劇場公開日 2024年7月26日

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「元になったドキュメンタリーの予告編に2度びっくり」ロイヤルホテル 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5元になったドキュメンタリーの予告編に2度びっくり

2024年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

オーストラリア出身のキティ・グリーン監督が長編劇映画デビュー作「アシスタント」に続き、ジュリア・ガーナーと組んでハラスメントを題材にした社会派スリラー。セクハラ、モラハラを受け続ける主人公に同化して観客もじわじわ心を削られる感覚は「アシスタント」に通じるが、身勝手な親友に巻き込まれていく経緯は昨年日本公開の「FALL フォール」、主人公らが悪夢のような場所にのこのこ乗り込んでいくのはイーライ・ロス監督のホラー「ホステル」を思い出した。

グリーン監督は2016年のドキュメンタリー映画「Hotel Coolgardie」に着想を得て、オーストラリアの寂れたパブで働くことになった外国人女性たちが店主や男性客らから延々とハラスメントを浴び続ける数日間のストーリーを劇映画化した。本作の鑑賞後、元のドキュメンタリーに興味を持ってYouTubeで予告編を観たのだが、この若い男は彼、この中年女性は彼女といった具合に、劇映画の登場人物のモデルにしたであろう似た外見の客たちが何人も映っていてびっくり。さらに驚かされるのは、ドキュメンタリーのカメラを向けられているのを知りながら、客たちが悪びれもせず(むしろ得意げに)セクハラ言動を女性店員たちに浴びせていること。それも何十年も昔のことではなく、たかだか10年ほど前にカメラの前で堂々と行われていたことに驚愕する。オーストラリアの良識ある人たちもさぞ驚き、恥じ入ったのではなかろうか。この「Hotel Coolgardie」、米アマゾンのPrime Videoでは配信しているようだが、日本でも視聴できるようにしてほしい。

また、英語メディアのレビューで知ったのだが、1971年のオーストラリア映画「Wake in Fright」(日本では「荒野の千鳥足」の邦題で2014年に劇場公開)に設定が少し似ているそう。やはり予告編を見たらなかなか面白そうで、こちらもいつか観てみたい。

高森 郁哉