「面白く観たのですが‥」ANORA アノーラ komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白く観たのですが‥
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが溜まっていたので数行で短く)
結論的には今作の映画『ANORA アノーラ』を面白く観ました。
ただ今作は、アメリカアカデミー賞・作品賞とカンヌ映画祭・パルムドールをダブル受賞していて、期待値が高過ぎたのもあり、残念ながら私的事前の期待値は超えて来なかった印象は持ちました。
理由は、ストリップダンサーの主人公・アノーラ(マイキー・マディソンさん)は、高額の愛人契約を結んだ後にロシア人のイヴァン(マーク・エイデルシュテインさん)と結婚するのですが、その後のイヴァンの両親が差し向けた手下からのイヴァンの失踪や以降の展開が、主人公・アノーラの生活近辺で完結するなど、そのスケールの小ささにあったとは思われました。
ロシア人のイヴァンの両親の振る舞いも、現実のロシアのメタファーにも感じましたが、現実のロシアのプーチン大統領やその周辺で起こって来た何百人にも及ぶ怪死や殺害事件を思えば、現実を超えられておらず、映画としてのインパクトは残念ながらなかったとは思われました。
そう私的思われた要因の一つに、今作が、日本の邦画で良く観るスケール感とストーリー展開に似ている点もあったと思われます。
逆を言えば、このスケール感は欧米の人にとっては新鮮さがあったかもしれず、日本の邦画も今後、評価される可能性が開かれているとも思われました。
ただ、今作ラストの、ロシア人イヴァンの両親の手下の部下・イゴール(ユーリー・ボリソフさん)に指輪を返却された時の、主人公・アノーラの行為と涙は、相手への感謝の気持ちをその行為でしか表せない彼女の現実と自覚を表現していて、このラストの涙の着地だけで今作が優れている事を証明しているとは、一方で僭越ながら思われました。