「うんざり感も度を超すと恐怖に変わることを実感できる一作」ロイヤルホテル yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
うんざり感も度を超すと恐怖に変わることを実感できる一作
『アシスタント』(2022)でハラスメント被害者が報われない現実を容赦なく描いたキティ・グリーン監督の最新作なので、爽快感はあまり期待しないほうがいいのかな、と予想していたらほんとにその通りだった、という作品でした。
バックパック旅行中の二人(ジュリア・ガーナーとジェシカ・ヘンウィック)が、アルバイト先の安パブで、排他的な地元住民の標的にされる…、という展開からは、いわゆる「田舎ホラー」や『理想郷』(2022)のような新規対地元のバチバチの対立といった物語を想像してしまうんだけど、二人が遭遇するのは言葉での嫌がらせやつきまといなど、日常生活でもありそうないやがらせ、無遠慮なふるまいの数々。一つひとつは現実にも起こりがちな小さな悪意の発露であっても、ここまで立て続けに、かつえぐいと、うんざり感以上にホラー味を帯びてきます。しかも彼女らにつきまという側は、ハラスメントをしているという意識皆無などころか、全く普通の言動をしているつもり、何ならむしろいいことをしている風に考えてる節もあるところがまた腹立たしい…。
打ちのめされ、ここから離れたいと訴えるハンナ(ジュリア・ガーナー)をなだめて、むしろ安パブの雰囲気に溶け込みつつあるように見えるリブ(ジェシカ・ヘンウィック)の真意が垣間見える場面は一つのクライマックスになっていて、痛切です。
ポスターの「私の我慢は、限界を超えた。」という言葉は、作品の表現として間違ってはいないんだけど、この言葉から連想するような、ムカつくやつらをボコボコにしてすっきりー!な展開を期待すると、一層わだかまりが増すかも。旅行は計画的に、という警句が痛いほど実感できるかもな作品です。