「煙草」ANORA アノーラ ゆみなさんの映画レビュー(感想・評価)
煙草
もう師走だしさ、年間ベスト決める時期も近づいてるじゃん。あんまり観る気にならなくて寝かせておいたアノーラを開封する時がきたよ。なるほど面白かった。
前半はとにかく金だけは持ってるロシア人御曹司のバカ息子イヴァンに気にいられて浮かれポンチなアノーラのおっぱいとお尻ばっかり見てた気がする。ずーっとセックス。とにかくセックス。金もらってはセックス。
勢いでイヴァンと結婚したアノーラは人生勝ち組になって意気揚々。だけどここからが地獄の始まりで、イヴァンの親に詰められてイヴァン逃亡からの捜索劇。追いつめられてるはずなのに、ちょっとコメディっぽいところもあったり。後半はずーっとアノーラが喚き散らしてて何だかなあって感じで。
イゴールはアノーラに同情からか優しくしてる気がしたんだけど、いつの間にかそれが愛情に変わってったって事かな?あんなに罵倒されてゲイ呼ばわりされてアノーラってイゴールに対して妙に当たりが強いと思ったんだけど、さすがにあれだけ打ちのめされてるとこ見たら助けてあげたくもなるかもな。
離婚届にサインした後に2人で過ごした最後の夜、イゴールが一度に2本火を着けたタバコのうち1本をアノーラに渡すシーンが好き。黙ってと言われても話し続けるイゴールの不器用さ。なんだか心に沁みた。
更にラストシーンが物凄くて。
イゴールに自ら跨るアノーラの心情が痛すぎて。あれ人によって受け取り方が違いそうだけど、私は指輪の代償に体で返そうとしたって気がしてる。キスは拒否してるあたりで愛ではなさそうだし、でも相手はそうではないって気がついて張り詰めていた糸が切れて泣き出した感じかな。あそこで終わるのも余韻が残ってよかった。人生上手くいかないね。それがとってもリアル。
