「アーノルド作品には珍しい魅力的な父親キャラ」バード ここから羽ばたく 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
アーノルド作品には珍しい魅力的な父親キャラ
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貧困家庭、片親とネグレクト、思春期の少女の人生への抵抗、人間の暮らしと隣接して描かれる自然と動物たちなど、アンドレア・アーノルド監督らしさを詰め合わせた集大成のような作品だが、はっきりと違いを感じるのはついに人間と動物の垣根を越えてきたかのようなバードという主要キャラクターの存在と(それもアーノルドの作品世界では非常に微妙な垣根ではあったが)、バグという父親の愛されキャラだろう(カエルに向かって合唱するシーン最高)。
これまでは基本的に父親は不在かクズ、父親的存在はみんなクズというのがアーノルド作品の定番だったと思うのだが、バリー・キオーガン演じる粗野な父親バグには、圧倒的なユーモアとダメ親父なりの愛情とそれに伴う行動力がある。アーノルドは作品を自伝的と取られることを好まず、また自分の生育環境について(シングルマザーで動物がたくさんいた家庭であったこと以外)多くを語っていないが、これまでの父親ないし男性キャラの描き方から推して知るべしという感じではあった。ところが本作で過去作になかった魅力的な男性キャラたちが生まれたのはどういう変化があったのか。そんなこともつい考えてしまうアーノルドワールドの最新形。
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