「プライドと虚栄で守る鉄壁の自我・・・そして成長」傲慢と善良 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
プライドと虚栄で守る鉄壁の自我・・・そして成長
原作は既読です。
辻村深月ファンですので、思い入れの深い原作ですが、
映画になってしまったら、原作を映画化しただけの意味と意義、
・・・原作を超える魅力がやや乏しく思えた。
真実が70点の彼女、そう言われるのは、
架に心を全部開かないことが、大きいと思います。
出出しはお洒落で都会的な映像とリストの「愛の夢」のピアノ曲と、
とても雰囲気がスタイリッシュでした。
そして架(藤ヶ谷太輔)の差し出す名刺・・・
あまりに高価そうで、しかも凝りまくっている材質と
文字のレトリック。
そして強調される高級腕時計・・・それも何個もの。
ここで、地ビール製造会社・社長・西澤架が物欲が強く見栄っ張りで、
外見に拘る性格だと見て取れる。
良い滑り出しだ。
と思ったのも束の間、
交際相手で婚約者の坂庭真実(奈緒)からバーで仲間と飲んでいた架に
🆘の電話が掛かってくる。
そして物語は始まるのだった。
愛し合ってると信じ込んでいた婚約者の真実が、緊急呼び出しがあって
「部屋に灯りが付いてる!ストーカーが中に居るかも、、
「怖くて部屋に入れない・・・」
そうやって真実は架の部屋に越してくる。
同居して一年。
2人は婚約して結婚式の日取りも決まっているのに、
真実が勤務する英会話教室の送別会の夜の、
2日後に、跡形なく消えたのだ。
全く心当たりの無い架は真実の姉、そして真実の実家の両親、
そして更に群馬にいた頃に2回して真実から断った見合い相手に
会いに行くのだった。
原作より魅力が乏しい主役2人(奈緒と藤ケ谷太輔)に感じたのは、
文字の説得力と映像の説得力の違いもあると思います。
真実と架の醜さ(打算や、狡さ、駆け引きなど)を、もっと
強調して描いても良かったかなぁ?
だから、原作通りなのに、物足りなく、起伏が少ない。
一番光っていたのは結婚相談所の経営者役の前田美波里でしたが、
出番が少なすぎるし、その後のストーリーに絡んで来ません。
藤ヶ谷太輔は言いにくいし申し訳ないのですが、主役オーラが乏しい。
(出来ることなら岡田将生、佐藤健、岩田剛典、横浜流星、
・・・山下智久とかで・・・と、欲が出ます)
奈緒はとても真実(まみ)に似合っていて良かったのですが、
いくら切羽詰まっても、
「ストカーが・・・部屋にいる!!助けてー!!」
と、嘘をつく真実が、やはり引っかかる、信用できない、
決定的にその人間性に疑問が付きまとい、
真実を心から好きになれないのでした。
★親に喜ばれて、
★友だちに自慢出来て(これは案外大きい‼️)
★自分の好きなタイプの男性で、
★経済力がある。
そんなお相手、いますか?本当に?
ハードルは高過ぎますよ。
真実(奈緒)のいちばんの問題点は、生活力も特技もない事。
上京して勤務するのも英会話教室の事務(補佐的な仕事)
真実にはスキルが無いのです。
バリバリ人生を切り開いて行くタイプの女性ではない真実。
元彼女アユへの未練を断ち切れない架(かける)は、女性の適齢期に
元彼女にプロポーズしなかった自分を悔いているのに、
またしても同じ間違いをおかしてしまう。
「架くん、助けてー、ストーカーが、私の部屋にいる‼️」
30歳過ぎの女性の焦り・・・
これは男性の想像を大きく超えている。
適齢期が無為に過ぎていく恐怖・・・男性には分からないと思うよ。
そんな悲しい嘘を真実につかせるまで、同棲もせず、
誕生日にくれたのは「誕生石のネックレス」
その時の落胆。
てっきりプロポーズされると真実は勘違いしたのだ。
架にも言い分はある。
家庭に縛られずに今の自由を楽しみたい。
ついついプロポーズを知らず知らずに引き伸ばしている。
大学時代の仲間のグループの女性たちとダベっている。
特に美奈子(桜庭ななみ)は重要な位置付けで、
真実失踪の引き金を引きますし、女の勘で、
「あの子は架が思うほど善良じゃないよ!!」
何故こんなにも苦いんだろうねー。
結婚に至る途中で早くも《心が折れちゃう》経験をする真美。
すごく分かるよ。
《世間》《男社会》《学歴・容姿・親の資産などのヒエラルキー》
いっぺんに見たくないものが一斉に襲ってくる感じ。
結婚って残酷なヒエラルキーを突きつけられる。
失踪後の真実。
なんのスキルも持たない真実が、ボランティアに向かう。
はじめは全く役に立たず、
「すぐ辞めるだろう」の大方の予想を裏切って、
徐々に慣れて地域に根ざしていく。
好意を持ってくれるボランティアリーダーの高橋(倉悠貴)
(原作の高橋はパワーの溢れるカリスマ的人物で、
実に魅力的に描かれている)
地に足の付いた女性なら、高橋を選びその場所に根を張ると思うし、
それが望ましいですが、
相変わら人間の上っ面しか見ていない真実。
真実はやはり田舎を嫌う。
真実の選択は最後まで、お洒落な都会の生活が好きで、やはり
打算的に見えてしまう。
奈緒が涙の熱演を見せ、こちらもホロリと一瞬させられるけれど、
やはり結局は見た目の良い架を選ぶ。
そう思えてしまうところにこの映画には
圧倒的な感動と共感が持てないのでした。
奈緒は自分を心から愛せない真実を好演していつもながらに
演技が自然でとても等身大に見える。
ただ「自立が出来ない多くの女たちの代表としての真実」
そこを実にきめ細かく赤裸々に描いた。
だからこ、この「傲慢と善良」の原作が100万部を超えて
支持されたのかもしれません。
でも1番の疑問だったのはは、真実が自分から架に、
「一緒に暮らそうよ‼️結婚しようよ‼️」と言えない事。
そんなの変だよ。
そんなフランクに話せない2人が本当に結婚してうまく行くのかな?
結局、傷つくのが怖くて、
大事なのは自分のプライド(=傲慢)なのだもの。
ラストで苦労して自分と相手を見つめ直した真実と架。
2人の幸せを祈らずにはいられない。
おはようございます。
共感ありがとうございます。
レビュー素晴らしいです。
なんかモヤモヤすると思ってたのが、真実のスキルの無いことだったと改めて思い出しスッキリしました。
ありがとうございました。
こんばんは!
辻村深月さん作品私合うみたいです。アニメは苦手な私ですが「鏡の孤城」も良かったし、「ハケンアニメ」と好きな作品で!
私的には犯罪都市が本日のメインだったんですが、本作の方が楽しめました。