「アルメニアに帰りたい」ANORA アノーラ Kotさんの映画レビュー(感想・評価)
アルメニアに帰りたい
イヴァンの捜索中、疲れ果てたガーニックがつぶやく。故郷から遠く離れた悲哀は、作品全体を通底するテーマだと言える。
ヒロインのアノーラやイゴールも含めた皆が、祖父母世代の選択や社会の要請によってたどり着いた自由の国と故郷の巨大資本のわがままに振り回され、心と体を疲弊させていく様がゆっくりと、丁寧に描かれていく。
この作品の白眉たる点は、やはりそれらを悲惨に描きすぎることをせず、「みんなそれぞれ大変だよね。」くらいのメッセージに止まらせ得るコメディ性と、イヴァン君も世界に振り回される、満たされない1人の男の子だということを、キャラクターを通して描き切っていること。
アカデミー作品賞を取ったことで色眼鏡を通して鑑賞されるようになるでしょうが、アメリカ社会のあり方を丁寧に写した名作です。
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