薬を持ってきたりと、何かしら行動や言動に生真面目さがにじみ出ている。
とにかくいいキャラだなあ、と思ってたら、案の定最後においしいところをもっていってしまいましたね。
彼を絶讃していますが、牧師ももうひとりの仲間も憎めない愛らしいキャラで、アホボン探しの夜間珍道中は笑いっぱなしでした。
アノーラもなかなか強烈で憎めなかったですが、それに勝るとも劣らず、他の人たちもとても魅力的で良かったです。
変な例えですが、ボケとツッコミがバランスよく描かれた何か壮大な「吉本新喜劇」みたいな作品でした。
映画版ノンフィクション
ジョーンベイカー監督の作品はタンジェリン、フロリダプロジェクト、レッドロケットと鑑賞済。自分の中ではアメリカの映画版ノンフィクションと勝手に思っている。容赦なく現実を突きつけてくるので好きな監督である。
しょっぱなからエロ全開でテンポよくノリノリで話が進み、快楽に溺れる夢のような展開で観ているこちら側も夢心地にさせられる。
が、後半は悪夢の一夜が一時間くらいかけてほぼ会話劇で展開され、一気に現実に引き戻される。鑑賞中はナゲーな。。と思っていたが、いま振り返ると、夢のような幸福な日々は一瞬で過ぎ去り、辛く重い現実は永遠に思えるほど長く感じる、その対比を出すためだったのかなと。予想通りの展開ではありましたが、余韻の残る終わり方はとても好物。アノーラ役のマイキーマディソンもエロくて可愛過ぎて100点。
イヴァン役のロシアのティミーと言われるマークエイデルシュテインも富豪の放蕩息子っぷりが外見と動きに滲み出てて素晴らしかった。イゴール役のユーリーボリソフは単純に好きなタイプ以上。
パルムドール作品大好きマンなので、パルムドール受賞は納得なんだけれども、アカデミー作品賞となると、個人的にはなんか、ちょっと違うかなと思ってしまいました。
物足りない
いやーさすがのショーンベイカー監督作品って感じ。フロリダプロジェク...
ばーちゃんのクルマ
助演男優賞にノミネートされていたイゴールが良かった。イゴールにとってばーちゃんのクルマは大切なものであり、アノーラのハプニング的なお礼だったとしても神妙な気持ちだったのではないか。
最初っからお尻!18禁ってこんなん? ストリップダンサーって言うか...
煌びやかでセクシュアリティーなガワの裏にある、確かな寓話性。
【イントロダクション】
ストリップダンサーとして働く1人の女性、“アノーラ(アニー)”が、客として訪れたロシア人の御曹司に見初められた事をキッカケに、豪華で煌びやかな世界へ足を踏み入れるシンデレラ・ストーリー…の先にある“現実”を描いたR-18指定作品。主人公アノーラを演じたマギー・マディソンの体当たり演技が炸裂する。監督・脚本に『フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法』(2017)のショーン・ベイカー。
第77回カンヌ国際映画祭〈最高賞〉パルムドール受賞。第97回アカデミー賞、作品賞、脚本賞、主演女優賞、監督賞、編集賞の5部門受賞。
【ストーリー】
ニューヨークのストリップ劇場でダンサーとして働くアノーラ。ある日、店を訪れたロシア人男性客のイヴァンは、アノーラの事を気に入り、プライベートで自宅に招く。召使いやエレベーター付きの豪華な邸宅に住むイヴァンは、財閥の御曹司だった。彼との契約で、1万5,000ドルで1週間をイヴァンや彼の仲間達と共に過ごす。突然の思い付きで訪れたベガスで、イヴァンはアノーラに求婚。彼女もそれに応え、2人はベガスの簡易結婚式場で夫婦となる。
ストリップ劇場を辞め、豪華な邸宅での煌びやかな生活を手にし、順風満帆かに見えたその矢先、結婚に猛反対したイヴァンの両親が、部下のトロス、ガルニク、イゴールを遣わせ、自分達もニューヨークに向かってくる。
両親の来訪に慄いたイヴァンは、アノーラを残して何処かに姿を消してしまう。残されたアノーラとトロス達は、消えたイヴァンの行方を追って捜索を開始する。
【感想】
破天荒なアノーラと、典型的なドラ息子のイヴァン。それに振り回されるトロス達とのやり取りの面白さ。しかし、バカバカしく騒々しい物語の裏には、確かな寓話性が満ちている。日本のキャッチコピーにある、《おとぎ話?ううん、現実(リアル)》という言葉が指し示す本当の意味が、鑑賞後には何とも皮肉めいて突き刺さる。
マイキー・マディソンの体当たり演技は圧巻。冒頭からとにかく脱ぐし、濡れ場も果敢に挑み演じ切る。オスカー受賞も文句なしだ。
しかし、本作の陰の功労者ユーリー・ボリゾフに、私は堪らなく魅了されてしまった。この先の彼の活躍を願わずにはいられない。
また、イヴァン役のマーク・エイデルシュテインのドラ息子演技も忘れてはならないだろう。特に、セックスの際の痩せ細ったガリガリの身体にトランクスとハイソックス姿というスタイルには、抜群の嫌悪感を抱く(笑)彼もまた、主演のマイキー・マディソンに負けず劣らずの体当たり演技なのだ。
意外だったのは、豪華で煌びやかな見た目に反して、製作費は僅か600万ドルというから驚きだ。但し、思い返せば豪華な印象を与えつつ、予算を掛けないで画作り出来るように工夫されているのが分かる。ショーン・ベイカー監督がアカデミー賞のスピーチで語った「お金の無さ」という部分に、本作のアノーラの姿まで重なって見えてくる。しかし、少ない予算で効果的な物語を構築してみせたからこそ、パルムドールやオスカーに輝いたとも言えるのだ。「予算があれば素晴らしい作品が撮れる?」という問いと、それに対する「NO」という答えは、そのまま本作の示す「お金があれば幸せ?」という問い対する「NO」という答えにも重なるのだ。
煌びやかなストリップシーンやベガス旅行を彩るダンスミュージックの数々も個人的にヒット。また、イヴァンがアノーラの元居たストリップ劇場を訪れた際に掛かっていたT.A.T.u.の『All The Things She Said』には、思わず懐かしさを感じた。この曲のイントロ、本当に素晴らしいな。
【考察】
タイトルであり、主人公の名前でもある〈Anora〉という単語には、“ザクロ”、“光”や“明るい”といった意味があるのだそう。しかし、当のアノーラ自身は、本名で呼ばれる事を嫌い、周囲にもトロス達にも「アニー」という愛称で呼ぶよう促す。それは、彼女が自らの人生や現状に不満や負い目を感じているからではないだろうか。セックスワーカーとして、日々心と身体を切り売りしている彼女にとって、“光”や“明るさ”を示すこの名前は苦痛でしかないのだ。
思うに、アノーラは根は真面目で他人に気遣いの出来る性分なのではないだろうか。店の人気嬢として君臨出来ていたのは、単に彼女が性的魅力に溢れていたからだけではなく、お客に対するサービスを徹底していたからだろう。
イヴァンの自宅に呼ばれた際にも、目の前には幾らでも大金を引き出せる金持ちの御曹司が居るのにも拘らず、「お正月は仕事だから。割増賃金なの」と仕事に向かおうとする。
イヴァンを捜索する際の破天荒な振る舞いは、彼女にとって「ようやく手に入れた幸せ(と彼女は思っている)」を手放さない為の、孤独な戦いなのだ。
しかし、そんな彼女とは正反対に、イヴァンはどこまでもドラ息子でクズのままだ。やり方もロクに知らないであろう、女性を気遣えない身勝手なセックス。ひたすら腰を打ち付けるだけの高速のピストン運動姿はあまりにも滑稽だ。堪らずアノーラは、自らの腰を動かしてスローセックスでイヴァンを満たしてみせる。だが、別日には再び彼は高速ピストンでアノーラと交わっている。彼は、女性を満足させるセックスをするにはどうすれば良いのかという事を学習していないのだ。
そして、セックスが終わればピロートークも無しにFPSゲームに夢中になる。逃亡の仕舞いには、泥酔してアノーラの元居たストリップ劇場を訪れ、彼女のライバルだったクリスタルからサービスを受ける始末だ。
どうせなら、クライマックスでイヴァンの両親の前で彼を糾弾するのなら、「アンタとのセックス、ちっとも気持ち良くなかったわよクソ野郎!」くらい言ってほしかったような気もする。
しかし、そんな間違った相手をアノーラは愛してしまったのだ。正確には、あれが愛だとは思わないが、彼女は本気だったのだ。何故なら、彼女にとってイヴァンとの結婚は、またとない“地獄からの脱出”のチャンス、まさに“蜘蛛の糸”だったのだから。
安アパートで姉(とその彼氏)との共同生活。外で風に吹かれては、タバコを吸いスマートフォンを弄る典型的、現代的な孤独。雇い主に「労災も年金も出ない」と語るも、相手はヘラヘラとして相手にしない。あの店で働いている限り、アノーラはどこまで行っても搾取される側なのだ。だからこそ、彼女はイヴァンとの結婚に誤った「幸せ」を見出し、縋ってしまった。「ここから抜け出せる」と、玉の輿に乗れた彼女は、浮かれ気分で店を辞める。同僚のクリスタルの嫉妬も何のそのだ。
ここで忘れてはならないのは、クリスタルの嫉妬心。昨日まで同じ立場に居たはずの人間が、運良く遥か高みに登り詰めてしまった事に対する強烈な嫉妬心は最もだ。だからこそ、私は彼女を悪者だとは思っていない。その「弱さ」は、実に人間的で共感出来るから。
【観る者の心を抉るラスト10分】
イヴァンとの婚姻関係を破棄したアノーラは、せめてもの情けと言わんばかりに、トロスから「今夜まではあの家に居ていい」と言われ、イゴールと共に過ごす。
互いにタバコを吸いながら、何気なくニュースを観ている。交わされる会話の内容は、互いの名前の話題から性分まで、実に他愛ない。
しかし、「アンタ、クレイジーね」「お互い様さ」と言い合えるようなこの関係性にこそ、本当の安らぎや信頼があるはずなのだ。しかし、アノーラは失ったものの大きさから、それに気付けない、又は目を背けようとしている。イゴールに「他の連中が居なけりゃ、アンタあの時間違いなく私をレイプしてたね」と語るが、イゴールは「そんな事しない」と否定する。この台詞に込められたアノーラの過去に思いを巡らせると、胸が痛む。
翌朝、粉雪が降る中、アノーラはイゴールの車で自宅にまで送られる。結婚指輪をこっそり持ち出していたイゴールは、「トロスには内緒だぞ」と、自分達と同じようにイヴァン一家に振り回され、傷付いたアノーラに、せめて手切れ金の足しにしろと言わんばかりに手渡す。それを静かに受け取り、助手席に座ったままのアノーラ。
「君があの一族の一員にならなくて良かった」と、イゴールは彼女を励ます。傲慢で他人の迷惑も顧みない、“金だけしか持っていない”人間達のコミュニティに属さずに済んだ事を心から良く思っているのだろう。
トランクから荷物を運び出し、車に戻ってきたイゴールは、「どうだこの車?」と問う。すかさずアノーラは、「アンタらしい車ね」と皮肉で返すが、彼は「ばあちゃんの車だ」と語る。聞いた話によると、車の扱い方は女性の扱い方に似ているという。祖母の車を大事に乗るイゴールは、その台詞一つで祖母から愛されていた事も、彼もまた祖母を大事に思っている事も理解出来る。
そんなイゴールに対して、アノーラは彼に跨り、性的なサービスをする。彼女はこれまで、対価と引き換えに自身の身体と心を切り売りして生活してきた。だからこそ、ラストでイゴールの損得を超えた純粋な“優しさ”に対しても、返せるものが性的なサービスしかないのだ。
しかし、イゴールは決して恍惚とした表情は浮かべない。イヴァンならば間違いなく「あぁ…良い…。最高だよ…!」と返したであろうアノーラのサービスも、彼はアノーラが無理をしている事を見抜いており、やるせない表情を浮かべている。
堪らずイゴールはアノーラにキスをしようとするが、彼女はこれを猛烈に拒否する。このアノーラの拒絶は、イゴールを異性として見れないだとか、そういう類のものではないように思う。愛の意味を履き違えて、間違った相手や地位を守ろうと奔走したアノーラにとって、イゴールという存在はあまりにも眩しかったのではないだろうか。彼ならば間違いなく、自分が求めていた「本当の愛」を与えてくれるだろうし、その証があの瞬間のキスだったのではないだろうか?だからこそ、彼女はそれを受け取る事は出来なかったのだ。自分の本名に対して負い目を感じているように。
しかし、それまで気丈に振る舞っていた彼女の心のダムは遂に欠壊し、イゴールの腕の中で泣き崩れる。粉雪が静かにウィンドウに降り積もって白さを増し、ワイパーの音と外の風音が静かに響くエンディングが切ない。
この涙には、どれほどの悔しさが滲んでいた事だろうか。言葉だけの見せかけの愛に縋った馬鹿な自分に対してだろうか?「ここから抜け出せる」という淡い夢に縋った事に対してだろうか?あるいは、イゴールの損得や男女間の性的な関係を超えた本当の「優しさ」に対して返せるものがない事に対してだろうか?
この涙の意味については、観る人それぞれが様々な解釈をする事だろう。私は恐らく、そのどれもこれもが正解なのではないかと思う。
【総括】
現代的な搾取構造やそこに身を置く、置かざるを得ない人々の姿を描いてみせた本作は、最初こそ煌びやか(というか下品)な描写やイヴァン達の馬鹿らしさに「本当にこれがカンヌでパルムドール?アカデミー賞で作品賞や脚本賞?」となったが、ラスト10分で強烈に胸を抉られ、鑑賞後には本編では描かれていない登場人物の背景に思いを巡らせずにはいられなかった。数々の賞に輝くのも納得の一作。
惜しむらくは、アノーラとトロス達の格闘シーンや、中盤の捜索パートが少々冗長に感じられた事。特に、ガルニクのトロスの車中での嘔吐や、レストランのウェイトレスやストリップ嬢を口説く姿は、それ自体はコメディとして面白いが、必要性はあまり感じられなかった。無駄を省き、120分の上映時間に収めてくれていれば、更に評価出来たのに残念だ。
願わくば、アノーラとイゴールが、あの先の未来で笑っていられますように。
ラストシーンが最高
監督の強いメッセージ性をこれでもかも感じられるエンタメ作品。
ロシアの富豪の息子イヴァンは、主体性のない幼児的な人物として描かれ続けます。
幼い頃から面倒を見てくれる側近、ベガスの支配人…一見すると多くの人を従えているようですが、住まいやプライベートジェット同様に彼らの目線の先にあるのは両親です。
ストリッパーのアニーはイヴァンのお気に入りになり、彼女になり、妻になる。
セックスをしている時以外、不安げな顔でイヴァンの機嫌を伺うのは、特別を失うのが怖いからでしょうか。
名もない自分が何者かになるには、男に選ばれるのが手っ取り早い。彼女の場合それが分かりやすい職業ですが、現代日本でも同じですよね。自分で稼ぐ能力のない女性が、経済力のある男性の妻(や、その子を産んだ母)というこおをアイデンティティにする…というのはよくあります。
イヴァンの周りに集まる友人は、こぞって低収入の大衆でした。彼らもまた、裕福な友人を持つことで自分が特別な何者かになれると思っていたのでしょう。
でも、他人の力では何者にもなれない。
それはイヴァンも同じことです。
親が裕福で全てを与えられていても、彼は自分の意思すら持てていない愚か者でした。
アニーの家族は裕福ではなさそうでしたし、マイアミで新しい彼氏と暮らす母…というセリフからいい感情を抱いていないことが分かります。
この対比がまた、メッセージをより強固にしています。
生まれが裕福でも貧しくても、特別な誰かになれるかということには、本質的に影響はない。
自分の人生をいき、自分で切り拓くことでしか、人は社会で何者にもなれない。ジャンプアップで突然変異するなんて有り得ないのです。
これでもかというくらい『現実』で叩きのめされ最高でした。
ラスト数分がものすごい傑作!!
見終わった後、ものすごい余韻がありました。簡単に言えば、バカ息子と勘違い女の物語ですが、ラスト数分にこめられたやり取りが大変素晴らしかったです。
最後、雪がポイントです。イゴール(だったかな?)がアノーラを車で送った際に「トロスには内緒だよ」と、取り上げた指輪をアノーラにあげた時に、もしかしたら娼婦であるアノーラは、初めて人間の愛や温もりを感じたのかもしれません。
アノーラは、御礼にイゴールの膝に乗り抱きつきます。しかし、イゴールは「あなたとはそういった行為はできませんよ」と言わんばかりに拒みます。同時に身分の違いによる冷たさをアノーラは味わうことになり、泣き崩れます。
雪の冷たさと身分の違いによる冷たさがリンクしているのだなあと感じました。
物語のほとんどは、下品な言葉が飛び交う内容ですが、意外と退屈しませんでした。
追記 個人的な感想です。
バッファロー66
最初はバカセックスコメディかと思いましたが、ラストの車のシーンでこの映画が好きになりました。
タイプは違うけど、バッファロー66を見終えた感と似てました。
何の感情移入出来ない時間からの・・・
むしろ嫌いなノリ満載でどうしようかと思いましたが、見て良かったです。
映画館で見て良かったです。
家なら早送りで見て、やっぱりエロバカセックス映画だなーって言ってたと思います。
アメリカンジョーク
t.A.T.u.は今でもお騒がせロシア人のポップアイコンなのか?
2024~25年の世界各国の映画賞受賞(ノミネート含)した作品を、世界の人は何を見て、どこを評価したのだろう。
職業差別や親の教育のあり方などへのアンチテーゼか?
いくらR指定されているとはいえ、冒頭からセクシーを超えたエロティックシーンだらけ。そしてその後は「Fワード」だらけ。ここまで連発され続けられると不快極まりない。本当に帰りたくなった。しかし30分位過ぎたら話の内容が大きく変わった。帰らなくて良かったが、不快の質が変わっただけで不快なのは変わらない。
『ロシア系アメリカ人でストリッパーのアニー』と『ロシア大富豪のバカ息子イヴァン(「イワンのばか」っていうロシア民話あったね)』が結婚したが、両親の部下が二人がいる家に乗り込みわちゃわちゃする。その隙にイヴァンは逃走する。拘束、暴行、拉致、器物破損、なんでもあれ。
泥酔状態での結婚無効は実際にあるらしいが、成人二人の結婚を親が無効化できるのか?ただイワンのばかは、独り立ち出来そうにないので無効化に同意は正解だと思う。でもラストのアニー、本当は別れたくなかったのかな。
R18+
紹介文にある通り、ストリップダンサーのアニーことアノーラが
ロシアの金持ちのボンボンと結婚したことから始まるドタバタ劇。
で、なぜこの映画がR18+なのかというとやはり全裸になっての性描写が
刺激的すぎるから。でもこの作品には重要な要素であった。
親の金で遊び放題のイヴァン。当然抱いた女は数知れないだろう。
そんな彼が高額報酬で「契約彼女」になる話を持ち掛けたり挙句には
「結婚しよう」と言い出す。恋愛感情が芽生えるほどの深い付き合い
ではないのに彼女を独占したいとまで思うのは、やっぱり体の相性が
良かったからだろう。
表向きはストリップダンサーでも個室で”裏オプション”をしていた。
劇中で「イヴァンが娼婦と結婚した」「私は娼婦じゃない」という会話が
あるが、肩書は違ってもやることは一緒だった。目的はお金だし。
イヴァンが夢中になるくらい良い女性はつまり「床上手」「名●」
だったに違いない。これを言葉で説明するよりも映像で見せた方が
説得力がある。それであんなにベッドシーンを入れたのだと思う。
マイキー・マディソンはセクシー系に特化した女優ではないが
よくぞ体当たりでこの役を演じたなと思う。スクリーンの彼女は
とても魅力的だった。
米国人と結婚すればグリーンカードが取得できて米国に永住できるから
という思惑がイヴァンにはあったにせよアニーを結婚相手に選んだのは
体が堪らなく魅力的だったからに違いない。
そして親に相談もせずイヴァンが結婚、しかも相手が風俗嬢と知れば
反対して当然だし二人を引き離そうとするのは目に見えていた。
そこからのドタバタは思っていたよりもコメディー要素満載だった。
見た目が屈強な男2人が送り込まれる。片方(イゴール)はどことなく
プーチン大統領っぽい外見(個人の感想)。予告編で見た印象では
2人はもしかしたらロシアンマフィア?と思ったが反社ではないみたい。
で、見た目とは裏腹にちょっと間抜けでアニー相手に苦戦するところが
面白い。
勢いに任せてノリで結婚してしまったとは言え、成人男女が自分の意志で
結婚して法的に認められているのだから撤回しろと言うのは理不尽だ。
アニーが正論をぶつけて真っ向から対立するところが小気味よい。
ところが甘やかされて育ったイヴァンはアニーを置いたまま一人で
逃げ出してしまう。しょうもない奴だ。
この映画の上手いところ。登場人物が、それぞれの成り立ちや属性に
相応しい振舞い方をする。物語自体は現実には起こりそうもない話なのに
彼らの行動には妙に納得できてしまう。
馬●息子は最後まで馬●息子のままだし、大富豪の両親も「やっぱりね」
な感じ。そして結婚を全力で撤回させに来る連中は雇用主の意向に沿う
必要性であのような行動を取った。
アニーの職場の人間関係も「こういう人いるよね」と思える。
アニーことアノーラは、お金のために風俗店で働く女性だが決して馬●では
なくて状況に適応するしたたかさ、ちゃんと自己主張する強さを持っている。
めちゃくちゃお下品な言葉で相手を罵ったりするのは育った環境からか。
途中ちょっと中だるみを感じる時もあったが全編でジェットコースターの
ような疾走感で話が進んで飽きなかった。人物描写もさすがだと思った。
騒動が決着してからのラスト。伏線を小出しに入れてはいたが、そう来たか!
イゴールは必要に迫られてアニーを拘束したり嫌われる行動はあったが
根は良い奴のようだった。
馬●息子との結婚が結局撤回されて良かったしそれなりのお金を受け取って
いたし、意外と誠実な男性と出会えたしで人生捨てたもんじゃないと思った。
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余談
平日の午前中の回。予約した時点では空席がたくさんあったが当日入場すると
約300席の7割近くが埋まっているまあまあの入り。アカデミー賞効果を実感。
両脇が空いていればいいなと思ったが上映時間ぎりぎりに自分の左に若い男性が
着席。紙袋に入ったフライドポテトに味付け用の粉をかけてシャカシャカ。
ポテトの匂いもしてきた。これって売店で売っていたっけ?
同じ列の右側2席ほど離れたところに老カップル。女性は呼吸器系の疾患?
まるでいびきをかいているかのような呼吸音。時々咳もしていた。
何となく気が散った。
終映後の老カップルの会話。「何だか思った通りじゃなかった」
「プリティ・ウーマンと全然違ったね」←何を期待していたの?
比較対象がプリティ・ウーマンとは恐れ入りました。
(追記)プリティ・ウーマンと比べたのはそういう宣伝の仕方をしていた
からだと分かりました。失礼しました。
バカップルのゴタゴタを2時間以上観るのはしんどい
身分違いの恋
現代版シンデレラストーリー 愛を知らない姫の心を射止めた真の王子は...
アノーラは愛を知らない。家庭のぬくもりを知らずに育った彼女の周りに集まってくる男たちはみんな彼女の体が目当て。彼女のセクシーダンスに男たちはこぞってお金を払う。
アノーラはまともな教育も受けられず、食べていくための職業はおのずと限られる。それでも彼女は生きていくために真摯に待遇の悪いエロティックダンサーの仕事を日々こなしていた。
そんな彼女に転機が訪れる。店に訪れた上客のロシアの大富豪の息子に見初められるのだ。もちろん二人の間に愛情などというものはない。バカ息子はただのお遊び、アノーラはお金が目当てだった。そんな二人の結婚生活が破綻するのは誰が見ても明らかだった。
前半はうんざりするほど彼らの狂乱っぷりを観客は見せられこの二人が幸せになれるはずがないと誰もが確信する。その通り物語は進んでいくが意外なダークホースが現れる。
イヴァンの両親に雇われているアルメニア系アメリカ人の三人。この中で独特な空気感を漂わせる男イゴールは用心棒としてアノーラたちの前に現れるが、けして冷酷な暴力をふるう男ではなく暴れるアノーラに怪我をさせないよう彼女を慎重に抑え込む。
しかしそんな彼に暴力を振るわれたと言い続けるアノーラ、自分をレイプする気だった、自分に暴力を振るったと言い続ける。しかし、イゴールにはそんな気はなかった。これはアノーラの中に培われた男性観によるものだろう。男はみんな自分の体が目当て、金を出すか暴力をふるうか。彼女の生い立ちがそんな男性観を作り上げたのだろう。
もちろん彼女も彼に向かってアルメニア人が、と罵る。ユダヤ人同様受難の歴史を持つ彼らへの配慮を教育を受けていない彼女は持ち合わせていなかった。彼女もけしていい子ではない。愛を知らない彼女はまだダイヤの原石でしかない。誠実な相手との出会いと摩擦で磨かれることにより彼女はその輝きを手に入れることができるんだろう。その相手はもちろんヘタレのイヴァンではなかった。
中盤は延々とアルメニア人三人組とアノーラによるイヴァン捜索の爆笑珍道中が描かれる。駐禁を食らった車をレッカー車から無理やり引き離したり、聞き込みをする店の無礼な若者に説教たれたり、車内で嘔吐したりと、いったい何を見せられてるんだろうか。現代版プリティウーマンを期待した観客は肩透かしを食らわされる。しかしこの珍道中の合間にもイゴールはアノーラへの気遣い忘れない。そんな彼に相変わらずひどい言葉を浴びせ続けるアノーラ。
すべての決着がつき、アノーラを家に送り届けたイゴールは隠し持っていた結婚指輪を彼女に手渡す。それを受け取った彼女はイゴールに体を与えようとする。
彼女は常にこうしてきた。お金のために見返りとして体を与える。男は自分の体目当てにお金を払う。
しかしイゴールはそれを拒む。彼がしてきたアノーラへの数々の優しい気遣い、それは純粋な思いやりからだった。彼女を憐れんで彼女の力になりたいという純粋な思いからだった。
見返りを求めようとしないそんなイゴールの姿に彼女は戸惑う。見返りを求めない、彼女の体が目当てでない人間がこの世にいることを初めて知り戸惑いそして涙する。
無償の愛を与えようとするイゴールの姿に人間の優しさをはじめて感じ取った彼女はただただ涙するのだった。
不遇な生い立ちにより彼女にかけられた愛を知らないという魔法はイゴールという本当の王子により解きほぐされていくのだろう。
タイトルなし(ネタバレ)
2023年のマイベスト映画が「コンパートメントNo.6」な私はこの映画、もはやすごい早い段階で涙が出てきて、ラストで静かに泣き、パンフレットを涙ぐむしまつでどうやっても泣いてしまう。
アノーラの家(正しくはイヴァンの両親の家)に入ってきたイゴールがコンパートメントメントでリョーハを演じていた彼だと気がついたときから
アノーラを目で追うイゴールを私もつい目で追ってしまう。イゴールはあの奇妙な人探し珍道中の中で状況を理解し、疑問を持ち、静かに考えていた彼がアノーラの救いになる結末にほんとうに泣いてしまった。
最後の夜、自分のことをレイプしない(したいと思わない)男を珍獣を見つけたような驚きでアノーラは見つめている。
そんなやついるのか?というフレッシュな驚きを感じられる環境で彼女が生きてきたことがわかる。
ショーン・ベイカーはセックスワーカーをジャッチしない説教しない、搾取しないとゆう言葉がパンフレットにあるように、フラットで注意深い目線でマイノリティ達を写すことが分かっているから、とんだ乱痴気騒ぎの物語だけど安心して観れるのが彼の映画の好きな所。私は過去作の中でタンジェリンが好きなので原点回帰的なこの作品の作りも大好きだ。
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