劇場公開日 2025年3月28日

「過去の悪行が成功を阻害する」エミリア・ペレス おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5過去の悪行が成功を阻害する

2025年3月30日
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近年は「性転換手術」という表現は不適切で、「性別適合手術」と呼ぶべきとのこと。
勉強になった。

睡眠不足で映画を観たのが良くなかった。
途中まで眠気との戦い。
ミュージカルシーンが目覚まし時計代わりになっていた。

中盤までは元麻薬王が莫大な財力を駆使して自分の思い通りの人生を送っていくだけの話で、大きな事件みたいなのは起きないため、映画の2/3ぐらいまでは単調に感じた。

ただ、話自体は予測不能な展開の連続で、興味深くはあった。
「メキシコの麻薬王・マニタスが性別適合手術を受け、エミリア・ペレスという女性として第二の人生を送る」という導入部分から興味を惹かれるものがあったが、その後もエミリア・ペレスの取る行動に驚かさせることが多かった。
「え、そんなこと考えていたの」と思わされる場面の連続。
そもそも「バイで子持ちのトランスジェンダー」という設定が、他の映画では見たことがない複雑さと深みを生み出していると感じた。

ミュージカルシーンは見応え十分。
ダークで切迫感のある音楽が印象的。
特に、ゾーイ・サルダナの踊る場面に魅了させられた。
さすがアカデミー助演女優賞を獲得しただけのことはある。

ただ、ミュージカルシーン、ちょっと多すぎな気もした。
この映画の中で起こる出来事の数に対し、133分は長く感じた。
普通の場面でも「もしかしてここからミュージカルが始まるのか」と、変に身構えながらの鑑賞になってしまった。

ミュージカル映画ということで、歌や踊りのない場面でも、役者が音楽に合わせて台詞や動作を行う場面がちょいちょいあり、最近新作が発表された『リズム天国』みたいと思った。

終盤は「過去の悪行が原因で、大成功目前に大きなしっぺがえしを食らう」という話で、奇しくもアカデミー主演女優賞にノミネートされたカルラ・ソフィア・ガスコン自身に降りかかった出来事にも重なって見えた。

Netflixのドキュメンタリー映画『トランスジェンダーとハリウッド』を観ていた人間としては、ラストはかなりモヤモヤした。
LGBTQに寄り添う内容ではなく、あくまでドラマを盛り上げるための道具としてLGBTQを扱っただけに感じた。

おきらく