「R18+」ANORA アノーラ toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
R18+
紹介文にある通り、ストリップダンサーのアニーことアノーラが
ロシアの金持ちのボンボンと結婚したことから始まるドタバタ劇。
で、なぜこの映画がR18+なのかというとやはり全裸になっての性描写が
刺激的すぎるから。でもこの作品には重要な要素であった。
親の金で遊び放題のイヴァン。当然抱いた女は数知れないだろう。
そんな彼が高額報酬で「契約彼女」になる話を持ち掛けたり挙句には
「結婚しよう」と言い出す。恋愛感情が芽生えるほどの深い付き合い
ではないのに彼女を独占したいとまで思うのは、やっぱり体の相性が
良かったからだろう。
表向きはストリップダンサーでも個室で”裏オプション”をしていた。
劇中で「イヴァンが娼婦と結婚した」「私は娼婦じゃない」という会話が
あるが、肩書は違ってもやることは一緒だった。目的はお金だし。
イヴァンが夢中になるくらい良い女性はつまり「床上手」「名●」
だったに違いない。これを言葉で説明するよりも映像で見せた方が
説得力がある。それであんなにベッドシーンを入れたのだと思う。
マイキー・マディソンはセクシー系に特化した女優ではないが
よくぞ体当たりでこの役を演じたなと思う。スクリーンの彼女は
とても魅力的だった。
米国人と結婚すればグリーンカードが取得できて米国に永住できるから
という思惑がイヴァンにはあったにせよアニーを結婚相手に選んだのは
体が堪らなく魅力的だったからに違いない。
そして親に相談もせずイヴァンが結婚、しかも相手が風俗嬢と知れば
反対して当然だし二人を引き離そうとするのは目に見えていた。
そこからのドタバタは思っていたよりもコメディー要素満載だった。
見た目が屈強な男2人が送り込まれる。片方(イゴール)はどことなく
プーチン大統領っぽい外見(個人の感想)。予告編で見た印象では
2人はもしかしたらロシアンマフィア?と思ったが反社ではないみたい。
で、見た目とは裏腹にちょっと間抜けでアニー相手に苦戦するところが
面白い。
勢いに任せてノリで結婚してしまったとは言え、成人男女が自分の意志で
結婚して法的に認められているのだから撤回しろと言うのは理不尽だ。
アニーが正論をぶつけて真っ向から対立するところが小気味よい。
ところが甘やかされて育ったイヴァンはアニーを置いたまま一人で
逃げ出してしまう。しょうもない奴だ。
この映画の上手いところ。登場人物が、それぞれの成り立ちや属性に
相応しい振舞い方をする。物語自体は現実には起こりそうもない話なのに
彼らの行動には妙に納得できてしまう。
馬●息子は最後まで馬●息子のままだし、大富豪の両親も「やっぱりね」
な感じ。そして結婚を全力で撤回させに来る連中は雇用主の意向に沿う
必要性であのような行動を取った。
アニーの職場の人間関係も「こういう人いるよね」と思える。
アニーことアノーラは、お金のために風俗店で働く女性だが決して馬●では
なくて状況に適応するしたたかさ、ちゃんと自己主張する強さを持っている。
めちゃくちゃお下品な言葉で相手を罵ったりするのは育った環境からか。
途中ちょっと中だるみを感じる時もあったが全編でジェットコースターの
ような疾走感で話が進んで飽きなかった。人物描写もさすがだと思った。
騒動が決着してからのラスト。伏線を小出しに入れてはいたが、そう来たか!
イゴールは必要に迫られてアニーを拘束したり嫌われる行動はあったが
根は良い奴のようだった。
馬●息子との結婚が結局撤回されて良かったしそれなりのお金を受け取って
いたし、意外と誠実な男性と出会えたしで人生捨てたもんじゃないと思った。
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余談
平日の午前中の回。予約した時点では空席がたくさんあったが当日入場すると
約300席の7割近くが埋まっているまあまあの入り。アカデミー賞効果を実感。
両脇が空いていればいいなと思ったが上映時間ぎりぎりに自分の左に若い男性が
着席。紙袋に入ったフライドポテトに味付け用の粉をかけてシャカシャカ。
ポテトの匂いもしてきた。これって売店で売っていたっけ?
同じ列の右側2席ほど離れたところに老カップル。女性は呼吸器系の疾患?
まるでいびきをかいているかのような呼吸音。時々咳もしていた。
何となく気が散った。
終映後の老カップルの会話。「何だか思った通りじゃなかった」
「プリティ・ウーマンと全然違ったね」←何を期待していたの?
比較対象がプリティ・ウーマンとは恐れ入りました。
(追記)プリティ・ウーマンと比べたのはそういう宣伝の仕方をしていた
からだと分かりました。失礼しました。
人生も考え方も人それぞれ、色んな出会いで価値観が変わる醍醐味を、わかりやすいドラマで締めた、味わい深い作品でしたね。
もちろん必要な職業として存在するわけですが、それなりのリスクがあって、自尊心が削られる可能性を伝えることが大切だと思いました。