「夢は見えるが掴めない」ANORA アノーラ ふぇるさんの映画レビュー(感想・評価)
夢は見えるが掴めない
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ショーン・ベイカーと言えば、フロリダ・プロジェクトが印象的だ。ディズニー・ワールドのすぐ側のモーテルに住んでいる親子が目の前に見えている夢の国だが、そこへ行く夢さえも叶わず、日々の生活に困窮している社会問題を提起した作品である。
本作も同様のテイストで、ストリッパーをしているアノーラが富豪と結婚し、セリフにもあるディズニー・ワールドに行くという夢を寸前で掴み損なってしまうという共通点がある。
ショーン・ベイカー自身がディズニーに思い入れがあるかは分からないが、低所得者との対比でディズニー・ワールドを出してくる辺りが共感しやすい。
フロリダ・プロジェクトはドキュメンタリータッチで音楽も殆ど掛からず、淡々と進行していく印象だったのに対し、本作はエンターテイメントとしての要素もありとても見やすくなっている。と思ったが音楽自体は店やプレイヤーから流れる曲ぐらいしか無いので環境音としての音楽がなければ、フロリダ・プロジェクト同様に硬派になっていたかもしれない。
逆に音楽すら日常的にない生活がフロリダ・プロジェクトなのかもしれない。
正直、本作が作品賞を取ると考えていた人は少ないのではないだろうか。作品賞=硬派というのがこれまでにあったが、エブリシングが取ってからアカデミーとしてもやはり業界が盛り上がるような作品、つまり万人受けしつつテーマ性のある作品が近年選ばる傾向にあるのだろう。
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