劇場公開日 2025年2月28日

「賞を取れても日本で理解するのはかなり難しいか(補足入れてます)」ANORA アノーラ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5賞を取れても日本で理解するのはかなり難しいか(補足入れてます)

2025年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年74本目(合計1,616本目/今月(2025年3月度)8本目)。

 賞を取ったという事情もあり、大阪市は小雨も降る中8割埋まりが印象的でした。

 ストーリーとしては、ロシア系にルーツを持つアメリカ人のカップルが成り行きで結婚したらそれを許さない家族が介入して結婚するのしないの、離婚するのしないのといったお話。もちろん多くの方か書かれている通りR18なのでエッチなシーンは結構多めです(違法薬物を勧めるようなシーンはなかったかな?あってそちらはPG12程度か)。

 結果的に賞を取ったことは客観的に評価できるし、ただ日本でいうR18相当でいう「エッチな映画」という点はあるものの賞を取っただけのことはあり、それ以上の深みのある内容になっています(まぁ、前半からそのシーンが多すぎてアレなんですが…)。ただ、最終的に大賞を取るほどか?というと微妙かなぁ(特に去年と比較として)という感想を持つ方が少なくはないと思うところ、アメリカ映画であり、日本で見る場合、相当な知識が要求される点がそうそうきついかなという印象です。

 個人的には、ロシアが今リアルで置かれている現状等も勘案しても、政治とエンターテインメントを区別して作成されていた点も良かったところです。

 個々気になった点を触れつつ採点いきましょう。

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 (減点0.4/日本で見るにあたり特殊な知識が必要な点が2点存在する)

 このことは後述します。

 (減点0.2/分離不定詞について)

 「あなたにやっと会えてうれしいわ」というシーンが
  > It’s so wonderful to finally meet you.
 …となっていますが、不定詞(ここでは to meet )の中に他の語句(通常は副詞。ここでは、finally )を入れるのは文法的には分離不定詞といって(日本語では「ら抜き表現」にあたるような立ち位置)、非文法的とされます。もっともこれ以外の解釈はそもそもできないし、許容するネイティブもいますが(ここは個人差が出る)、少し配慮が欲しかったです。
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 (減点なし(上記の0.4に相当)/深い知識が必要なシーン)

 ・ ネバダ州で結婚したのからそこでないと離婚できない

 日本では離婚などを扱う家庭裁判所に相当するシーンですが、アメリカではある州で結婚すると、その州でしか裁判上離婚ができません。このことを指しているのですが、このことは日本人には常識扱いではないので少し工夫が欲しかったです。

 ・ 「「トッシュ」して」について

 ここは「フランス語じゃなくて英語で話してよ」のようにフランス語です。フランス語の toucher (英語:touch)は英語のそれと同様に「触る」の意味がありますが、フェンシング用語で「(剣などで)突く」の意味があり、その過去分詞形です。そこから転じて「(相手のいきなりの言動から)一本取った・取られた」の意味があります。

 ※ この点は先行上映された海外などで「トッシュって何?」の質問に関して回答があり、この回答で正しい模様(フランス語を話すカナダからのレビューアもこの点触れている)。

 ただ、英語の touch から類推は可能だとしても発音は全然違うし、ここはある程度誘導が欲しかったです(ロシア系映画ともいえるこの映画ではロシア語ネタも出るし、かなりの言語ネタが登場するので、ここでフランス語ネタが出ると尽きる人が続出しそう)

yukispica