「灯りは消えないように」エミリア・ペレス nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
灯りは消えないように
先の読めない展開で、暴力や不正に対する想いをミュージカルで表現するところも面白く、歌とダンスも楽しめましたし、行方不明事件多発の社会問題も印象深いです。
アカデミー助演女優賞を受賞した弁護士役のゾーイ・サルダナのミュージカルシーンは見応えがあり、どちらかというと彼女が主演なのではとも思いましたが。
ストーリーとしては、悪行を重ねた人物が別人となって人生をやり直して改心する、しかし過去の因縁から逃れられない、といった寓話のような話になっているかと感じました。
善い行いをして人々の希望の光になっていたのに、結局威圧的な言動や暴力を繰り返してしまう。
心が変わるかどうかというやり取りもありましたが、根本では過去の暴力的な考えから変わることが出来なかったというところがやるせないです。
それでも、その善行によって希望を持った人々がいたことも事実で、その希望の灯りは消さないようにという想いも伝わります。
善行で大きな社会貢献をして信奉されている人物が、実は悪逆非道な過去を持っていたら、という見方にもなる話で。
もし過去がバレたら、昨今のキャンセルカルチャーで善行の社会貢献活動も批判されて潰されてしまいそうですが。
人間は多面的なものですし、善行は善行で評価すべきだと思いますが、過去が隠されたまま信奉されているというのもそれはそれで複雑な印象です。
その流れで考えると、エミリア役のカルラ・ソフィア・ガスコンが過去の言動で炎上してしまった件は、何だかシンクロしているなと。
麻薬カルテルのボスがトランスジェンダーだったらというギャップ感は面白いですが、考えてみると手術後はトランスジェンダーの件については特に触れず、ストーリー的にトランスジェンダーでなくてもよいような気も。
身内にも絶対バレない全くの別人になるための設定として、トランスジェンダーを使っているようにも感じてしまいました。