「期待度◎鑑賞後の満足度◎ アノーラは『花』…イゴールは『戦士』…切ないエンディングに胸を衝かれ忘れ難い印象を残す…」ANORA アノーラ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度◎鑑賞後の満足度◎ アノーラは『花』…イゴールは『戦士』…切ないエンディングに胸を衝かれ忘れ難い印象を残す…
①上手い、と思う。基本的には、身体をはって生きている貧しい女の子が、大金持ちの御曹司に見込まれて(騙されて)結ばれるが、結局捨てられてしまう、というよくある話なんだけれど、前半は妖しく艶やかに楽しく、中盤は一転ドタバタ劇の様になって笑わせ、最後にアノーラが抱えていた悲しさ・寂しさ・脆さが溢れる哀切さで締め括る、という構成。
アノーラは精一杯肩肘張って生きてるし、言葉使いは汚いし(あまりの汚さに英語ネイティブでないこちらでも笑ってしまう)で、うるさいし(ここも笑ってしまう)で、なかなか感情移入しにくい女の子だが、「一週間の専属彼女」になるのの1万ドルのオファーに対して1万5千ドルと吹っ掛けながら、直ぐ後に『本当は1万ドルでも良かったの』と言ったり、プロポーズに最初は『ウソでしょ』という態度だったのが絆されて結婚したり、ロシアから飛んできたイヴァンの母親に優しく微笑みかけたりと、根は優しい女の子だと言うのがだんだん分かってくる。
そしてラスト、したたかそうで突っ張っていて決して上品とは言えない仮面の下に、傷つきやすい女の子が隠れていたことが分かる。
誠に胸を衝かれた。
②現代のプア・ホワイトの生きづらさ・夢・希望・挫折・絶望・哀切さを、しみったれた映像ではなく、明るく華やかな色彩の映像で活写されたら右にでるものの無いショーン・ベイカー監督。(『レッド・ロケット』はややしみったれていたので印象がも一つなのかな
)
本作でもその作風は遺憾なく発揮されている。本作では逆光が効果的に使われている。
エンディングの哀切さも『フロリダ・プロジェクト』のエンディングの哀切さに通底しているものがある。
③最初は単なる用心棒に思えたイゴールの存在感がだんだん大きくなってくる描きかたも宜し。