「【”心配はない、大丈夫だよ。”とバードは私に言った。”今作は荒れた生活の中で暮らす少女が不思議な男と出会い、人生が明るくなる様をブリティッシュロックの名曲を背景に描いたヒューマンファンタジーである。】」バード ここから羽ばたく NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”心配はない、大丈夫だよ。”とバードは私に言った。”今作は荒れた生活の中で暮らす少女が不思議な男と出会い、人生が明るくなる様をブリティッシュロックの名曲を背景に描いたヒューマンファンタジーである。】
■12歳の少女ベイリーは、全身刺青の父バグ(バリー・コーガン:久しぶりである。)と二人暮らしだったが、或る日父は見知らぬ女を連れて来て、土曜日に結婚すると言い放ち、困惑する彼女にドレスを着て式に出席しろ、と言う。
ベイリーはバグと別れた母の元に行くと、そこにはDV男がおり、彼女の3人の妹たちは怯えたように暮らしている。
兄は恋人に子供が出来た事を喜ぶが、相手の両親からは相手にされない。
そんな時、ベイリーは”両親を探している”というスカートの様な衣装を着たバード(フランツ・ロゴフスキ)と出会い、彼の両親を一緒に探すのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・不思議な物語である。バリー・コーガン演じるバグは、全身に刺青を入れて薬物の入った体液を出すという蛙を取って来て、結婚式の費用を捻出しようとする破天荒な男だが、悪い奴ではないようである。友達も多い。だが、年頃のベイリーはちょっとウザがっている。
・ベイリーの母と同居する男が、トンデモナイDV男で、幼い妹にティーを入れろだの、家族の愛犬を蹴り殺したりし、母は亡いている。
・そこに現れたバードという不思議な男を演じるフランツ・ロゴフスキが、抜群の存在感である。いつも笑顔で、ベイリーたちの家の向かいのマンションの屋上で、鳥の様な格好で暮らしている。
若きニコラスケイジが、戦争で心を病んだ男を演じた名作「バーディ」を思い出すが、バードは誰に対しても優しく笑顔で接するのである。
■フランツ・ロゴフスキを初めて劇場で観た作品は「希望の灯り」である。決して美男子ではないが、身体に纏う孤独感を漂わせた少し切ない雰囲気が好きである。
そして、バリー・コーガン。不穏な男を演じさせたらこの人という俳優である。この人も美男子ではないが、代わる俳優が思いつかない程、独自の顔を持っており、今作では珍しく子を乱暴だが想う、善性在る男を演じているのである。
・ベイリーの兄が恋人に手紙を届けるために、ベイリーに手紙を託すシーン。相手の両親から冷たく扉を閉められるが、何処からか現れた烏がその手紙を兄の恋人に渡すのである。
・バードの両親の家を、ベイリーとバードが探すシーン。二人はバードの父を見つけるが、父はバードが母のお腹にいる時に別れており、生まれた男の子は死んだと聞いている、と話すのである。バードはその話を聞き、再びマンションの屋上で、鳥の様な格好で佇むのである。
・更にベイリーが、DV男に焦燥感を抱き、幼い姉妹たちを単身救うために母の家に出向くシーン。バードは、ベイリーに襲い掛かる男に窓ガラスをぶち破り、鳥の形になって男を捕らえ何処かに飛び立つのである。
そして、ベイリーは最初は反発した父から渡されたドレスを着て、髪も綺麗に整えて、父の結婚式に何処かスッキリした顔で出るのである。
彼女が、大人に一歩近づいた姿でもあるのであろう。
<今作は、荒れた生活の中で暮らす少女が不思議な男と出会い、人生が明るくなる様をブリティッシュロックの名曲を背景に描いたヒューマンファンタジーなのである。>