「この生き生きしたビジュアルが躍動感を与えてくれる」SCRAPPER スクラッパー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
この生き生きしたビジュアルが躍動感を与えてくれる
イーストロンドンの公営住宅に、母亡き後、たった一人で暮らす少女の物語ーーーと聞くと、これは育児放棄、あるいは福祉制度がカバーしきれない闇を描いた社会派映画かなと想像が及ぶ。従来の英国映画ならばこの手の作品をリアル一徹で描き出す手法が主流のように思うが、リーガン監督は少女の現状を決して停滞前線の渦中に置かず、むしろ独自のビジュアルで生き生きと彩り、彼女のポジティブ思考、サバイバル能力、大人を手玉に取るトークスキルで観客を魅了する。そこに突如現れた、まだ大人になりきれない父の存在感を加味。二人の信頼関係は出会った当初から地に落ちたようなものだが、土台もまるでないゼロに近い出発点だからこそ、あとは伸びしろしかないのだろう。かくも逞しいヒロインだが、まだ12歳。鎧を脱ぐように見せる繊細な表情には胸が締め付けられる。小品ながら愛すべきキャラ達の内外面が魅力的に輝き、観賞後の余韻も心地よい良作である。
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